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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

風変わりな”愛”

2020年07月19日(Sun) 09:19:13

一週間が経った。
ぼくは約束通り、前回逢ったあの公園に、制服姿で佇んでいた。
ねずみ色の半ズボンの下に、同じ色の真新しいハイソックスを、ひざ小僧のすぐ下まできっちりと引き伸ばして。
天気の良い一日がくれようとしていた。
夕方の弱々しい陽射しを受けて、ぼくのハイソックスはリブをツヤツヤと輝かせていた。
吸血鬼の小父さんが咬みたがるのも無理はない――と、不思議な共感に囚われていると、
背後から人の気配がした。
「目をつぶって御覧」
背後の気配が囁いた。
相手が小父さんだということがすぐにわかったので、ぼくは素直に目を瞑った。
デートを待ち合わせた恋人の指図に従順に従う、年頃のお嬢さんみたいに。
首のつけ根の一角に冷たく研ぎ澄まされた牙が突き立ち、ググッ・・・と刺し込まれてきた。

さいしょにひと咬みでぼくのことを酔い酔いにしてしまうと、
小父さんはぼくを促して、芝生のうえにうつ伏せに横たわらせた。
先週初めて脚を咬ませたときは、うつ伏せになった木製のベンチがごつごつと痛かった。
草地に寝転んで、制服が汚れないかと気になったけれど。
乾いた草地には意外なくらいに泥がなく、
帰宅したときにもまったく、家族によけいなことを知られるということはなかった。

お目当てのハイソックスのふくらはぎを、小父さんは愛でるように数回、手でなぞると、
こんどは容赦なく、唇をなすりつけてきた。
ぼくは覚悟のうえだったから、むしろ積極的に小父さんの愉しみに協力した。
ハイソックスのうえからふくらはぎを、くまなく舐められていったのだ。
ぼくの脚を舐め尽くすと、小父さんが牙をむき出しにしたのが、気配で分かった。ぼくは目を瞑った。
右のふくらはぎに、さっきぼくのことを咬んだ牙が突き立てられて、
ハイソックスを破ってずぶりと刺し込まれてきた。
ちゅうっ・・・
さっき首すじを吸ったときよりも、いやらしい音がした。
小父さんはぼくのハイソックスを、いやらしく愉しんでいる――そんな様子がいやでも伝わって来たけれど。
ぼくは小父さんの好きなように、通学用のハイソックスを愉しませてしまっていた。
どこか、同級生を裏切るような後ろめたさも感じないではなかったけれど。
そんな後ろめたささえもが刺激に変わってしまうほどの歓びが、ぼくの胸を占めつづけた。

いったいどうしてなのだろう?
制服を辱められることが、嬉しいだなんて。
ぼくが通っていた学校は、当地では名門校で通っていた。
だれでも着られる制服ではなかったのだ。
特に男子生徒の履くハイソックスは、良家の子女のシンボルのようなものだったから、
私服の時でも誇らしげに半ズボンの下に履いている男子がけっこういた。
ユニセックスな色気を感じた先生に告白をされて、教師と生徒との間で付き合っている・・・なんてうわさも、再三耳にしてきた。
同級生が誇りにしているものを、こんな辱めに曝してしまっていながら、
ぼくはなぜか、誇らしい気分になっていた。
彼の好意がたんなる喉の渇きを満足させるためだけではなくて、
また、ぼくの若い身体だけに執着しているわけではなくて、
ぼくの態度に感応して湧き上がったいたわりと、行きずりの吸血鬼に若い血を振る舞った潔さへの敬意とが、
彼の胸を満たしているのを実感していた。

彼は必要以上に、ぼくの体調を気遣ってくれた。
顔色があまりにも変わると、どんなに欲していても吸血行為を中止して、ぼくが落ち着くのを待ってくれた。
ぼくは彼の顔色で
――先週満足しきったときにどれほど彼が恢復を遂げたかを知っているので――
まだ満たされていないのを知っていたから、
もっとぼくの血を吸って、と、ぼくのほうから頼んでいた。
彼の罪悪感は救われて、ぼくの善意はうら若い血の流れとなって、彼の干からびた血管を充たしていった。

吸血鬼と人間の間柄であったけれど。
同性同士であったけれど。
ぼくたちは確実に、愛し合っていた。


あとがき
昨日、この章を相当長く書いたのですが、不注意によって全文を消してしまいました。
それはもう、どこにも残っていません。
なので、構想も全く改めて、描き直しました。
消してしまった話では、主人公に共感を覚える美少年が登場しますが、まだそこまでもたどり着いていない感じです。

お話の展開は展開として(続くという保証も、じつはありません・・・笑)、
人と吸血鬼。
男性同士。
そうした障壁を乗り越えての愛情を描いてみたかったのだと思います。
彼はハイソックスを履くのが好き。
彼はハイソックスの脚を咬んで吸血するのが好き。
不思議なご縁で結ばれているようです。
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