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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

婚前。

2019年12月01日(Sun) 10:09:25

結婚を控えた初夏のころ。
わたしは彼女とのデート中に、吸血鬼に襲われた。
先にわたしが咬まれ、身じろぎひとつできなるなるほど血を吸われた。
彼女がジュースを買いに行っているあいだの出来事だった。

彼女の戻りを待つあいだ、自分の血を吸い取った相手に、わたしはこんなふうにいったそうだ。
  いま連れだって歩いていたのは結婚を控えた彼女で、
  もしきみの気に入ったのなら紹介してあげるから、思うと存分生き血を愉しむが良い――と。
もちろん、そんな記憶はどこにもなかったが、いまではそんなことはどうでも良かった。

2人分のジュースを買って戻ってきた彼女は、身じろぎひとつできないでいるわたしの前で吸血鬼に襲われて、
わたしのときと同じように首すじを咬まれてしまった。

わたしの場合、咬まれた途端あっという間に身体じゅうの血液のあらかたを持っていかれたけれども、
彼女の番になると念がいっていた。
髪の毛を掻きのけて首すじをあらわにすると、なめらかな素肌に舌を這わせてじっくりと嘗め味わって、
それからがぶりと食いついたのだ。
悲痛な叫びをひと声あげた彼女は、しつけの良い家の出のお嬢さん育ちだったので。
もうそれ以上はしたない大声を出すのをためらいながら、
抱きすくめる吸血鬼の腕のなか、歯を食いしばって悲鳴をこらえながら、
うら若い血潮をじわりじわりと抜き取られていったのだった。
このさい泣きわめいた方が効果的だったはずだから。
吸血鬼は彼女が自分に血を吸わせてくれるためにわざと黙っているのだと、自分に都合のよい解釈をして、
彼女の生き血を啜りつづけた。

彼女が血を吸われているあいだ、
彼女が買ってきてくれた缶ジュースが芝生のうえに転がっているのを、わたしは眺めるともなく眺めていた。
なにしろ、彼女が咬まれているシーンは、濡れ場どうぜんに生々しかったからから、
とても見るに堪えなかったのだ。
というよりも。
彼女が悲痛に歯を食いしばり、悔し気にまつ毛を震わせて、
そのうちだんだんと表情が別人のようにほぐれていって、
しまいにはウットリとした顔つきをして血を吸い取られてゆくありさまに、
つい見蕩れそうになってしまっていたから――

ひとしきり彼女の血を吸うと、
男はわたしの前で彼女の唇を奪い、彼女に対する並々ならぬ執着を見せつけた。
真面目に育てられた彼女はもちろん処女で、
キスさえも、結納帰りにわたしと交わしたのが初体験だったという。
わたしの妻となった後で彼女から聞いたのだが、
キスを奪われたのはかなり決定的で、わたしの妻でありながらこのひとの奴隷になるしかないと感じてしまったらしい。
吸血鬼に言わせると。
血を吸った相手が非処女のときは、躊躇なくその場で犯すのが習性だという。
そこに夫や婚約者がいてもおかまいなしだというから、ひどい話だ。
そして、彼の言い草では、
彼女がジュースを買って戻って来るのをふたりで待つあいだ、
わたしのほうから「彼女を咬んで身持ちのほどを占ってほしい」と頼んだのだとことになっていた。
キスで済んだのは御の字ださと言いたいのだね?とわたしが問うと、そのとおりだとヌケヌケとこたえたものだ。

彼女は、吸血鬼のしつような腕のなかからなんとか抜け出すと、
芝生のうえに落ちていたジュースを手に取って、
「ジュース飲も。」
と、照れ隠しするようにいった。
その時にはわたしも、昏倒どうぜんの状態からなんとか立ち直っていたので、
「ああ、そうだね。」
と応じ、照れ隠しするように、
「吸血鬼さんも要るかな」
と水を向けた。

