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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

タウン情報  「逆里帰り」

2019年12月26日(Thu) 07:57:42

暮れも押し詰まったこの時期になると、吸血鬼との共存が進む当地では、「逆里帰り」という現象が起こっている。

都会に住まう境康司さん(51歳、仮名)と芙実子さん(49歳、同)の姿も、その中にある。息子の孝嗣さん(27)が当地の女性と結婚し居住しているためだ。
「普通ならわたしたち夫婦が親のところに行くのですが、年末に人(吸血鬼〉の集まる当地では、血液の需要が高まるので人を呼び寄せることが奨励されます。わたしの場合は両親を呼び寄せています」と語る孝嗣さん。3年前に当地に棲むひろ子さん(22)と結婚して以来、毎年の行事になっているという。

「悪い嫁にはめられたんです」
孝嗣さんの母親、芙実子さんはそういって苦笑する。
もっとも嫁姑はむしろ仲が良く、今回の取材でもひろ子さんが甲斐甲斐しくフォローをしてくれている。
「いまとなっては記憶が不確かなんですけど――この街で吸血鬼に血を吸われると、記憶が入れ替わるそうですから――いま残されている記憶は、とても良い記憶なのです」
芙実子さんが語ることを要約すると、彼女を襲った吸血鬼は嫁であるひろ子さんの血を嫁入り前から吸っていた、長年の交際相手であるという。
「主人はいままでどおりの交際を許してくれましたけど、親族は話が別です。私、”うるさい姑に浮気を咎められる”って思ったんです」
傍らで嫁のひろ子さんは、そういって肩をすくめた。

いまの愛人に初めて襲われたのは女学生のころ。下校途中でのことだったという。
「変態なんです。脚を咬んで靴下を破くのが好きだった」
ふくらはぎを咬まれて吸血され、制服の下に履いていた白のハイソックスを汚されながらも、ひろ子さんは初めて体験する吸血の快感を、骨の髄まで味わわされてしまったという。

学校を卒業し、地元の企業に勤めるようになると、ハイソックスをストッキングに履き替えて”接待”をつづけ、2年後にはめでたく処女を卒業。
すでに、取引先として出会った孝嗣さんとの挙式を控えている時分だったという。
「未来の夫を裏切るという罪悪感はありませんでした。むしろ、処女を捧げるのはこの人で良かったと、抱かれる腕のなかで実感しました」と語るひろ子さんを、姑の芙実子さんは「ひろ子さんたら、ほんとうに悪い嫁なんですよ」と言い、おどけて小突いた。
「それで彼氏には、お義母さまを襲うことをすすめました。孝嗣さんも賛成してくれて・・・母さんが一日でもよけいに若いうちに血を味わわせてあげたいと言ってくれたんです。悪い嫁、ではなくて、悪い夫婦ですね」
ひろ子さんの傍らで妻の過去をずっと黙って聞いていた夫の孝嗣さんも、”洗脳”を受けてしまった一人である。
「花嫁の処女を別の男のひとに奪(と)られるんだと聞かされても、意外なくらいサバサバとしていました。すでにわたしもその方に血を吸われた後でしたし、ずっと処女の生き血を吸ってきたお相手である男性が芙実子の初体験の相手にふさわしいと感じたのです。初体験は、花婿のぼくから差し上げたんです」
爽やかに笑うご主人を、若妻のひろ子さんは頼もし気に見あげていた。

都会育ちのご両親を洗脳するのには、地元のほうが都合がよい――そう考えた若い二人は、結婚を控えて孝嗣さんのご両親を街に呼び寄せて一席もうけたところ、
「意外にも、父がさきに共鳴してくれました」
孝嗣さんはそう証言する。
「”母さんがはずしているうちに、まずぼくからしてもらおう”と、息子の嫁になる人の愛人に進んで首すじを咬まれて、その場でぐんなりと。父の血の味が気に入ったらしくて、怖くなるくらいゴクゴクと飲んでいましたね。ぼくの血の味と似ていたそうで・・・要は相性が良かったのでしょうね」
「妻を襲われるのに救おうとしないのは、やはり夫としてどうかと思いましたので」
長年連れ添った芙実子さんを伴って年越しに訪れた康史さんも、そう語る。
「悔しかったですよ、それは。永年守り抜いてきた操を、むざむざと夫の前で・・・」
わざと刺激的な表現を用いながら、芙実子さんは「塗り替えられた記憶」を語る。
択んだ言葉の割に印象が暗くならないのは、終始誇らしげな口調のせいなのだろう。
康史さんは、最愛の芙実子さんの血が相手の吸血鬼の気に入ったことを誇りに思っている、という。
「ええ、さいしょは首すじでした。ご主人のより柔らかですなとか言われて、私舞い上ってしまって・・・好きほうだいに、チュウチュウやられてしまいました。
靴下を破りながら脚を咬むのがお好きだそうで・・・私は気が進まなかったのですが、もうろうとなっていた主人にまで、”お望み通りかなえて差し上げなさい”と勧められて・・・」
面会した花嫁のご両親に対して失礼がないようにと装われた真新しいストッキングは、その場で吸血鬼の好色な唇を這いまわされて、見るかげもなく剥ぎ堕とされたという。
「家内、ノリノリになっちゃいましてね・・・」
そのあとを語ろうとする康史さんを「やだ」と恥ずかしがっていちどは制止した芙実子さんだったが、意を決したように口を開いた。
「エエ、お捧げしちゃいました。女の操。嫁になるひろ子さんがが純潔を捧げたというその男性に、なんですね。主人に視られていることと、嫁のお相手だということと、両方にドキドキしました。股を割られるまではあきれるほど呆気なくて・・・気がついたらもう、夢中になってあのかたにしがみついてしまっていました」
「妻の腕が嫁の相手であるその男性の背中におずおずと巻きつけられていくのをみて、これは終わったな。私は男として、家内は女として・・・と、すこしだけジンときましたね。けれども気がつくともう、わたし自身が目の前のラブ・シーンを食い入るように見入ってしまっていて。相手の男性が家内の身体に満足してくれたらしいことに、むしろ嬉しい気持ちになっていました。すでにあの時点でもう、咬まれたときに注入された毒がまわっていたんでしょうね」
吸血鬼は妻を気前よく与えてくれたご主人に感謝を告げ、
ご主人はベッドのうえでの妻に対するあしらいに、称賛を惜しまなかった。
人妻と結ばれただけではなく、その夫の友情を勝ち得ることに成功、「理想的な三角関係だと思います」と、孝嗣さんは語る。

ご両親は花嫁の愛人と握手して別れ、それ以来「逆里帰り」が続いている。
「盆と暮れの、年2回です。いまのところ。あまり頻繁にやるとキリがなくなるから――でも、近々当地に移住することを考えています。妻も積極的です。幸い蓄えもあるので、定年前にかないそうです」
長年連れ添った夫人の貞操喪失を淡々と、むしろ誇らしげに語るご主人を、芙実子さんは優しく見守っていた。
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