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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

ビッチと淑女

2020年03月22日(Sun) 19:38:34

この街に移り住んできたときからの友達だった。
引っ込み思案な性格で、都会では友達ひとりできなかった保嗣は、達也の存在に夢中になった。
彼がじつは吸血鬼で、クラスのだれもがその事実を知っている――そう告白されても。
保嗣の達也に対する友情は、変わることがなかった。

部活帰りに襲われて吸血鬼になったという達也は、
自分が初めて咬まれたときのように、長い靴下を履いた脚に咬みついて吸血することを好んでいた。
半ズボンにハイソックスという、この街の学校のユニセックスな男子制服は、かっこうの餌食だった。
保嗣は達也の好みを理解すると、ずり落ちかけていたハイソックスを引き伸ばすと、ためらいもなく血に飢えた友人のほうへと差し伸べていった。

吸いつけられる唇を。
咬み破かれるハイソックスを。
しなやかなナイロン生地のうえに生温かくしみ込んでゆく、赤黒い血潮の拡がりを。
息をつめ夢中になって、見つめていた。
保嗣の血潮に秘められた優しい心遣いは、達也にストレートに伝わった。
唇をうごめかして血を啜る達也は、保嗣をギュッと抱きすくめて、
その抱きすくめられた熱情が、こんどは保嗣にストレートに伝わった。
お互いの熱情を伝えあい、受け止めあいながら。
ふたりはいつか、互いに互いの唇をむさぼり合うようになっていた。

男子の姿で抱かれて血を吸い取られているその時分には。
まだしも、節度や品位といういものが、あったように感じる。
初めて女子の制服を身に着けて登校したとき。
眼の色を変えて迫ってきた達也は、
自分の恋人が吸血鬼に吸われるのすらかえりみず、
ひたすらに、保嗣を求めていった。
求められるままひざを割られ、スカートの奥深くまで、ごつごつとした太ももの侵入を受け容れて。
半ズボンを脱ぎ合って睦み合うことを覚え込んでしまった身体は、しぜんと反応を重ねていって。
ふたりの男子のまぐわいは、いまは男女のまぐわいと何ら変わらないようすで、進行していったのだ。

そのあとの授業はもう、当然のことながら手につかなかった。
教室には戻ってみたものの、
授業の最中に出ていったふたりのあいだになにがあったのか、男子生徒も女子生徒も、だれもが理解しきっていて。
もちろんそんなことはおくびにも出さず、授業に励んではいるのだけれど。
目に見えない視線が自分を押し包む感覚を、もうどうすることもできなかった。

達也も同じ思いだったらしい。
つぎの授業も、またつぎの授業も、途中で保嗣をいざなって廊下に連れ出すと、
今度は授業中のクラスのまん前の廊下で、保嗣を組み敷いていったのだ。
思わず漏らしてしまった声は、筒抜けになっていたはず。
けれどもクラスメイトのだれもがそのことを咎めもしないばかりか、
入れ代わり授業にやって来る教師さえもが、ふたりの行動に視て視ぬふりを決め込みつづけたのだった。

スカートの奥に突き入れられた衝撃の余韻に、股間を熱く浸されたまま。
保嗣は教室をあとにし、家路をたどった。

女の身なりに服装を変えただけなのに。
いったいなにが、起こったというのだろう?
もはやそこには品位も節度もなく、
ただ”ビッチ”(牝)の振舞いが、そこにあるだけだった。

いままでも男子の姿で、そういうことをしてきた。
けれども、女の姿でするそれは、なにかが根本的に違っていた。
ごくおだやかに献血をし、
もっと性的な交接の時も、息を弾ませ合った昂りはあったけれども。
女と男になってしつように手足を絡ませ合ったあのひと刻は、
それらすべてを洗い流してしまうほどの力を持っていた。

けれども、ふと歩みをとめて保嗣はおもう。
ビッチと淑女とは、なにがどれほど違うというのだろう?



