淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・
【寓話】一家の歴史
2020年07月17日(Fri) 20:48:21
同性愛の嗜好を持った青年がいた。
彼は父親に人を愛するすべを教わったので、しぜんとそういうことになった。
青年は一人息子だったので、両親はともに、婦人にも目を向けるようにと息子に願った。
息子は唯一、自分の母親となら寝ても良いと告げた。
一番身近な女性になら、自分をさらけ出すことができるというのだった。
父親は少しばかり躊躇を覚えたものの、
息子の婦人に対する好みが自分と同じなのだと割り切って、
妻に息子の寝室に行くように勧めた。
妻はめでたく妊娠し、第二子を、その翌年には一人娘を生んだ。
次男坊も、同性愛の嗜好を持って育った。
彼もまた、父親に人を愛するすべを教え込まれてしまっていたのだ。
やがて成長すると、両親は彼に結婚することを望んだ。
年配になっていた長男は、自分の嫁と寝ても良いとまで言ってくれた。
兄もまた、父が弟にそうしたように、年の離れた弟に人を愛するすべを教えていたのである。
次男は兄の好意を鄭重に断ると、妹となら寝ても良いと告げた。
一番身近な女性になら、自分をさらけ出すことができるというのだった。
周囲は少しばかり躊躇を覚えたものの、
血を分けた妹がいちばん相性が良いのだろと割り切って、兄妹で寝室を共にすることを許した。
父親は長男が自分の妻のところに通ってくるときには、
長男の嫁のところに行くようにしていた。
三組の夫婦は互いに行き来して、幸せに暮らした。
※中世西洋の説話集に”エプタメロン”というのがあります。
そのなかで、こんなお話があります。
侍女に通おうとした息子をたしなめようとした未亡人が、侍女の身代わりに寝所に入ったまでは良かったのですが、
迫ってくる息子を相手に欲望に負けて、息子と契ってしまい、
息子は武者修行に旅質せ、生まれた娘は他所へ預けたのですが、
武者修行から戻った息子が連れてきた美少女は、なんと自分と息子との間に生まれたあの娘!
賢明な母親は事実を告げずに、息子は妹でも娘でも恋人でもある女性と、仲良く暮らしました。
めでたしめでたし。
こんかいのお話は、たぶんこの”エプタメロン”の一挿話が無意識に下敷きになっているような気がします。
話の出所をばらすのは墓穴を掘るようなものですが、
お話そのものが面白いので、紹介しておきます。
※昨日脱稿、本日あっぷ
- 前の記事
- きみの履いているハイソックス、好い色をしているね。
- 次の記事
- 【寓話】恋慕の証明
- トラックバック
- http://aoi18.blog37.fc2.com/tb.php/3994-0aab0b5e