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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

コレクションを見せつけられて。

2019年11月04日(Mon) 16:32:37

だだ広い洋館のひと部屋ひと部屋に、女が一人ずつ、宿っている。
女はこの部屋の主人。そして、この洋館のあるじのためのミストレス。
そこに住まうのは未亡人だけではない。
人妻もいるし、結婚を控えた生娘さえ住まっている。

けれどもふだんの彼女たちは、そこで寝起きしているわけではない。
部屋にはベッドとソファ、それに壁に埋め込まれた大きなクローゼット。
ふだんはがらんどうなその部屋に。
女たちは自分の意思で訪れて、この洋館のあるじに身をゆだねる。

制圧された貞操に熱情の滾りを思い切り注ぎ込んだ後、
洋館のあるじは女の身にまとった服を、戦利品としてせしめてゆく。
女の洋服に執着する掌が、
ブラウスを、スリップを、ブラジャーを、スカートを、ストッキングを、ショーツを・・・
一枚一枚、剥ぎ取るようにせしめてゆく。
股間に熱い滾りを享けた女たちは、ため息をしながらも身をゆだね切り、
変態な男の求めに応じて、己の衣装を惜しげもなく、剥ぎ取らせてゆく――

そうして剥ぎ取られた服たちが、大きなクローゼットの闇の中、匿われるようにひっそりと、仕舞い込まれてゆく。
持ち主を共有する服たちは、肩をそろえ、向かい合い、幾重にも重ねられながら。
互いに互いの息遣いを、交わらせてゆく。
自分が犠牲になったときの艶やかな物語を、お互い奏で合いながら・・・


――さいしょに咬んだ時にはね、奥方もさすがにうろたえられて、暴れたのですよ。
わしの腕のなかで。
もちろん、逃げ出せやしません。
首すじを咬んで、生き血をたっぷりと吸い取って、
わしは元気がつくいっぽう。
奥方は身体から力が抜けるいっぽう。
たっぷりと恵んでもらいました。
痛いのをガマンして生き血を振る舞ってくださった挙句が、あの熱い熱い濡れ場です。
ああ、あの夜は、愉しかった・・・
それがこのときの服です。

男が手に取って押し戴くのは、見覚えのあるベーズリー柄のワンピース。
深緑の生地の肩先や二の腕に。
それからわき腹とお尻にも、どす黒いシミがこびりついている。
どす黒いシミの中心部分には、男が咬んだ痕が、不規則な裂けめとなって二つ並んでいる。

――さいしょが、肩。それから、脇腹。さいごに、お尻。だんだん穴がこぎれいになっていくでしょう?

果たしてそうだろうか?
けれども男のいうように、妻の身体にむやみと食いついた痕たちは、
肩先ではかぎ裂きのように派手に破けて、
わき腹は幾対も念入りに咬んだ証拠が規則正しく並んでいて、
妻の抵抗が弱まるにつれ、男の自由が増したことを物語っている。
そして臀部に開いた大きな穴は、しつように咬んだ証拠となって拡がり、
吸い取った血をわざと滴らせた名残りが、胸もとにほとび散らされた分と同じくらい、濃く残されていた。

――奥方を我々にゆだねられたご主人のなかには、さいしょに咬まれたところを視たい、という人がけっこういるものです。
けれどもわしらは、それは御覧にならないほうがよい、と応えています。
だって、さいしょは本気ですよ。
奥方が悲鳴をあげながら逃げまどったり、血を吸い取られるのを悲しがったり、服を汚されるのを嫌がったり、
そんなところを見せつけられて御覧なさい。
ご主人にワンパンチをくった上にお預けをくらうのは、わしらのほうです。


この街では、吸血鬼と人間とが共存している。
とはいえ、人間は一方的に食われる側。
それが嫌だという連中は、とうにこの土地を離れてしまった。
残ったものは、どうにか吸血鬼と折り合いをつけて、
自分たちの健康が損なわれない程度の血液を都合するのと引き替えに、街の安寧を守ってもらう。
それがこの街の、暗黙のルール。
街の女たちは、誘い込まれるままにこの娼館に脚を踏み入れ、
彼らの欲望を満たし、自分も満たされて、
それからなにごとも起こらなかったような神妙な顔つきで帰宅して、
堅実で常識的で無味乾燥な日常に戻ってゆく。


――二着目が、これです。
ほら、息子さんの学校のPTAのときに、よく着てかれる服でしたよね。
奥方は、どうもそういうお付き合いが、苦手だったようです。
PTAの役員もお辞めになられて、この服も一丁あがり、というわけです。
空色のジャケットの肩先に、これ見よがしな赤黒いシミ。
――生地の厚いジャケットの上から咬みついても、あまり面白みはありません。
ですが、どうしてもこのお洋服を汚して欲しいのとせがまれたら、やってのけるのがわしらの務め・・・ウフフ。
男のたちの悪げな薄哂いに、夫はさすがに同調しないまでも、反撥は押し隠すようになっていた。