彼は忌々しいことに、指に着いた彼女の血を、まだ意地汚くもチビチビと嘗めていた。
彼は、いまさっききみとこのお嬢さんからたっぷりと頂戴したから、ジュースは要らないと応えた。
ジュースが欲しいと言われたら、買いに行くのはわたしだったはず――
吸血鬼を彼女とふたりきりにしてやりたいという奇妙な衝動がわたしの胸の奥を初めてかすめたのは、そのときのことだった。

3人は、だれからともなくその場に腰を下ろした。
彼女はわたしに寄り添うようにして。
吸血鬼はそれとなく察してくれて、すこし離れた場所に座った。
彼女は白い歯をみせて、
「シャツ」とだけ言って、吸血鬼のシャツが血に濡れているのを指摘した。
「あんた方もだ」
吸血鬼は即座に応え、わたしたちのシャツやブラウスのえり首を指さした。
ふたりの上着にはそれぞれ、初めての血がもともと描かれた柄のように、露骨なほどにしぶいていた。

「お二人には感謝している」
と、彼はいった。
今夜じゅうにだれかの血を吸わないと、灰になるところだったと告げてくれた。
きみたちの血は無駄に流れたのではないと言いたいらしい。
「お気づかいありがとう。」
と、わたしは冷ややかにこたえた。
未来の花嫁を目の前で咬まれたのだから、わたしが彼を冷たくあしらうのは当然なのだと思った。
そうすることでふだんのプライドを取り戻そうとする意図を彼女は賢明に読み取って、
「そんな言い方をするものじゃないわ」と、わたしをたしなめた。

「さっきのふしだらを赦してくださるのなら」
と、彼女は言葉を次いで、
「私、貴方と予定どおり結婚する」
といった。

彼女の意見に、わたしにもちろん、否やはなかった。
わたしの考えを表情で察した彼女は、もうひとつつけ加えた。
「この街に住む以上、この人これからも私の血を狙うと思う。
 でも望まれたら私、断り切れない。
 だから、決めとこ。
 生命をとらないでくれるのなら、このひとに交代で献血しよ」
それもわたしには、否やはなかった。
すでに皮膚を侵されたわたしは、体内に注ぎ込まれた淫らな毒液に理性を侵食されてしまいはじめていた。
それは彼女らも同様だった。

吸われる前と変わらない賢明さを失っていなかった彼女は、
「まだ吸い足りないのではないですか」
といい、すこしのあいだならまだお相手できますと彼に告げた。
彼は、彼女の脚から吸いたいと望んだ。
「ストッキング脱ぎますね。」
という彼女の手を押し留めると、そのまま咬みたいと、重ねて望んだ。
彼女はちょっとだけ、わたしのほうを省みたが、すぐに芝生のうえから起き上がり、
十歩ほど離れたところにあるベンチに腰掛けると、
肌色のストッキングを穿いた脚をもじもじとさせながら、どうぞといった。

吸血鬼が彼女の足許にかがみ込んで、ふくらはぎに唇を吸い着けるのを、
まだ失血から回復していないわたしは、みすみす見せつけられてしまう憂き目に遭った。
なにか、彼女の礼節を汚されるのを黙認してしまうような気がした。
事実、そのとおりだったのだが、いまでもわたしはそのとき彼らの行為を黙認したことを、あまり後悔していない。
彼女の穿いていた肌色のストッキングはみるみるうちに咬み剥がれて、健康に輝く脛を外気にさらけ出して
しまった。
それでも彼女は満足げだった。
そしてわたしも、満足していた。
彼女のうら若い生き血がだれかを悦ばすことに、歓びを覚えるようになっていたのだ。

「口づけするなら、いま奪って。」
わたしからすこしの隔たりを置いてふたたび首すじを咬まれながら、彼女は吸血鬼にそう囁いたという。
ふたりはわたしの見えない角度で唇を重ね合わせたが、
そんな気づかいにもかかわらず、二人がなにをしているのか、わたしにも察しがついていた。
わたしは二人のいるベンチにすぐに歩み寄ることを控えて、ふたりがむさぼり合うのを黙認した。
そして、ふたりが交わしあう接吻に満足し切る頃合いに、ごく控えめに、「大丈夫?」と声をかけた。
吸血鬼は彼女のうえから起きあがると、心配をかけてすまないとこたえた。
彼の口許から吸いとったばかりの血が滴って彼女のブラウスを汚しそうになったので、わたしはハンカチで彼の口許を拭ってやった。
「そろそろ行こう」
とわたしが促すと、彼女は素直に随った。
連れだって立ち去ろうとする私達を見て吸血鬼は、
「お似合いのご夫婦だと思う。」
と言ってくれた。

