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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

【寓話】長男の”勇気”

2020年07月14日(Tue) 04:11:13

街が吸血鬼を受け容れた。
その家の夫婦は、そうなる以前から、同じ吸血鬼に夫婦ながら血を吸われていた。
その吸血鬼は、既婚の女を相手にするときは、男女の関係を結ぶのを常としていた。
その事実を知ったとき、初めて血を吸われた妻はうろたえて、夫もやはり困惑した。
けれども夫婦とも心を決めて、夫は妻の不貞を受け容れるようになった。
すでに子どもたちが大きくなっていたので、跡継ぎの不安がなかったためだった。

ふたりの間には、独立して隣町に住んでいる長男と、まだ女学生をしている長女がいた。
長女は両親と吸血鬼の関係を知ると、自分も処女の血を与えるようになった。
そして女学校を卒業して同じ街の幼なじみと祝言を挙げると、
それでも嫁入り前からの交際を重んじて、吸血鬼とも逢いつづけた。
新しい夫は気の良い男で、時おり嫁と吸血鬼が睦み合うところをのぞき見しては、
逢瀬を遂げた後の妻を抱いて、激しく愛するのだった。

隣町に出た長男が事情を知ったのは、だいぶあとになってからのことだった。
自分の嫁は隣町の出身で、吸血鬼とは無縁で過ごしていた。
両親も妹夫婦も、長男には多くを告げようとはしなかった。
吸血鬼もまた、長男とは顔見知りだったけれど、ほかの者たちと心を合わせ知らん顔を決め込んでいた。
長男の婚家が混乱することを避けようと考えたのだ。

しかしやがて、長男は同じ町の幼なじみから事情を知って、自分の実家も吸血鬼と懇親していることも知ってしまった。
少しばかり悩んだ彼は、嫁と相談して、自分たちの息子が小学校に上がるのを機に、実家に戻ってきた。
貧血に悩む両親と妹夫婦に同情したのだ。
跡取りができたので、家の存続にも問題はないというのだった。
だれもが長男の帰宅を歓迎した。

初めての夜、長男の嫁は気丈にも、ひと晩かけて吸血鬼の相手を務め、
骨の髄まで焦がれるほどに、愛されてしまった。
相手をしてくれた女性に親身に接するのが、彼らの礼儀だったためだった。
長男の嫁は戸惑いながらも相手を務め、
やがて吸血鬼の腕の中で悩乱をこらえ切れなくなって、
明け方にはすっかり、恋の虜になっていた。
そんな嫁を長男は許して、いままで以上に嫁を愛するようになったという。

長男が嫁への愛情を深めたのは、のぞき見する愉しみに魅入られてしまったからだというものもいたが、
長男とその嫁の行いを、それ以上非難するものは、だれもいなかった。
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