FC2ブログ

妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

吸血鬼に狙われた法事

2019年12月22日(Sun) 08:18:04

「ママまで咬まれた・・・!」
間藤奈々は、半泣きになっていた。
奈々の母である七瀬は洋装のブラックフォーマル姿のまま、寺の本堂の板の間に突っ伏して、白目を剥いている。
漆黒のブラウスとアップにした黒髪の間から覗く白い首すじには、赤黒い痣がふたつ綺麗に並んでいて、
吸い残された血潮がテラテラと光っていた。
放恣に開かれた両脚は、見る影もなく咬み破られた黒のストッキングが剥がれ堕ちて、脛の白さをきわだたせている。
なによりも、少女の奈々にとって衝撃的だったのは、
めくれあがった重たいスカートのすき間から覗く太ももに、生々しい白濁した粘液が淫らにヌメっている光景だった。
「視るんじゃない」
従兄の智樹は奈々に寄り添うようにして、怯える華奢な身体を抱きすくめた。

そのささやかな法事で顔を合わせたのは、奈々とその両親、智樹とその母の5人だった。
智樹の父は、本堂にしつらえられた経机の上の写真立てに収まっている。
数年前、勤め帰りの道すがら、首すじから血を流して、謎の死を遂げていた。
智樹の父は土地の風習に従って土葬に付され、いまはこの寺の墓地の一角に眠っている。
以来、毎年の祥月命日の日に、この二つの家族は寺で顔を合わせるようになっている。

異変が起きたのは、この寺についてすぐのときだった。
最初に咬まれたのは、智樹の母、華絵だった。
寺に着いたばかりの奈々の一家の前、ひと足先に着いていた智樹が控えの間から飛び出してきたのだ。
「母さんが咬まれた・・・!」
と、血相を変えて。
智樹が小用を足している間の、ほんのつかの間の出来事だったという。
戻ってみると、母の華絵が白目を剥いて倒れていた。
洋装のブラックフォーマルに包まれた身を、畳の上にしつらえられたテーブルにもたれかけるようにして絶息している。
きょうの日に備えてきちんとセットされていた栗色の髪はひどくほつれていて、
吸血の最中抑えつけられながら、しつようにまさぐられた形跡を残していた。
脚に通された黒のストッキングは、先刻奈々の母親がそうされたように、見る影もなく咬み破られ、片脚だけ脱がされている。
どういう意図でそうされたのか、お尻がまる見えになるほどまくり上げられたスカートに散った白い粘液が、あからさまに物語っていた。

「義姉さん!」
奈々の父親の精次郎が顔色をかえて母に取りすがるのを、智樹は冷ややかに視ていた。
智樹の父なきあと、精次郎が兄嫁に言い寄って堕落させ、始終逢引きを遂げているのを、智樹はよく知っている。
そんな智樹の横顔を、奈々は見逃していなかった。
智樹の母と自分の父との間に、どんなことが起きているのかを、薄々察していたからである。
精次郎が同じように首すじから血を流してトイレの前の廊下で倒れているのを発見されたのは、その十数分後のことだった。
「早く、誰かに来てもらいましょうよ・・・!」
そういって怯えた奈々の母親の七瀬が襲われたのは、そのわずか数分後のことだった。

「智樹兄さん・・・だったのね・・・!?」
顔色をかえて立ちすくむ奈々は、早くも本堂の壁を背に追い詰められている。
半ズボンに紺のハイソックスという、十代後半の青年には不釣り合いな立ち姿が、黒のワンピース姿の奈々に、ゆっくりと迫っていった。
智樹の履いているハイソックスが片方、わずかにずり落ちて、その間に赤黒いシミがふたつ、綺麗に並んでいる。
「そう、ぼくも吸血鬼になっちゃったんだ」
ちらりと笑んだ唇のすき間から覗く白い歯に、奈々の両親から吸い取った血潮がバラ色に輝いていた。
「きみたち家族三人の血が、ぼくの中で仲良く交わる・・・想像するとゾクゾクこない?」
く、来るわけないわッ・・・
叫びかえそうとした奈々の声はかすれて、声にならなかった。

母さんとは相談づくさ。
きのう問い詰めたら、なんなくしゃべったよ。
きみの父さんとのいただけない関係。
もちろん、さいしょから、なにからなにまでわかっちゃっていたけどね。
だから、血を吸ってやったんだ。
ぼくたちはね、セックス経験のある女のひとを襲うときは、犯してしまうんだ。
母さんも、例外じゃなかった。
意外にイイ女だったな。
精次郎叔父さんがとり憑かれたのも、無理ないと思ったよ。
それできょうの法事には、約束よりも早い時間に着いて、さきに母さんを襲ったんだ。
動転したきみの父さんも、トイレに立って一人になったところを襲った。
いちころだったね。
それで、きみの目を盗んで、七瀬叔母さんのことも戴いた。
七瀬叔母さんも、いい女だね。
精次郎叔父さんは、七瀬叔母さんひとりに満足していれば良かったんだよ。
もっとも――叔父さんがまじめに生きたとしても、ぼくに襲われちゃう結果は同じだったはずだから、
うちの母さんといい思いをできただけ、ラッキーだったかな。(笑)
だいじょうぶ。
きみも含めて、だれも死なせないよ。
その代わり、順ぐりにぼくに咬まれて、血を愉しませてくれないとね。
こういうのを、愉血って呼ぶんだ。
輸血じゃなくてさ。
うふふ。
震えているの・・・?
わかるよ。怖いよね。
でも、すぐに済むから。
ちょっとだけ痛いけど、目をつぶってこらえてね。
ははは。いいじゃん。
処女を襲うときには、すぐに犯さないんだよ。
きみだって、例外じゃないのさ。

