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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

お約束の営み

2020年07月25日(Sat) 21:43:55

カーテンを開けると、アサヒがやけに眩しい。
ドラマなら、わたしも吸血鬼になって、灰になって崩れ落ちてしまうところだろう。
けれどもわたしは相変わらず人間であったし、しかも夕べからひどい貧血に悩む人間だった。

妻はわたしの隣のベッドにいた。
私たちが手分けして、ふたりを家まで運んだのだ。
最初は私が息子を、彼が妻を介抱した。
彼は妻をお姫様抱っこして、キスをしたり傷口を舐めたりしていた。
嫉妬でじりじりとしてきたわたしは、代わってほしいと彼に願った。
彼はふたつ返事で引き受けると、今度は息子にキスをしたり、傷口を舐めたりしていた。
彼は、彼流のやりかたではあれど、間違いなくわたしの家族を愛していた。
迷惑なやり方に違いなかったけれど

妻は、夕べの記憶がほとんどないようだった。
けれども肝心のことは覚えているらしく、わたしの前では後ろめたそうに、言葉を控えていた。
ただ、朝の支度があるので、彼女はそそくさと逃げるように、キッチンへと向かっていった。
息子もまた、どんよりとした顔をして降りてきた。
すでに制服に着かえていた彼は、首すじに咬み痕をくっきりと滲ませていた。
咬まれた者だけが見える傷口・・・と、吸血鬼は言っていた。
息子の傷口が見えるということは、息子もわたしの傷口がみえるということ。
妻にしても同じだった。
向かい合わせに食卓に着くと、
「いただきます」の前に、お互いがお互いを窺って、
それぞれの首すじに自分のものと同じ痕を見出すと、
それ以上なにも言わずに、黙って朝ご飯に取りかかった。


「どこまでご存じなの?」
息子が学校に行ってしまい、夫婦の部屋で二人きりになると、妻が訊いた。
「きみに恋人ができたことまでさ」
わたしはいった。
「あなたがとりもってくれたというわけね」
「・・・そういうことだ」
事実と違うことをいうときにどもる癖を、わたしはこのときも発揮した。
「ありがと」
妻はわたしの癖にはおかまいなく、言葉だけを素直に受け取った。
「あくまできみは、ミセス江利川だと言っていたぞ」
「そうね、江利川家の名誉を穢す不貞妻・・・」
妻は薄っすらと、誘うように笑った。
わたしは妻に飛びかかった。
ベッドのうえに押し倒された妻は、ちいさく叫んで、そのまま無言になった。
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