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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

深夜のオフィス。

2020年04月26日(Sun) 22:11:09

「今夜はなるべく遅くね。できたら、帰ってこないで」
達也からそんな電話がかかってきたのは、まだ勤務中のときだった。
なるべく遅く――というときは。
たいがい、吸血鬼が和江を襲いに来る時だった。
あべこべに、和江から出かけていくときもあった。
そういうときは、
「帰ってきてもいいよ、小母さんいないけど」
となるはずだから、
「なるべく遅く」
というのはきっと、自宅で和江が吸血鬼と過ごす時間が、長くて濃いものになる、ということなのだろう。
けれども、
「できたら、帰ってこないで」
とは、どういう意味だろう?
畑川由紀也は、答の出ない疑問を抱えながらオフィスの終業を迎え、
「失礼・・・」「お先に・・・」と声をかけて退社してゆく同僚を見送って、ひとりぽつんとオフィスに残っていた。
時計は夜の9時を回っている。
食事はすでに、済ませていた。
今夜は遅いだろうと踏んだ察しの良い同僚が、「いっしょにどう」と、出前を取ってくれたのだ。
ともかくも。
手持無沙汰だが空腹でもないその退屈なひとときを、一方的な連絡に待ちぼうけをくわされて、過ごしていた。

がた、がたん・・・
オフィスの通用口から、誰かが入ってきた。
達也か、吸血鬼か。
吸血鬼は今頃、妻の血を吸っているはずだ。
長くて濃いひと時を、すごしているはずだ。
だとすると達也だろうか。
彼はいつも、妻が襲われているときに、夫を引き留める役目をつとめていた。
役得に、働き盛りの四十代の生き血をたっぷり抜き取ることを忘れずに――
それと承知で、由紀也は達也を迎え入れて、
当地に来て初めて覚えた同性同士の歓びに、うつつを抜かすのだった。

通用口から入ってきた人影は、すぐに姿を現さなかった。
勝手がわからないのだろうか?
由紀也が目を細めて、通用口からオフィスにつながるロッカーの谷間に目を凝らすと、
薄茶のパンプスが遠慮がちに、オフィスの床をすべるのが視界に入った。
見覚えのあるオレンジ色に黒の水玉もようのワンピース――結婚記念日に妻の和江に買ったものだった。

和江がオフィスに?
どういうわけだろう?
彼女は吸血鬼といっしょに、恥を忘れたひとときを自宅で過ごしているはずだ。
だがよく見ると、ワンピースは和江のものらしかったが、
背格好も顔だちも、和江とは似ても似つかないことに気がついた。
それが和江の服で女装した達也だと気づくのに、数秒かかった。

「どういうことだね!?」
さすがに由紀也が色をなした。
それには答えず達也は、屈託なく笑った。
「似合います?」
という問いに、思わず由紀也は頷いていた。
脂粉に覆われた頬。薄い青のアイラインも、妻のものらしい。
スッと近寄ってくる身のこなしも、いつもと違ってなまめいていた。
しんなりと身を寄せてきた達也は、由紀也をいつものようにソファに腰かけさせると、
そのままもたれかかって唇を重ねた。
由紀也が黙ってしまうと、そろそろと足許にかがみ込んで、ストッキング地の靴下のくるぶしに舌を這わせた。

達也がストッキング地の長靴下をいたぶり抜くに任せながら、由紀也は訊いた。
「どういう酔狂なんだ?」
「よく見て」
達也は嬉しげに、ワンピースの襟首のあたりを見せつけた。
由紀也の息がとまった。
和江の着ていたワンピースには――きっと和江から吸い取った血で描いたのだろう――「たつや」と「かずえ」の名前が並んで描かれ、間には相合い傘まで描かれていた。

なにが起きたのかを、由紀也はすぐにさとった。
「小父さんはやっぱり、鋭いな」
「どうしてまた・・・!?」
「ボク、今夜やっと男になったんだ」
「そうだったんだ・・・」
「さいしょの女のひとは、やっぱり選ぶよね?」
「それはそうだろうな」
「だったら、和江を択ぶのが一番じゃないかな?」

強引な腕が、由紀也を引き寄せた。
強引な唇が、由紀也の唇を求めた。
求められるまま、由紀也はつい今しがた妻を犯した少年の唇を吸っていた。

この唇が、和江の膚を這ったのか。
あの一物が、和江の股間を狂わせたのか。
ちょっとのあいだ、由紀也は人並みの嫉妬を覚えたけれど。
スラックスのうえから太ももをまさぐる達也の掌が、すべてを忘れさせた。
――そうだ、俺はこの子とひとつなんだ――
ふたたび重ね合わされてきた唇を強く吸い返すと、
達也は「あぁ・・・」と、切なげにうめいた。

数分後。
由紀也は妻のストッキングを剥ぎ堕とした少年に、自分のストッキング地の長靴下まで咬み剥がせて、
妻の素肌をしつように這いまわった唇を、強く強く吸い返していた。
かつてこの少年は、独り寝をする父親のため、母親の服を身に着けて身代わりを務めたのを思い出した。
いま彼は、和江の服を着て、和江になり切ろうとしている――
由紀也は、すべてを忘れた――

「できれば帰ってこないで」
記憶のなかで、達也の声が妻の声と重なった。
和江はどうして、夫の帰宅を望まないのだろう?
もしや今ごろ和江は、保嗣と同じ振舞いに及んでいるのでは――と、ふと思った。
そして、その直感は正しかった。

その同じころ――
和江は初めて息子の前で吸血鬼に抱かれ、
息子は吸血鬼の導きで、身体を開く母の上へと、のしかかっていった。
四十代の主婦は一夜のうちに三人の男を識り、女ざかりの花を開いていった。
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