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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

吸血鬼出現経緯

2020年07月15日(Wed) 19:24:45

若い兄弟がいた。
二人は年頃になると、異性には興味を示さずに、兄弟で男女のように愛し合うようになった。
兄が女になって弟が男になることもあれば、
弟が女になって兄が男になることもあった。
どちらの場合でも、ふたりはそれぞれに、満足することができた。

やがて二人の関係は、両親の知るところとなった。
常識的な両親のだれもがそうであるように、彼らもまた、兄弟の関係を忌んだ。
兄は24歳、弟は19歳のころだった。
父親は、嫁を持たせてしまえば、男に興味がなくなるだろうと安易に考え、兄に嫁を持たせることにした。
弟はまだ未成年だったので、学業に専念するように命じた。
けれどもこの安直な思惑は、かんたんに裏切られることとなる。
実家から独立した兄は、むしろ弟との時間を作りやすくなり、二人はしばしば逢瀬を遂げた。
兄は新妻の服を持ち出して身に着けて、弟の嫁替わりをつとめてやった。
弟はこの兄の心遣いを悦んで、しばらくのあいだは兄が女、弟が男になって愛し合った。
街に出没する吸血鬼が兄弟を狙ったのは、そんなときだった。

その夜はいつものホテルが満室で、ふたりは愛し合う場所を探しあぐねて、
弟の乗ってきた車のなかでことに及んでいた。
吸血鬼は最初、本物のカップルだと思って、助手席を倒して折り重なる兄弟の弟のほうの首すじに、まず咬みついた。
手ごわい男を先にわがものにしてしまおうと思ったのである。
弟はあっという間に血を吸い取られ、その場に倒れ伏した。
弟の様子の変化に驚いた兄が顔をあげると、目のまえに吸血鬼が牙を光らせ、たった今弟から吸い取った血を滴らせていた。
なにが起きたのかを知った兄は、弟を殺さないで欲しいと願い、自ら進んで首すじをゆだねた。
行為の途中から、吸血鬼は相手が女装した男性で、ふたりが兄弟だということを血の味で知ったが、
それでも女装した兄のことを終始女として扱った。
彼が既婚婦人やセックス経験のある女性を襲うとき、必ず男女の交わりを遂げる習性を持っていたが、
兄に対しても同じようにしたのだった。

もっともこの吸血鬼は、男の血も、男の身体も好んでいた。
そのため、交わりを持ったのは兄のほうだけではなく、弟も同じように行為をされたのだった。
弟はそのうえでなおかつ、生き血を吸い尽くされてしまった。
吸血鬼はこの街に来て間がなかったので、非常に飢えていたのである。
弟の体内に脈打つ血液をすべて吸い取ると、吸血鬼は初めて満足を覚え、その場を立ち去った。

弟の葬儀を兄は、婦人ものの喪服を着て弔った。
両親も兄嫁も、本心はともかくとして、ふたりの関係をよく心得ていたので、
兄の意思を尊重することにした。
弔いが終わると、兄は独りにしてほしいといって、喪服姿のまま自宅近くの公園に出かけていった。
そこは、まだ二人がホテル代にこと欠いていた時、愛し合うために使った場所だった。
生垣を終えて公園のいちばん奥まった雑木林に入り込むと、兄は愕然として脚を止めた。
夕べの吸血鬼が、あとをつけてきたことに、初めて気づいたのだ。
吸血鬼は、兄の足許を染める薄墨色のストッキングに欲情していた。
そして、見境なく兄に襲いかかった。
弟の仇敵を相手に兄は抵抗したが、みるみるうちに羽交い絞めにされ、押し倒され、地面に抑えつけられた。
首すじにはたらたらと、熱い唾液がふりかかった。
牙から分泌する毒が、若い皮膚を痺れさせてゆく。
この唾液が、弟の血管に入り込んだのだ。
そして理性を喪った弟は見境なく自分の血潮を気前よく与え続け、致死量をわきまえずに吸い尽くされてしまったのだ。
弟の仇敵に咬まれることに、兄は不思議な歓びを感じていた。
どうせ吸血鬼の牙にかかって最期を遂げるのならば、弟を咬んだ男にわが血を捧げたいと感じたのだ。
やがて首すじに飢えた唇がヒルのように吸いつき、這いまわり、鋭利な牙がその柔らかな一角に突き立てられた。
太い血管を断たれたのを感じ、兄は観念して目を瞑った。

