fc2ブログ

妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

老婆を訪問。

2020年08月21日(Fri) 07:22:21

放課後。
友達同士でいっしょに帰ろうと声を掛け合うもの。
運悪く掃除当番で、掃除用具入れからホウキやちり取りを引っ張り出すもの。
運動部の部活に出るために支度をするもの。
てんでんばらばらの動きになる雑然とした空気の中で、
ぼくはまだ薄ぼんやりと、前の授業の板書の残った黒板を、見るともなしに見つめていた。

そんなぼくの傍らに、すっと人の気配が立った。
あのときいっしょに血を吸われた彼女だった。
色白の頬。長い黒髪。
他の生徒よりもぐっとあか抜けた、女の子のファッションとは無縁のぼくが眺めても洗練された服装。
その子のまなざしはあくまでもそっけなく、気品にあふれた冷やかさで、暗い色をしていた。
そのどす黒くて暗いまなざしが、獲物を狙う鷲のように、ぼくに照準を定めてくる。
「連れてってくれるんでしょう?」
高飛車な語気。虚ろな声色。
それを教室のみんなが聞いている。
なにしろ彼女は、学年で一、二を争う美少女だったから。
虚ろな声が、まだも続いた。
「おば様の住処――道はあたしが知ってる」
いったい、どちらが連れていくのだろう?
戸惑うぼくをさらに戸惑わせて愉しむかのように、少女はスカートの下の足許を見せびらかした。
「ライン入りのやつ。あなたとおそろいにしたのよ」
彼女のひざ下には、ぼくと同じ黄色と黒のラインが入ったハイソックスが、
ぴっちりとお行儀よく引き伸ばされていた。

「うひひひひひっ。約束をたがえずに来たわいの」
老婆は相変わらず、下品だった。
「彼氏さんに、彼女さん。そういうことでよかろうの?」
さあ、ぼくたちの関係はどうなのだろう?
戸惑うぼくを打ち消すように、彼女はいった。
「そう、あたしの彼氏。自分の彼女の生き血を吸血鬼の婆さんに吸わせに来たのよ」
ぼくを無理に引き寄せるように腕を組んだかと思うと、
「もう、あなたったら、最低!」
と、不意打ちの平手打ちが、ぼくの頬を横切った。
「ふはは。痴話げんかは他でおやりなされ。で、どちらが先に喰らわしてくださるのかな」
「もちろんぼくです」
ひりひりする頬をガマンしながら、ぼくは彼女と老婆のまえに立ちはだかった。

お揃いのハイソックス越しに、老婆の汚らしい唇が圧しつけられる。
そいつはヒルのように意地汚く這いまわり、しなやかなナイロンの舌触りをたっぷりと愉しんで、
さいごに、ふくらはぎの肉づきのいちばんよいあたりに、
黄色く薄汚れた牙をあてがって、
縫い針を刺し込むように、グイッと食い込まされてくる。
貧血を起こしたぼくは、姿勢を崩して尻もちをついたまま、
お揃いのハイソックスを辱められてゆくありさまを、ただぼう然として見守っていた。

「行きましょ」
彼女はそっけなく、ぼくに声をかけた。
老婆に辱められた悔しさが、乾いた語気ににじみ出ているような気がした。
実際、どう感じているのだろう?
すでに彼女は、ここに来て老婆に咬まれるのを習慣にしていた。
衣装もろとも辱められて、ハイソックスやストッキングを穿いた脚をいたぶられるのも、
二度や三度の経験ではないはずだった。
でも、老婆にいわせると、男連れは初めてだという。
でも、終始そっけない態度は、ぼくを戸惑わせ、怖気づかせさえした。
ぼくは彼女にとって、どういう存在?
何やら自信がなくなってきた。

「送ってくれるんでしょ?」
彼女は「家まで送りなさい」という代わりに、ぼくにうつろな声をかけた。
お揃いのライン入りのハイソックスは、老婆のさもしい手つきで、脚から抜き取られてしまっていた。
ぼくは通学用の紺のハイソックスを、彼女は白の無地のものを別に用意して、
もういちど老婆を欲情させて、ようやく解放されたのだった。
ぼくはともかく、彼女の真っ白なハイソックスには、派手な赤い斑点が、大小いびつに滲んでいる。
「家まで送ってって頂戴」
ぼくの尻込みをあくまで鉄火な調子ではね返すと、
彼女は後をも振り向かず、すたすたと歩きだした。
「くふふふ。ご苦労なことだね。しっかりおやり」
老婆はぼくを応援してくれるのか。いやきっと、からかわれているだけなのだろう。
ぼくは老婆に一礼すると、あわてて彼女の後を追った。

「昂奮、してたでしょ?」
「・・・え・・・?」
「昂奮してたよね?」
説明抜きでの問いかけの後、今度はわざと露骨な言い方をした。
「あたしがハイソックスの脚を咬まれて悔しそうな顔してるとき、あなた昂奮してたでしょう?」
あ・・・ごめん・・・
声に出す間も与えずに。
ぱしぃん!
平手打ちが再び、ぼくの頬を鋭く横切っていた。
前の記事
三人の妻。
次の記事
廊下越しの誘惑。

コメント

コメントの投稿

(N)
(B)
(M)
(U)
(T)
(P)
(C)
管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
http://aoi18.blog37.fc2.com/tb.php/4022-580bfc0f