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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

従姉

2005年11月05日(Sat) 20:31:35

グレーのハイソックスを履いたボクのふくらはぎに、吸血鬼のおじさんはさっきから、牙を埋め込んでいた。
すべてに慣れてしまったボクにとって、ちゅうちゅうと旨そうに血を吸われるのは、決して悪い気分ではない。
少しだけ、くらくらと眩暈がするのを覚えながら、ボクは彼をそそるようなことを口にしてしまっていた。
「週末、いとこのお姉さんが遊びに来るんだけど・・・」

薄いピンクのスーツに白のブラウス。
ゆったりとウェーブした黒髪に、乳色の肌。健康そうな歯並びの良い歯。
薄手のグレーのストッキングに、白のパンプス。
はたちを過ぎたか過ぎないかの従姉の夕子さんは、とてもきれいで、まともに見つめることがなかなかできないでいた。
いっしょに街はずれの公園に散歩に行くといったボクに、ママは、
「あんまりあぶない所に行っちゃダメよ」
といいながら、ちょっと顔をしかめていた。

忽然として現われた黒衣の男に、お姉さんはふるえあがって、
きゃああっ!と、叫び声をあげた。
お姉さん、怖いっ。
そういいながら、ボクは夕子姉さんさんの腰にしがみついて・・・逃げられないように抑えつけていた。
「あっ!うう・・・」
かすかな身じろぎと呻き声とで、吸血鬼が夕子姉さんのうなじに、ぐいっと牙を埋めたのがわかった。
キュウキュウ・・・くちゅうっ。
聞き慣れた血を吸うときのナマナマしい音が、綺麗に着飾った夕子姉さんにおおいかぶさる。
やがてお姉さんはくたくたと、その場にしゃがみこんでしまっていた。

吸血鬼のおじさんは、お姉さんを縁側に腰かけさせて、グレーのストッキングの上からふくらはぎを舐めている。
お姉さんは息も絶え絶え、心持ち仰のけた顔をふらふらさせて、喘ぎながら、おじさんのやり口に眉をひそめていた。
失礼なやり口に抗議をしたくても、もう思うように体が動かなくなっているらしくって。
とても悔しそうに、おじさんがストッキングの脚をにゅるにゅると汚らしくいたぶりつづけるのを見つめつづけていた。
その目つきがいっそう気に入ったらしくって。
おじさんはさぁ御覧、とばかりにいっそう、意地汚く、夕子姉さんのストッキングを辱めていくのだった。

血を吸い取られたあとの傷口は赤くはれあがって、吸い残した血潮がまだてらてらと光っている。
ボクはさりげなく白いうなじに触れてゆき、
ちゅるっ。
ちょっとだけ口に含んだ夕子姉さんの血は、錆びたようなつぅんとした香りに包まれていた。

ぱりぱりっ。つつつぅー。
ふくらはぎに、ストッキングの伝線が走る。
夕子姉さんがとてもイヤそうに顔をくもらせるのを、吸血鬼のおじさんはとても嬉しそうにうかがっていた。
―――さぁ、こっちへおいで。
吸血鬼のおじさんは、まえにママを連れて行った植え込みの陰に、夕子姉さんを引きずりこんでいく。
怯えたような白い顔に、おじさんの銀髪がワサワサと乱れかかった。
たくし上げられた薄いピンクのスカートから、かっこうのいい脚がにょっきりと伸び、草むらに横たえられる。
破けたグレーのストッキングが、夕子姉さんの脚を、まだひざ上まできれいに染めていた。
ツヤツヤとした感じが、ひどくなまめかしい。
姉さんの白い脚が。
くすぐったそうに。むず痒そうに。ヘビみたいにくねるたび、
ストッキングはだらしなく、ずるずるとずり落ちてしまった。
オトナっぽい感じのするストッキングが。
きれいな脚の輪郭から、たるんで。浮き上がって。
みるかげもなく、くしゃくしゃになってゆく。
子供心にも、とてもふしだらに映るそんなありさまを。
ボクは息をこらして、あまさず見つめつづけてしまっている。

姉さんがお勤めの引けると毎週のように公園に出かけるようになったのは、それからのことだった。

数年後。
叔父さんが亡くなったあと、夕子姉さんはさと子叔母さんとふたりで帰郷してきた。
お墓参りに訪れたふたりは、そろって薄黒いストッキングを履いている。
ところもおなじ、公園の東屋で。
夕子姉さんは破けたストッキングに白い肌を滲ませながら、ボクのほうへと近寄ってくる。
「見ちゃ、ダメよ。見ても、忘れてちょうだいね」
東屋のなか、叔母さんの白い肌がはだけた黒のワンピースになまめかしく映えていた。
そのうえにおおいかぶさっている黒い影が、なにをしているのか、むくむくとうごめいているのが見える。
さと子叔母さんはその黒い影の下で、ちょっとつらそうに、でもどこかキモチよさそうに、顔をしかめていた。
ちょうどあのときの姉さんと、おなじ顔つきになっていた。

夕子姉さんはもう、血を吸われたあとだった。
白いうなじにふたつ、咬まれた痕がどす黒く、刻印されている。
おなじものを、さと子叔母さんもつけられちゃったに違いない。
「お父様もいらっしゃらないんですもの。すこしでも若くて、きれいなうちに・・・逢わせてあげたかったのよ」
そう口にする夕子姉さんの頬に乱れかかった髪の毛はちょっぴり栗色に染められていて。
夜の巷の女みたいに、すさんで見えた。

つぎの日。
吸血鬼のおじさんは、叔母さんだけを誘って、お邸に連れて行った。
きっと、夕子姉さんみたいに洗脳してしまうつもりなのだろう。
一人残ったお姉さんは、あの公園へとボクを誘った。
白のブラウスに、千鳥格子のスーツ。
黒のパンプスを履いた脚は、あのときとおなじ、グレーのストッキングに包まれている。
ストッキングには、いままでになくツヤツヤとした光沢がじんわろと滲んでいた。

小さい頃から憧れていた、優雅な二重まぶた。
目じりにすこししわが浮いていたけれど、夕子姉さんはまだ独身だった。
「母もわたしも、あのかたに食われつづけるんだわ」
すこしもイヤそうでなく、姉さんは言った。
「責任、取ってくれるわね?」
うかつなことに。
それが従姉からのプロポーズだと、すぐには気がつけないでいた。
従姉弟でも結婚できるということは、本を読んで知っていたのだけれど・・・。
なん年もまえ。
吸血鬼のおじさんと示し合わせた悪戯は、ほかならぬボクの花嫁を犯す儀式だったのだ。


あとがき
少年の回想という形を取ろう、と思ったのですが。
ちょっと平板にながれてしまいましたね。(^_^;)

あとがき 2
再あっぷ後、すこし直してみました。^^;
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