保嗣が目指した自宅では。
母親の和江が、家に上がり込んできた吸血鬼との情事に、淫らな汗を流している真っ最中だった。
激しい息遣いのもとに迫られ、肌をこすり合わせた挙句。
着乱れた黒のスリップの肩紐は、片方が二の腕にふしだらにすべり落ちて、
穿いたまま姦(や)れるからと情夫を悦ばせた黒のガーターストッキングは、これも片方がひざ小僧の下までずり降ろされていた。
すでに肌色のパンティストッキングは一足残らず、情夫の牙にかけられていて。
くしゃくしゃにされてむしり取られて戦利品としてせしめられるか、屑籠のなかへと堕ちていった。
派手になったのは、下着だけではない。
いままでの装いは、薄茶とか空色とか、地味なものが多かったはずなのに。
そうしたブラウスたちは襟首に血をあやしたまま情夫にせしめられていって。
入れ代わりにあてがわれた衣装は、真っ赤やショッキング・ピンクといった刺激的な色合いが増えている。
夫のいる夕方に呼び出されたとき。
指定された真っ赤なミニのワンピースに、てかてか光る黒のストッキングのイデタチで玄関に立った時。
背後で夫がなにか言おうとしてすぐさま口を噤(つぐ)んだのを。
上首尾にも外出の許可をいただいたんだわと思い込むほど、したたかな女へと変貌し始めていた。

息子はきっと、味方になってくれるに違いない。
彼女にはそんな確信があった。
だって、初めて吸血鬼が自宅に侵入をする手引きをしたのは、ほかならぬ息子だったから。
彼は彼の友人である吸血少年を伴っていつものように下校してきて、
更にもう一人ともなった招かざる客人が、母親の貞操を清楚な衣装もろともむしり取るのを、ふすまの向こうからのぞき見していた。
息子は母親に対する凌辱行為を妨げようとしなかったばかりか、
自分の痴態を目の当たりに昂りを覚えたうえに、同伴してきた同性の親友と、男女どうぜんのまぐわいを熱っぽく交し合ってしまったのだ。

それ以来。
帰宅してきた息子が、母親が情夫との名残を惜しむ時間が少しばかり長くなったからといって、視て視ぬふりを決め込んでいた。
多くの場合は同性の恋人を伴っていて、二階の勉強部屋や、
ときには母親が情婦にされたその日と同じように隣室のふすまの陰から視線を送ってきて、昂りをより深いものにしているらしかった。

「ああ、帰ってきた・・・」
和江が鈍い声で呟くと、吸血鬼はまさぐる手を止めかけたが、すぐに思い直して、
さっきよりも濃いまさぐりを、
胸許に。わきの下に。股間に・・・と、探り入れてくるのだった。


きょうの息子の居場所は、夫婦の寝室のすぐ隣らしかった。
ドア越しにかすかながら洩れてくる物音が。
ふたりの少年が組んづほぐれつしているところを、リアルに想像させた。

かつて名流夫人と謳われた和江だが。
もはや吸血鬼との情事を恥じる気持ちさえ、忘れ果てようとしていた。

身に着けていたモノトーンのプリントワンピースは、貞淑だったころからの数少ない生き残りの衣装だった。
それが、襟首に血潮を散らし、すそを太ももが見えるほどたくし上げられて、
着崩れさせた衣装から、素肌を挑発的に露出させた、さながら娼婦の装いとなっていた。
足許を清楚に装っていたはずの黒のストッキングは、淫らな唾液にまみれ、くしゃくしゃにされて、
ふしだらな皴を波打たせてずり降ろされていた。

清楚な名流夫人のおもかげは、もはやあとかたもなかった。

いつからこのような、”ビッチ”になってしまったのだろう?
清楚な装いを淫らに堕とされて。
辱められることが歓びに変わり、
清楚な装いを不埒な情夫を悦ばせるために身に着けるようになって、
篤実な勤め人の妻としての良妻賢母の装いの下には、淫らな娼婦の血潮が脈打っている。

けれども、”ビッチ”と”淑女”のあいだに、どれほどのへだたりがあるというのだろう。
清楚な装いを剥ぎ取られ、あっさり堕ちてしまった私――
それなのに、いまは情夫を悦ばせるために、あえて清楚に装って歓心を買おうとしている私――
そう、なにもかもが、紙一重なのだ。

息子は、男と女のへだたりをさえ、とび越えてしまっている。
私が、淑女から娼婦へのへだたりを駆け抜けるくらい、なにほどのことがあるのだろう?

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