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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

帰宅。

2020年03月29日(Sun) 19:10:53

由紀也が家に着くころにはもう、だいぶ明るくなっていた。
家路をたどる途中、人はほとんど通りかからなかった。
咬みつかれたお尻の痕が、スラックスに拡がったまだ生温かい血痕と、
ひりひりと疼く傷口とでひどく生々しかったから。
できれば人目を避けて、家にたどり着きたかった。

「おっは♪」
傍らからだしぬけに声をかけられたときは、びっくりして、ちょっと飛び上がってしまった。
由紀也の態度にクスクスっと笑いかけたのは、オフィスの同僚である大鳥真央だった。
真央は男性でありながら、いまはOLとして勤務している。
ショートパンツの下の生足が、ひどくなまめかしくみえた。
どうみても、女のそれだった。
「ストレス解消してきたんでしょ」
真央の目線はあくまでも、仲間を見つめる眼差しだった。
「まあ・・・そんなとこかな」
照れ隠しをするように言いよどむ由紀也に、真央は図星を突くようにいった。
「奥さんの彼氏とラブラブしてきたんでしょ」
「どうしてわかるの?」
「顔に書いてあるもん」
真央はふふふっと笑った。
「で、どうだった?楽しかった?」
「ああ、かなりね」
夕べ意識がもうろうとなりながらも、妻を犯し息子をたぶらかした男の腕に、
自分の方から縋りついていった記憶が、恥ずかしく脳裏をよぎる。
「照れてちゃダメ」
と、真央はいった。
「早くオープンにしちゃいなさいよ。楽しいのなら、女も男もないじゃない」
軽くハミングして立ち去っていった真央の後ろ姿をみて、由紀也は少し気分が落ち着くのを覚えた。

都会では到底考えられない、常識の埒外の出来事。
吸血鬼に家族全員血を吸われ、男女の別なく犯されさえしてしまっている。
そしてそのことに、恥を忘れて歓びを覚えてさえしまっている。
それでよかったのだ・・・と、ふとおもった。

玄関のドアを開けると、妻の和江はもう起きていた。
見慣れた薄いピンクのネグリジェ姿。
顔色が、ひどく冴えないように感じた。
「お帰りなさい」
シャツを破かれスラックスのお尻に赤黒いシミを拡げた夫を、和江は由紀也の予想通り、素知らぬ顔で出迎えた。
「咬まれてきたのね」
和江が訊くと、
「ああ、ずいぶん吸わせてしまった」
由紀也も当たり前のように、こたえた。
「無事にお帰りになれて良かったわ」
穏やかに潤んだ声色が、本音で安堵していることを伝えてくる。
「お前、顔色悪いな」
由紀也が妻を気遣うと、和江は正直にこたえた。
「血を吸われてしまいました」
蒼ざめた唇をきっちり引き結び、緊張に歯を噛みしめている。
人妻が吸血鬼に襲われることが、この街でなにを意味しているのか、お互いにわかっていた。
和江の首すじに、赤黒い斑点がふたつ、綺麗にならんでつけられていた。
じわっとなにかがはじけるのを、由紀也は感じた。
下腹部にたまった、マグマのようなものだった。
由紀也の喉が、カラカラになった。
「来い」
由紀也は妻の手を引いて、夫婦の寝室にまっしぐらに向かった。

一時間ほども、まぐわっただろうか。
ここ最近にない、充実した営みだった。
都会のそらぞらしい生活に疲れ果てた夫婦が、長いこと忘れかけていたものだった。
さいごの営みは、いつだっただろうか。
夫婦のきずなが離れてゆくという恐怖感から、妻に無理強いに迫った営み――
そんなものはすべて忘れ果ててしまうほどの熱い密着感に、妻も夫も満足していた。
息子の保嗣が階下に降りてきた気配がしたが、リビングの気配を察して、まわれ右して戻ってゆくのを、
横っ面で気配だけを読み取っただけで、夫婦はあるべき姿を取り戻すことに熱中した。

並んで座ったソファで、自分の方に妻が頭をもたれかけくる。
こんなことは、何年ぶりだろうか?
四十女の柔らかな肉体の感覚が、身体のそこかしこに残っている。
このところお盛んだった達也の生硬な身体つきとは違うものに、新鮮さを見出していた。

それでも由紀也は、ふと思う。
股間に残る深い疼き――
それは、吸血鬼が由紀也を、女として愛した証しだった。
達也との同性同士の関係も、ときに立場が逆転して、彼が女として犯される番がまわってくることがあった。
深々と突き入れてはじけさせる快感と。
深々と受け容れて浸し抜かれる快感と。
甲乙つけがたいものを、由紀也は感じ始めている。

たぶん。きっと。
まだあからさまに、言葉にしないまでも。
妻が情夫のもとにでかけてゆくことを、彼は妨げることはないのだろう。
そして、異性との悦びで得られない快感を得るために、きっと達也を呼び入れてしまうのだろう。
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