咬み破られたストッキングは彼の手で彼女の脚から抜き取られて、ポケットのなかにさせめられていったが、彼女もわたしも、彼のさもしいやり口を咎めようとはしなかった。
挙式を半年延期して、彼女を処女のまま吸血鬼に逢わせることを極めたのは、その翌日のことだった。

打ち解けた関係になったころ。
わたしは彼に、どこで彼女を見染めたのかと訊いた。
きみたちがこの公園に入ってきたとき道を尋ねたら、ふたりともにこやかに応じてくれたではないか、と、彼はいった。
わたしたちはどちらも、彼に道を尋ねられたことを記憶していなかった。
わざと記憶を消したからね、と、彼はイタズラっぽく片目をつぶった。

さいしょはね、
きみの彼女の装いに目がいったのだよ。
彼はいった。

夏も近いのにストッキングを穿いていたので、礼儀正しいお嬢さんなのだと最初から好印象を抱いたそうだ。
わたしにとって彼女が吸血鬼の目に留まることは、たとえそれが名誉なことであったとしても、迷惑な話だった。
少なくとも最初のうちは。
けれどもわたしたちは徐々に慣れてゆき、彼との距離を知らず知らずのうちに近寄せていった。

さらに親しくなった時、逆に彼に訊かれた。
どうして私の無礼な行為を許してくれたのか?と。
きみが彼女をたんなる欲望のはけ口として扱うのではなくて、紳士的に振る舞うからだ、と、わたしはこたえた。
そのころにはもう、彼女は嫁入り前の身を、彼に完全に捧げ抜いてしまっていた。


逢瀬を重ねる度に、芝生のうえに座る三人の距離感は変わっていった。
わたしにぴったりと寄り添って怯えていたうら若い婚約者は、3人肩を並べて座ることに同意し、
それから手を握ってくる吸血鬼に自分の手を握らせるようになっていた。
じかに素肌を吸って吸血するという行為を通して、彼女は育ちの良さに由来する潔癖な壁を融かされてゆき、
彼に血液を捧げることを悦ぶようになっていた。
わたしは3人ぶんのジュースを買いうために芝生を離れ、その間にふたりは、つかの間の逢瀬を愉しんだ。
ジュースを買うのは、彼らをふたりきりにしてやるためだった。
彼はわたしのいない間に、ストッキングを穿いた彼女の脚を咬んで、
彼女の礼装を辱めながら、思う存分血を吸い取った。
それでも彼女もわたしも、彼の振舞いに紳士らしさを見出していた。

初体験を彼に捧げたいと打ち明けたとき。
わたしはひとつだけ、顔を立てさせてほしいと望んだ。
そして――
わたしの希望として、彼女の純潔をきみにプレゼントしたいと、つぎのデートの時に告げていた。
希望はその場でかなえられた。
いつもの芝生のうえで、
彼は彼女に対して、存分に紳士的に振る舞っていった――

半年遅れで挙式を挙げた彼女とは、仲睦まじく暮らした。
さいしょの一箇月はふたりきりで過ごすが良いと、彼はわたしたちの前から姿を消した。
最初はみつきと言っていたのを、それはどうかしらと告げたのは妻のほうだった。
そしてわたしたちはちょうどひと月過ごした後、あの公園に脚を向けた。

さいしょのデートのときと、同じように。
彼女は悲鳴をあげて逃げ回り。わたしは血を抜かれた身体を横たえながら焦がれ抜いた。
息を弾ませながら口づけを交し合い、よそ行きのワンピースを惹き剥がれ、公園の外気に素肌をさらしながら、
新婚一箇月の身を、夫ならぬ身に抱きすくめられていった。
彼女はとても、満足そうだった。
わたしももちろん、満足だった。
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