ほとび出た血潮が、頬を生温かく濡らした。
同じ温もりを、のしかかってくる獣が悦ぶのが、躍動する身じろぎとして伝わってきた。
身じろぎひとつできぬように抑えつけられ、さも旨そうに血を啜り取られてしまうことに不思議な歓びを覚えた。
自分を支配する男の血管のなかで、弟の血と自分の血とが織り交ざって脈打つのが、無性にうれしかったのだ。

ふと気がつくと、傍らに弟がいるのに気がついた。
ここはあの世なのか?と問う兄に、そうではない、と、弟はこたえた。
兄はなによりも、弟が無事なのを悦んだ。
兄さんが僕を土葬にしてくれたおかげだよ、と、弟はいった。
吸血鬼が弟の血を吸い尽くして立ち去る間際、
土地の風習に従って弟を必ず土葬をするようにと念押しをしたのを、
兄はよく憶えていたのだ。
ぼくたちは吸血鬼になったんだ、と、弟が教えてくれた。
ただし一家で二人が真正の吸血鬼になることはできないので、
まだ体内に血が残っている兄さんはこのまま家に帰れるのだという。
兄は初めて、自分の役割を自覚した。

弟が生家を襲ったのは、それから数日後のことだった。
真夜中の訪客に父親は玄関を開き、
息子が妻を襲うのを止めようとはしなかった。
母親もまた、息子のことを温かく迎え、
喉をカラカラにした息子のために自分の生き血を惜しげもなく与えた。
相手が母親でも、吸血鬼が既婚婦人に行う行為に変わりはなかった。
父親は長男によく言い含められていたのでそれとなく座をはずし、
母親は夫のために永年守り抜いてきた貞節を、息子のためにためらいもなく散らせていった。

つぎの週末は、兄の家の番だった。
吸血鬼は訪ねたことのない家に入り込むことができなかったので、弟は玄関を叩いて、兄を呼び出した。
兄は妻の服を身にまとい、弟に誘われるままに庭に出た。
そして、女どうぜんに弟に愛されて、生き血を吸い取られていった。
兄は弟に、妻を紹介してやろうといった。
いままでお前がぼくを女として愛したときに身に着けていた服の持ち主だ――と告げて。
兄の妻もまた、夫によく言い含められていたので、その若い肉体を吸血鬼の前に惜しげもなくさらけ出した。
そして、夫の両親とは違って、愛する夫の前でこれ見よがしに不貞に耽った。

それ以来。
二人は吸血鬼として、行動を共にした。
兄弟が母親を共有することを、父親はこころよく許してやった。
ふたりの関係に安易な態度をとったことを、負い目に感じていたためだった。
兄嫁もまた、兄弟の共有物となった。
彼女はやがて身ごもったが、父親がどちらであるのかはわからなかった。
ただ、間違いなくこの家の跡取りに違いないと、舅も姑も、彼女の妊娠を心から祝った。

兄弟は手始めに、街の少年たちを狩り、学校帰りを狙っては半ズボンの制服姿を押し倒し、
ピチピチとしたむき出しの太ももや、ハイソックスのふくらはぎを愉しんだ。
そして気に入ったなん人かとは、男女のように愛し合う仲となった。

少年たちを手なずけてしまうと、母親や妹を連れ出して来させ、餌食にした。
目の前で侵される母親やブラウスを濡らして生き血を吸い取られる妹たちの姿に、
少年たちは昂奮を覚え、こんどはガールフレンドを紹介してあげると約束するのだった。

兄のほうは冒される嫁の姿に昂奮した夜が忘れられず、好んで若妻を襲った。
さもなければ、好みの若妻を弟に襲わせて、視て愉しんだ。
弟のほうは初めて犯した母親との夜が忘れられず、好んで年配の婦人を襲った。
さもなければ、好みの年配女性を兄に引き合わせて、視て愉しんだ。
そして最後は、息も絶え絶えになった獲物を傍らに、ふたりながら熱くなった体を交え、愛し合うのだった。


あとがき
つい先日、数か月がかりでこさえた同性愛ものの長編で登場した吸血鬼が、
どんなふうにして吸血鬼となったのか?を描こうとして、頭の中に構想だけがあったのが、
今ごろになって突然噴出しました。
さいごのほうでは、達也の母と祖母とに、吸血鬼の兄弟が迫っていましたが、
もしかしたら兄と弟が、このお話とは逆かもしれませぬ。(笑)
独立したお話として描きましたので、どちらともお好きなように解釈してください。^^
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