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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

目撃譚2 ~妻の献血~

2020年07月22日(Wed) 07:22:45

その晩は、ひどく静かな夜だった。
傍らを見ると、隣のベッドに妻の姿はなかった。
息子の後をついていったに、違いなかった。
わたしはすでに、知っているのだ。
息子の血が、吸血鬼によって愛されていることを。
けれども妻にとっては、まだそれは疑念に過ぎないはずだ。
なにが妻をかりたてたのかはわからないが、
息子の行動に疑念を持った妻は、
その疑念を解決する試みをためらわなかった。
そこに邪悪な罠が待っているということを、
彼女はたぶん、まったく意識していなかった。
わたしはひと呼吸、ふた呼吸、そしてもう少しだけ――間をおいてから、
わたしはベッドを抜け出した。

妻がどこに脚を向けたのかは、よくわかっていたから、
わたしは真っ暗な一本道を通り抜けて、なんなく公園にたどり着いた。
夜の公園は、先日訪れたときと同じように、周囲の暗黒の中でただそこだけが、
まるでナイターか劇場の舞台のように、街灯にこうこうと照らし出されていた。
生垣の外から、公園のなかを窺ったとき、一歩遅かったと思わずにはいられなかった。
妻はあの男に抱きすくめられて、首すじを咬まれ、
ちょうどわたしが”舞台”の上を覗き込んだとき、
純白のブラウスに赤黒い血のほとびを撒き散らしてしまっていたのだ。

二人の姿は、映画のラヴ・シーンのように、わたしの網膜を染めた。
それくらいぴったりと二人は寄り添い合って、
片方はひたすら慰めをむさぼり、
もう片方は望まれるままに施していた。
それが血液の採取という、おぞましい手段によるものだったとしても。
あの瞬間二人はすでに愛し合い、いたわり合い、求め合っていたのだ。
もはや夫であっても、出る幕はない――わたしはそう観念した。
そして、目線をはずすことさえ忘れた夫の前、
視られていることに気づかない人妻は、口づけさえも交えながら、
吸血鬼の欲するままに、三十代の人妻の生き血を採られつづけていったのだった。

愛する妻と一人息子の生き血をむざむざと、吸血鬼の喉の渇きのままに吸い取られてしまいながら、
わたしは彼の所業を妨げることができなかった。
夫であり父親であるわたしとしては、
まず妻や息子の体内をめぐる血液を抜き取られてゆくその現場に割り込んででも、
そのおぞましい行為を止めさせるべきだった。
ところがわたしときたら、二人が代わる代わる献血に励むのを目の当たりに、
家族の生き血が彼を慰め愉しませることに誇りと歓びさえ感じながら、
むしろ、夫としての責務を放棄することで、彼らの献血に間接的に協力してしまっていたのだ。

なんとでも、罵ると良い。
あの場に居合わせたことのないものに、いまのわたしの心情は、とても理解できないだろうから――
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