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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

縁の深い彼

2005年10月20日(Thu) 22:35:43

明け方の薄闇を通して、雑木林にはなん人もの人影がしらじらと、見え隠れしている。
夏休みなのに制服姿の女子学生たち。
顔見知りの近所の小父さんや小母さん。
そういう種々雑多な老若男女が家を抜け出して集っている。
屍鬼たちに、血を与えるために。
さいきん越してきた、近所に住む中年の夫婦。
ご主人はこれから早い出勤なのか、スーツにネクタイ。
奥さんは都会風の洗練されたかんじのワンピースにストッキング。
まずご主人がうなじを咬まれてウットリとなり、それから奥さんの両肩を抑えて自分を咬んだばかりの吸血鬼をにこやかに促している。
ご主人の腕のなか、羽交い絞めになった奥さんの顔をあおのけて。
夫婦よりやや年配な男の屍鬼は白髪頭をふりたてて、うなじにぐいいっ、とかぶりつく。
びゅっとワンピースに散る血潮。
奥さんもまた、真っ赤な血が自分の衣裳を染めるのを面白そうに見つめている。

同級生の沙織。
濃紺のベストとスカートという制服姿に、
いつも学校に履いてくる白のショートストッキング。
肌の透けて見えるストッキング地の長靴下のなかでピンク色に輝くふくらはぎに、授業中にも目が行ってしまう。
そんな彼女の足許にかがみ込んで、ショートストッキングのふくらはぎに遠慮なく唇を吸いつけているやつがいる。
ちゅ、ちゅうっ。
鈍い音とともに男の喉の奥に散り、吸い取られてゆく沙織の血。
沙織はそれでもぼうっとなった顔をして、足許に加えられる悪戯を咎めようとはしなかった。
沙織がよりかかった木の幹にもたれるようにずるずると姿勢を崩して尻もちをついてしまうと、
そいつはこちらを振り向いて、親しげに
「よぅ」
と、声をかけてきた。
同級生のケイタだった。
初めてわたしの血を吸ったあいつ。
「いつもわるいな」
そういいながら。
いつものように口を近づけてきて、
かすか口臭と唾液を感じながら、わたしのほうへと顔を近寄せて、黄ばんだ犬歯をむき出した。
さっきの奥さんみたいに、両肩に手を置かれ。
それでもわたしはひとりでに、うなじを彼のほうへと差し伸べてやっている。
フウッと当てられる、なま温かい呼気。
首のつけ根のあたりに走る、ちくりとした鈍い痛み。
くいっ。
なにかを力まかせに、引き抜かれるかんじ。
くらっと眩暈を覚え、よろめいていた。
「だいじょうぶ?」
そういいながら。
「ほんとは女の子のほうがいいんだろ?」
わたしから吸い取った血潮を口許にてらてら光らせながら、ニッと笑うあいつ。
「しょうながいじゃん」
わたしも照れ隠しに笑いながら、傷口についた血を手で拭っている。
漂いはじめる、錆びたような匂い。
ちょうどいま、あいつの喉がぐびぐびと鳴っている。

もうひと口。
「どお?いい気分だろ?」
そういうあいつに、無言で頷いてしまっている。
「これ、妹」
ボクは後ろからついてきた妹のしおりを紹介する。
妹も、中学のセーラー服に、黒のストッキング。
集いに参加するのは、今朝が初めてだ。
「いいの?」
「親にはまだ、ナイショだぜ?」
「わかってるって」
そういいながら。
わたしの血をまだべっとりとほっぺたにつけたまま、
あいつは黒ストッキングを履いた妹の足許にかがみこんでゆく。
さっきの沙織とおなじように。
ちゅうっ。
いやらしい音をたてて吸われる、妹の血。
妹はちょっと痛そうに顔をしかめて目をつむり、
「痛―っ」
そういいながら、うずくまるあいつの両肩に、しっかりと両手をかけて体を支えている。
「うぅん、やっぱ処女のコの血はいいなあ」
かけがえのない大切な妹の血をしたたかに吸い取っておいて。
あいつはいつものように、勝手なことを行っている。

「しおりちゃん、あたしもいいかな?」
そういって近寄ってきたのは、去年の秋に死んだはずの蝶子叔母さんだった。
まだ屍鬼として未熟だったあいつが死なせた叔母も、いまは自分の血を余さず吸い取った男と恋仲だったりする。
「ええ、どうぞ」
しおりはもうなんの抵抗もなく、叔母さんにうなじをさしだしていた。
ちょっともうろうとなった目線が、あらぬかたを虚ろに迷っている。
「制服汚したらごめんね」
そういいいながら姪娘に咬みついてゆく叔母。
さっきはちょっと躊躇していた妹も、
いまはすっかり慣れて、ウットリとなって血を吸い上げられている。

傍らに
さくり。
雑草を踏みしめる、別の足音。
振り向いて、びっくりした。
わたしの許婚の喜美子だった。
「ごめんね。わたしもケイちゃんに血をあげてるの」
そういって恥らう喜美子。
「ケイちゃん」
いつからそんなふうにあいつを呼ぶようになったのだろう?
ずいぶんなれなれしいんだな。
薄闇をとおりぬける微風のようによぎった、軽い嫉妬。
「いいよね?」
と、ふりかえるあいつ。
「構わんさ」
ちょっとだけ投げやりにいいながら、
それでも真っ白なハイソックスのうえから這わされるあいつの唇から目を離せなくなってしまっている。
きゅうっ。
いい音だ。
畜生。旨そうに吸いやがって。
じりじりとじれながら、許婚が血を吸い取られてゆく現場をただ見ているしかすべがない。

気になる同級生。妹。そして許婚。
あいつとはよくよくの縁なんだな。
もしも血をぜんぶやってしまうとしたら、そのときの相手はやっぱりあいつなのだろうか・・・
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