襲われることも例外ではない。
そんなふうにしか、聞こえなかった。
壁ぎわで抑えつけられた手首と肩が、痛いほどの重圧の下であえいだ。
そして首すじには、父と母の首すじに食い込んだ鋭利な牙が、ググっ・・・と食い込んできた。
ああああッ・・・
はしたないと思いながらも、悲痛な悲鳴をこらえることができなかった。

柔らかい首すじだと、智樹はおもった。
あふれ出る血潮の初々しさも、乙女の血そのものだとおもった。
腕の中の奈々は怯え切っていたけれど。
智樹は容赦なく、生え初めたばかりの牙を、根元まで埋め込んだ。
奈々の血潮がジュッ!とかすかな音をたてて、黒いワンピースの肩先に撥ねるのを、小気味よく感じた。
「美味い。まぎれもない乙女の血の味だ。きみはぼくの恋人になるんだ。いいね?」
牙を引き抜くと、怯える奈々にしたたる血潮を見せつけながら、智樹はいった。
従兄の口から発した「乙女」という言葉に、奈々ははっとすると、おずおずと、けれどもはっきりと頷いた。
そして、
「乙女・・・なんだね」
と確かめるようにいった。
智樹が頷くと、フッ・・・と嬉しげにほほ笑んで、白い歯をみせる。
「もっと・・・吸って」
さっきまで怯えていた少女は、自ら進んで吸血鬼の抱擁にわが身をゆだね、もう片方の首すじも、嬉々として咬ませていった。

脚を咬むのが好きなんだね。
じゃあ、あたしの脚も咬んで。
真っ白なハイソックスが真っ赤になるくらい、血を吸い取って頂戴。
周りの人にも、さいしょから真っ赤なハイソックスなんだって思わせたら、
帰り道も恥ずかしくないから・・・
智樹兄さんが愉しんでくれるなら、咬み破られても惜しくはないよ。
奈々の脚、そんなに咬み応えが良いの?
うれしいわあ。もっと咬んで。

うふふ・・・ふふふ・・・
住職のいないひっそりとした本堂のなか、
少女のあげるくすぐったそうな笑い声が、間断なくつづいた。

「きょうはご来訪ありがとうございました」
智樹の母の華絵が、鄭重に頭を下げる。
「イイエ、また近々お会いしましょうね」
奈々の母の七瀬が、鶴のような首を、これまた鄭重に傾けてそれに応じた。
「じゃあ。義姉さん、また」
奈々の父の精次郎も、愛人同士の目線をだれにはばかることなく交わして、華絵もそれに応えていた。
だれの首すじにも赤黒い咬み痕に血のりをあやしていたけれど。
それらはだれの目にも入らないかのように、だれもそのことに気を使っていない。
「智樹くん、寂しくなったら奈々に逢いに来てね。叔母さんも待っているから」
おとなしい七瀬のかけた言葉の裏にある意味を、居合わせた全員が察したけれど。
七瀬の夫である精次郎を含めて、だれもがそれをとがめようとはしない。

「奈々ちゃんがすっかり娘さんらしくなっていて、びっくりしました」
智樹がにこやかに、白い歯をみせる。
その歯にはまだ、吸い取られた血があやされていたが、だれもがそのことを話題にはしない。
「乙女の血って言われて、よかったね、奈々」
七瀬は娘の顔を覗き込んで、同性としての柔らかな目線をそそいだ。
「それがいちばん、嬉しかった」
笑みを輝かせる奈々は、去年までは男の子だった。
――どうしても、女子として学校に通いたい。
思いつめた表情をまえに、最初はうろたえていた両親だったが、さいごには子供の意思が通った。
吸血鬼になった従兄が自分のことをさいしょからさいごまで少女として接してくれたことに、奈々の感謝は消えない。

従兄(にい)さんには、いつか奈々の処女をあげるわね。
もし奈々が男に戻って結婚するとしたら、結婚相手の子の処女もあげるわね。

謡うように約束を交わした奈々の柔らかな声色が、後ろ姿を眩し気に見送る智樹の耳朶に、ずうっと残りつづけていた。
前の記事
フェイク披露宴
次の記事
遭遇。

コメント

コメントの投稿

(N)
(B)
(M)
(U)
(T)
(P)
(C)
管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
http://aoi18.blog37.fc2.com/tb.php/3914-58b50ce8