――三着目が、こちら。
どうです?もうほとんど汚れがないでしょう?
このころにはもう、息が合ってきましたからね。
わしも奥方も、身に着けた衣装を汚さないようにと、気遣う余裕ができたのです。
その分、仲は深まっちゃいましたけれどね。おっと、失礼。
本当はね、一か所だけ、スカートの裏地についちゃったんです。白くて生温かいヌラヌラが。
あんた、男だからわかるでしょ?
でもね、クリーニングに出したら、きれいになりました。
わしも気に入った服なので、せしめてしまいました。
これ、ご主人のお見立てだそうですな。
さいしょのときのベーズリー柄のお洋服も、そうでしたな。
奥方からうかがいました。
今だから言うけど、奥方を見染めたきっかけは、あのベーズリー柄のワンピースがとても目についたからなんですよ。
わしとご主人とでは、もしかすると趣味が合うのかもしれませんな。

そういえば。
このごろ妻が身にまとう服は、見慣れないものが増えている。
真っ赤なスーツとか、露出度満点のこれまた真っ赤なタイトミニとか。
いつだか、これまた真っ赤なノースリーブのタンクトップに純白のふわふわしたロングスカートの組み合わせの時には、
どこの娘かと思ったほどだ。
――ありゃあね、わしの好みです。お目汚しだったら、ごめんなさい。
男というやつは、モノにした女に、自分好みの装いを着せたがるものでしょ?
でも、奥方の服装の趣味が変わってから、ご夫婦の営みの頻度が増えられたとか。
ご自分で択ばないまでも。
ご主人もお好きなようですね、赤い服。
奥方のファッションの幅を拡げたのは、わしの手柄ですぜ。
感謝してもらいたいものですな。

自分の好みの妻の服がつぎつぎと持ち主の血をあやして消えていって、
情夫の好みの妻の服に、じょじょに塗り替えられてゆく。
そうして妻は、自分だけの妻の部分よりも、吸血鬼の情婦の部分を一層色濃くしてゆくのだ。
自分の取り分は、はたして残してもらえるのだろうか。
ふと不安を覚えた夫に、吸血鬼はいった。
――だいじょうぶですよ、もっと自信を持ちなされ。
セックスだけが夫婦のすべてじゃあ、ないでしょう?
わしは良い思いをさせていただいているが、奥方は家に戻ったら、ご主人の忠実な奥方で、御園家の堅実な主婦ですから。
どちらが真実の奥方だろうか ですって?
野暮は言いなさんな。
女には、いくつもの顔があるんですよ。
ちょうどあんたに、常識的で穏健で堅実な勤め人と、妻を汚らわしい腕に鷲づかみにされて悦ぶ変態が同居しているように、ね・・・

さいごに取り出された服を目にして、夫は思わず声にならない呻きを洩らした。
それは去年、彼がボーナスで妻に買い与えた、結婚記念日のプレゼントの服だったから。
――奥方、紫がよくお似合いですな。これだけは、わしも脱帽です。
ですからね、いちおうここには置かせてもらっていますが・・・
奥方はここに来るたびこの服に着替えて、わしに抱かれるんですよ。
”あなた・・・あなた・・・ごめんなさい・・・私吸血鬼に襲われて血を吸われちゃう・・・犯されちゃう・・・”って、呻きながら。
あの瞬間は、わしの情婦でもなんでもなくて、あんたの妻なんだな。
そしてわしは、結婚記念日の服を着たあんたの妻をこの場で、犯しているんだな。そういう手ごたえがありますよ。
自分だけのもの にするよりも。
むしろわしは、そっちのほうが好みなのでな。
だから折々、奥方を誘いますよ。
あんたの持ち物を、ひとときわしのものにするために――


翌週は、夫婦の結婚記念日だった。
二人は高級ホテルで特別メニューのディナーを平らげて、
それから夫は妻を自家用車で、あの呪わしい洋館に送り届ける。
この洋館のあるじにも、この日を共に祝う特別ディナーを振る舞うために。

妻が身にまとうのは、今年の結婚記念日のプレゼントとして求めた、濃い紫のロングドレス――
「今年も紫が良いでしょう」
吸血鬼のリクエストをかなえてやるのは少し癪だったが、
時には似通う好みを意識して、とびきりのものを択んでやった。

妻を洋館の前で降ろすと、夫はいったん自宅に戻り、それから洋館の駐車場で、長い待ちぼうけをさせられる。
嫉妬に焦がれる思いを抱えながら。
「きっと彼の気に入るわ。だけど着て帰れなくなるわよ」
今年のプレゼントも気に入った――素直に称賛する代わりにそんな挑発を投げてきた妻のため。
車のなかには、着替えを二着、用意している。
どちらも自分の見立てた妻の服。

もしかすると、結婚記念日のお祝いに、やつは真っ赤なロングドレスでもプレゼントしてくれるのかもしれなかったが、
それを着て帰られるのは、もっと癪だった。
だから、自分の見立てた服を用意した。
けれども最低一着は、アンコールを断り切れなくなって、その場で使用されてしまうかもしれない。
なにしろ、服の趣味は、夫と情夫とで、かなり似通っているのだから。
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