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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

月光奏鳴曲  ――ムーンライト・ソナタ――

2020年02月11日(Tue) 06:24:58

開け放しになった窓の向こうには。
闇になりたての空に、銀色の月が済んだ光を放っている。
ステレオのスピーカーが呟く低音のチェロの唸りが、
淡い闇のわだかまる畳の部屋に、ひっそりとわだかまっている。

ふたりの少年は、むき出しの胸を合わせて、互いに抱きすくめ合って、
互いに互いの体温を確かめるように、皮膚をこすり合わせている。
時おり重ね合わせる唇は熱く、周囲の冷気を忘れさせて、
はぜる呼気を呼び合うように重ねて、すれ違う乳首をじんじんと疼かせていた。
前を大きく開いた半ズボンに、ひざ下までぴっちりと引き伸ばされたハイソックス。
暑苦しく火照った足許から、少年たちは制服の片割れを取り去ろうとはしない。
唯一全き形で身体にとどめた衣類をいとおしむように、
それこそが最後に残された礼儀だと心得ているかのように脚を絡み合わせて、
互いに互いの、しなやかなナイロンの感触を確かめ合っている。

合わせた身体を放すと、少年たちは互いに相手の脚を吸った。
逞しいほうの少年は、女のような餅肌を持つ少年のなまめかしさを恋い慕い、
たおやかなほうの少年は、スポーツで鍛えられたしなやかな鎧のような筋肉に圧倒された。

逞しい少年がたおやかな少年の足許を吸うときは、
ハイソックスのうえから犬歯を埋め込んで、うら若い血液を喫った。
たおやかな少年は、相手の非礼を咎めることなくその行為を受け容れて、
制服の一部にじんわりと滲む血潮の生温かさに心を浸した。

たおやかな少年が、お返しの行為に耽るときには、
ハイソックスの足許からしなやかな太もも、それにその奥の股間までをも、
器用に慣れた唇で、くまなく舐めた。
逞しい少年は、自分のほうが犯されているかのように背すじを仰け反らせ、
促されるままに思うさま、半透明の熱情を、同性の恋人の喉の奥へと吐き散らしていった。

たおやかな少年は血を啜られることに、相手に尽くす歓びを覚えて胸を弾ませ、
いいよ・・・もっと吸ってとせがみつづけて、
逞しい少年は心優しい恋人のかいがいしい振舞いに胸震わせて、
きみが好きだと熱く囁く。

性別を同じくする者同士の性愛は、どこの世界でも忌まれることが多い。
けれども、子供をなすだけが性愛のすべてなのか。
不器用に交わされる気遣いと気遣いは、ふたりを照らす月の光と同じくらい、澄み透っていた。


オフィスの窓越しに覗く月は、フロアの住人たちに省みられる機会をほとんど持たない。
けれども、とり澄ました希薄な人間関係がお疲れさまの声を交えて立ち去ってしまい、
人影がふたつになり、照明までもが消え去ると。
窓に射し込む淡い輝きは、にわかにその存在感を増す。

「待ってたぜ、来ると思ったよ」
生き血に飢えた大人になりたての吸血鬼と、男盛りの血液に充ちた働き盛りのビジネスマン。
奇妙な取り合わせは当人同士も意外なくらいしっくりと組み合って、
ぶきっちょな手がネクタイをほどき、アンダーシャツを引き裂くと、
手練手管を帯びた腕が、むき出しの太ももに巻きつけられてゆく。

「よその息子さんに、不埒なことを教え込んでも良いのかな」
少年が男をからかうと、
「きみこそ、親友の父親を誘惑してるんだぜ?」
と、相手は恋人に交ぜ返した。

少年は制服のハイソックスの足許をツヤツヤと輝かせ、
男はスラックスの下に隠したストッキング地の靴下にくるぶしを透き通らせていた。
互いに互いのために装った足許に、うっとりと目を向けあって。
男女の交わりがシックスナインの姿勢を描くように、
互いに互いの足許に、唇を吸いつけ合ってゆく。

「小父さんの靴下、色っぽいね」
と、少年がビジネス用のハイソックスを舌でずり降ろすと、
「きみこそ、こんななりをして勉強がはかどるの?」
と、男は学生用のハイソックスをくしゃくしゃに波打たせてゆく。

セックスに長けた大人は、少年を難なく陶酔の淵に引きずり込んだ。
熱情に優る少年は、ひと足先にむき出しにした裸体をオフィスの床のうえに仰け反らせ、悶えながら応えてゆく。

似通った面差しが、血の近さを感じさせる。
少年は男とその息子とを、羨ましいと思った。
生気に満ちた血潮を慢心に湛えて、ふたりは父子ながら少年の渇いた喉を、惜しげもなく潤した。
自身のなかで織り交ざる父と子の血潮を、干からびた血管に漲らせることが。
いまは少年の生命力の源となっている。

手練手管に長けた四十男は、しばしば息子と同い年の少年を圧倒した。
吸血鬼が人間を支配するという単純な方程式は、ここでは成り立たない。
股間に擦り合わされてくる舌は、まだその種の営みの経験が浅い少年に、
淫らで奥深い技を教え込んでゆく。
彼の息子の不器用な振る舞いが、血に飢えた恋人に甲斐甲斐しくかしづくのとは、裏腹な振る舞いだった。
父親は技を教え込み、息子は真心を尽くした。
どちらがより尊いというものではない、と、少年はおもった。
そして少年は、父親には真心を伝え、その息子には技を教え込んでゆく。
中和されることの無い不均衡が、むしろ三人を三様に愉しませ悦ばせる。

行為を尽くして恋人たちの胸から身を放した少年は、
放心した父親の足許から薄い靴下を抜き取り、
気絶したその息子の足許から、自分のとお揃いのハイソックスを抜き取って、
意地汚くポケットにねじ込んでゆく。
彼らの衣類を几帳面に整えたその妻と母親とは、まだ夫婦の寝室に留まっていて、
数百年鍛えたといわれる牙を祖の柔肌に試され、熟れた血潮を愉しまれている時分だろうか。

すべての営みを、月だけが視ていた。


あとがき
夕べは”スノームーン”だったそうですね。
透き通る満月の冷たい輝きが、むしろ優しく思えるこのごろです。
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このところ。
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朝帰りの母。女子の制服をねだる息子。

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