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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

「ドレスが汚れますよ!」

2019年11月03日(Sun) 18:13:24

吸血鬼が女の首すじを咬もうとした。
女は二人の間に差し入れた腕を突っ張って、抵抗しようとした。
「ドレスが汚れますよ!」
ふたりは同時に、同じ言葉を口にした。
思わず気が合うところをみせてしまった二人は、抗いかけた手と手をほどき合って、あははははっと笑った。
あっけらかんと乾いた笑い声に、お互いの気持ちもほどけ合っていた。

吸血鬼は女の抵抗を封じるために。
女は自分のドレスを守るために。
同じ言葉を口にしたのだ。

そして二人は、ドレスを汚さぬ工夫をした。
女はおとなしく吸血鬼の猿臂に巻かれ、飢えた牙に首すじをゆだねたし、
男は女を決して荒々しく咬もうとはせずに、吸い取った血潮は一滴余さず喉の奥へと流し込んだ。

二人連れだって現場を離れる様子は、まるで長年連れ添った夫婦のように親しげにみえた。
自分の血に満足をした吸血鬼が、なおも彼女の情愛を求めるのを、彼女はドレスのすそを引き上げて応じていって、
ドレスの裏地さえ汚すことなく男がこと果ててくれたことに、むしろ感謝の念をおぼえていた。

男は女が脚にまとっていたストッキングを、記念の戦利品としてまき上げた。
女は甘んじて、男の無作法に応えていった。
ドレスのすそは長く、辱めを受けた彼女の脚をすっぽりと隠して、二人の秘密を守り通した。
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