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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

廊下越しの誘惑。

2020年08月20日(Thu) 18:47:46

だだだっ・・・と、廊下を駆け抜ける足音がした。
教室はいつになく、静まり返っていたから、寒々とした窓ガラスひとつ隔てた向こうの物音は、よけいに響いた。
かなり走ったところで、「アアアッ」と声があがった。
あー・・・
教室の中で、だれかがため息をした。
つかまっちゃったみたいだね・・・と、前の席の女子二人が、囁き合った。
そう。この学校には、吸血鬼が出没する。
直太くん、興味あるんだったら、見てきたら?
前の席の女子の一人が、そういってぼくのことを焚きつけた。
え?でも授業が・・・と言いかけた途端、チャイムが鳴った。

廊下の彼方から、キウキウ・・・と、血を吸う音と思しき音が続いていた。
獲物を掴まえた吸血鬼は空き教室で愉しむつもりらしい。
ガラガラと、机やいすを移動する音が聞こえた。
男女を問わず、ハイソックスの脚に咬みつく習性をもっているから、
きっと獲物を教室に横たえて、足許を愉しむつもりなのだろう。
この街に越してきて三か月ほどになるぼくにも、それくらいの知識はついていた。

おっかなびっくり、物音や声のするほうに行ってみた。
やはり空き教室がひとつ占拠されていて、
違うクラスの女子が一人、吸血鬼に組み敷かれている。
意外なことに、吸血鬼は男ではなくて、白髪交じりの老婆だった。

くふふふふふうっ。旨え。旨え生き血ぢゃあ。

女はひとりごちて、女子の首すじにつけた傷口に、唇を吸いつけてゆく。
ちゅうっ。ごくり・・・
際限のない吸血――けれども決して、死なせることはない、という。
でもこのままでは・・・と戸惑うぼくのことなどてんで無視して、
老婆は女子の足許に這い寄った。
薄いピンク色のハイソックスを愉しむつもりなのだろう。

ぼくが仕方なく教室に入っていったのは、
老婆が少女のハイソックスをくまなく舐め尽くし、かぶりついて血浸しにしてしまってからのことだった。
それ以上吸ったら、危ないから。
振り向いた老婆に、ぼくはやっとの想いでそういった。
ぢゃあ、わしの命が尽きてもエェと?
ぼくは、二の句が継げなかった。
血を吸わせ放題にしておいたら、人が。
人が血を吸うのを禁じてしまえば、吸血鬼が。
どちらか片方が滅びてしまうのが、世の習いだったはず。
でもこの街の習慣は、そうではなかった。
ぼくは、母さんまでが随いはじめたこの街の習慣に、初めて身をゆだねることにした。
代わりにぼくの血でよかったら・・・
多分老婆は、良い返事をくれるだろう。
だってそのときのぼくは、制服の半ズボンの下に、
スポーツ用のライン入りのハイソックスを履いていたから。

くふふふふふっ。
老婆はいやらしい含み笑いを泛べると、
ぼくの足許へと這い寄ってきて、すぐに足首を掴まえると、ハイソックスの上からふくらはぎを咬んだ。
「ああッ!」
思ったよりも痛かった。そして、遠慮がなかった。
ちゅうううううっ。
血液が急速に逆流して、老婆の口許へと含まれてゆく。
目の前が真っ暗になって、ぼくはその場に倒れてしまった。
「そもじの脚も、美味じゃぞい」
老婆はそういうと、今度はぼくの上半身にのしかかってきた。
首すじを狙われているのがひしひしと伝わってきたが、身体が痺れてどうすることもできない。
老婆はぼくのうなじを口に含んで、いちばん柔らかそうなところを探り当てると、
ぎゅうっと牙を埋め込んできた――
ぼくの周りの床は、血浸しになった。
ちょうど、少女が静かに横たわっている周囲の血だまりのように。
「ああーーッ!」
絶望的な叫びは、ぼくの教室まで届いたはずだが、だれも助けに出ては来なかった。

「美味しかった?よかったね。
 あたし以外にも、モノにできちゃったね。ラッキー」
あどけない少女の声が、ぼくの鼓膜を酔わせていた。
「わざとでしょ?この子、あたしのこと気にしてたんだもん。
 教室の前で声あげたら、絶対出てくるって。
 あたしが咬まれているところを視たら、絶対昂奮しちゃうって」
なにを言っているんだろう?
これはこの少女の狂言だったのか??
「わしはそもじを襲うことしか頭においておらなんだ」
老婆はそう独り言ちて、少女の首すじに指先を圧しつけると、
まるでマニキュアのようにして、赤く輝く血のりを爪に塗り込んでゆく。
そのうちぼくのほうにも手を出して、
首すじの傷口をさっと撫でると、撫で取った血を同じ爪に塗り込んでゆく。
「そもじら、相性はよさそうじゃの」
「爪でわかるの?」
少女は訊いた。
「うんにゃ、腹具合でようわかる」
そう、老婆の貪欲な胃袋は、いま彼女の血とぼくのとで、充ち満ちているはずだ。

「オイお前、わざわざ授業中の教室を出て身代わりになろうとは、男気があるの。
 いっそこの子の、彼氏にならんかの?
 彼氏になって、この子をわしの家まで送り届けるもんが要るんぢゃ。
 時おり正気にかえって、わらはに血を摂られるのを嫌がって尻込みすることがあるでのう」
老婆の誘惑に、ひどくそそられた。
「よいご返事ぢゃわい」
老婆の手が、半ズボンの股間に添えられた。
幸い、少女はその方面は奥手ならしく、老婆の言い草を理解していなかったのが、救いだった。
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