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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

握り合う掌。

2019年11月11日(Mon) 07:53:59

肌色のストッキングを穿いたふくらはぎにやつの唇が這ったとき。
悠美ははっと息をのんで、夫の彬生の手をギュッと握りしめた。
目のまえの吸血鬼が迫らせてきた、淫らな意図を直感したからである。

すでに吸血鬼に血を吸われる習慣を身に着けてしまった彬生にとって、
熟女の生き血を欲しがる自分の親友に、妻を紹介することを思いつくのはごく自然の成り行きだった。
街に出没する吸血鬼を、いずれは受け容れなければならない。
奏覚悟して夫の赴任に随ってきた悠美だったが、じっさいに自分の血を欲しがっているという吸血鬼を紹介されたとき、
相手が黒マントをまとっているわけでもなく、モンスターのように口が裂けているわけでもなく、
どこにでもいそうな初老の白髪交じりの男性であるのをみとめると、ちょっと拍子抜けしたようだった。

杉尾ヒロシさん。54歳。ぼくよりひと周り年上だね。
じつはヒロシさんはもともとこの街に子どものころから住んでいた人で、
街が吸血鬼に解放された直後に奥さんを襲われちゃったんだ。
奥さんを襲った吸血鬼が、奥さんに本気で惚れているのを知ったヒロシさんはとても寛大で、
それ以来吸血鬼が奥さんと付き合うのを認めてあげて、ご自身も半吸血鬼になったんだ。

夫の紹介は上の空で耳を通り過ぎ、悠美はひたすら注がれてくる目線を受け止めるのに精いっぱいだった。

脚から吸うという行為は意外だったが、
「初体験ではどうしてもうろたえるので、首すじだと思わぬ怪我をすることがあるから」
という夫の説明に、なるほどと納得した・・・はずだった。
けれども不覚にも、なまの唇をストッキングを通してなすりつけられたその瞬間、
脚を吸うという行為自体を相手が望んでいたことに初めて気づいた。

初対面の客人を迎えるのに盛装したのは、夫のすすめがあったから。
くるぶしまで隠れるロングスカートの下に、高価なガーターストッキングをまとったのも、
礼儀のうちだと思い込んでいたから。
けれどもそれは、夫の悪友を不当に悦ばせたに過ぎなかったのだと気づいた時にはもう、
ストッキングをしつようにいたぶられ、チリチリになるまで咬み剥がれて、
ブラウスまで剥ぎ取られて夫婦のベッドに投げ込まれてしまっている。

「あなたお願い」
ひとりにしないで・・・という望みに、夫は戸惑いながらも応えてくれた。
手を握っていてというと、手を握りしめてくれた。
うなじに迫る牙の怖ろしさに、悠美は夫の手を痛いほどきつく握り返していた。

うなじのつけ根に、鋭い牙がクイッと食い込まされる。
ずぶりと埋め込まれた牙が、分厚い唇に隠された瞬間、
キュウッ・・・と生き血を吸い上げる音が洩れた。
洩れた音のひそやかさが、行為の淫靡さを物語っていた。
気絶せんばかりに悩乱した悠美は、白目を剥いたまま生き血を吸われた。

キュウッ、キュウッ、キュウッ・・・
貪婪な吸血の音が、盛装した妻の姿におおいかぶさるのを、夫の彬生は昂りを覚えながら見守った。
妻の掌はぎゅっと、彼の掌を握りしめたまま、小刻みに震えている。
かわいそうに、まだ正気を保っているのだ。

正気を保ちながら血を吸い上げれらるのは、さいしょのうちはちょっと厳しいものだと、彼は自身の経験から知っていた。
けれどもそのうちに慣れてくると・・・
そこまで知ってしまった彼は、その後ヒロシと面会するとき、こっそり持ち出した妻の服を身にまとうようになっていた。
悠美を襲いたいと念願したヒロシの気を紛らわせるためにしたつもりだったのに、
いつか悠美の身代わりに襲われることに快感をおぼえてしまい、
その行為が本当に悠美を襲わせるための前段階だったのだと分かりながらも、密会をやめることができなくなっていた。

目のまえの吸血鬼が妻の生き血を摂取しながら、
口にしている血液の味に満足を覚えているのを感じて、彬生は奇妙な誇らしさをおぼえていた。

妻の手から、力が去った。
失血のせいばかりではないのだと、彬生は知った。
夫の手を振りほどくと悠美は、その腕をそのまま自分のうえに覆いかぶさる吸血鬼の背中に、ツタのように絡ませてゆく。
悠美の息が、荒くなっている。
彬生は去り時を自覚した。
悠美は、剥ぎ取られたブラウスをまだ身にまといながら、むき出しになった肩を切なげにはずませはじめている。
ロングスカートは太ももが見えるまでたくし上げられていた。
ひざ下までずり落ちて弛んだストッキングが、妻が堕落し始めたのを物語っている。
この場にとどまっていちぶしじゅうを見届けたい衝動と、招くべからざる客人に妻を独り占めにさせてやりたい欲求とが、
彬生のなかでぶつかった。
物陰から見守るという中途半端な選択肢は、決して不正解ではなかったはず。
長年連れ添った妻が吸血鬼と親和する記念すべき瞬間を、彬生は昂りながら見届けていた。
ひと晩じゅう過ごされたまぐわいのいちぶしじゅうを見届けて、翌日は欠勤するはめになったけれど。
彬生は決して後悔をしていない。

欠勤をしたことも。
すべて見届けてしまったことも。
妻の貞操を惜しげもなく振る舞ってしまったことも。
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母親をモノにされてしまうのは、花嫁をモノにされてしまう以上に致命的であること。
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