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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

授業中。

2020年01月14日(Tue) 07:30:09

授業の最中に、先生の声を遮るように、挙手の手が一本静かに挙げられる。
教師が無表情に目を向けると、達也がいった。
「気分が悪いので、保健室行きます。畑川君に、付き添いをお願いしたいです」
ああどうぞ、と、教師は目で応えると、もうふたりの方への注意を消して、無味乾燥な授業へと戻ってゆく。
「あ、ここで済ませますのでだいじょうぶです」
後を追うように上がった保嗣の声に、教師はもう振り向かなかった。

真後ろの席に座る達也が自分の足許にかがみ込んでくるのが、がたがたという物音でわかった。
保嗣が脚に通しているのは、濃紺のストッキング地のハイソックス。
父親の箪笥の抽斗から、通勤用の靴下を一足、無断で借りてきたのだ。

「保嗣の父さんの履いている靴下、色っぽいよね」
いつだか達也がそういっていた。
紳士ものとは思えないくらいの透明感、光沢。いったいどういう意図で履くのだろう?と、息子の保嗣も感じていた。
指定のハイソックス以外を着用して登校してくる生徒は、意外に多い。
だから教師たちも、彼の足許に気づいても、生徒の異装を咎めようとはしなかった。
そんな保嗣の足許に、達也は欲情したのだ。
そうしたことは管轄外と言いたげな顔つきで無表情な授業を続ける教師の態度をよそに、
咬む者と咬まれる者とは、身を引き寄せ合ってひとつにある。

ずずっ・・・じゅるうっ。
露骨な吸血の音を、クラスメイトのだれもが聞こえないふりをしてくれたけれど。
さすがに保嗣は席を起って、教師にいった。
「やっぱり保健室行きます」

2人が保健室までがまんできないのを、誰もが知っている。
隣は幸い、空き教室だった。
「お掃除はちゃんと済ませておいてね」
教師の声を背後でやり過ごしながら。
床に散らされる真っ赤な血潮と白く濁った粘液のヌメりの生々しさとを予感して、
ふたりは抱き合うように手を取り合って、空き教室へと身を沈めてゆく。
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