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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

入学の条件

2020年09月21日(Mon) 08:45:17

ぼくが女学校に入ると決まったのは、
小学校六年の、秋のことだった。
中学にあがるのに制服を作ることになったとき。
何年もまえからの願望を、両親のまえ、つい口走ってしまっていた。
女子生徒の服を着て学校に通いたい。

意外にも。
両親は理解を示してくれた。
ママはぼくに言った。
「ママの交際相手のかたがいらしている学校でもいい?」

ママが吸血鬼と浮気していることは、だいぶ前から知っていた。
パパも薄々感づいていて、でもそのことには触れないようにしているみたいだった。
ママはお行儀がよくて、家のなかでもスカートにストッキングを穿いていた。
上品な身なりだなあと、子供心に思っていた。
そのストッキングを、片脚だけ脱がされて。
夫婦のベッドのうえ、吸血鬼の小父さん相手にはぁはぁと息を弾ませていた。
浮気とはどういうものか理解できなかった年頃のぼくにさえ、
それがイヤラシイ行為なのだと、察しが付くほどだった。
それ以来、ママのストッキングは、ぼくの中では、イヤラシイ装いに変化していた。

あのイヤラシイ、ストッキングを穿いて学校に通いたい。
女学校のお姉さんたちが腰に巻いている、
濃紺の、あるいはカラフルなスカートを、
ぼくも腰に巻いて、通学したい。
街の女学校には吸血鬼が出るというけれど。
吸血鬼に制服姿を襲われてもかまわない。
ぼくは女子生徒として、女子の制服を着て通学したい――

念じつづけていたら、吸血鬼の小父さんが我が家にやって来た。
パパも顔見知りだったから、「やぁ、いらっしゃい」なんて、親し気に声までかけている。
自分の妻を浮気に誘う男と知りながら。

「いくつか条件があるよ」
小父さんはいった。
「女学校に入ったら、必ず女子の彼女を作ること」
「彼女ができたら、まだ処女のうちに私に遭わせること」
「私が彼女になにをしても、きみは手を出さずに一部始終を見守ること」
「私ときみの彼女がデキたあとは、きみも彼女を好きにして良い」
「けれども、彼女にアプローチをしてくる男子がいたら、彼女の浮気を応援すること」
「彼女を男に寝取らせたら、すべての条件を満たしたことになる」
一気に話す内容が、いちいちぶっ飛んでいたけれど。
「ぜひそうなさいよ」
と、ママもパパもすすめてくれたから、
ぼくはウンと頷くしかなかった。

制服を作りに制服店に行ったときの記憶は、まだ鮮明だ。
「男子の制服ですね」
肩にメジャーをぶら提げたおばさんが事務的にそういうと、
ママが口添えしてくれた、
「イイエ、男の子なんですけど、制服は女子なんです」
おばさんは一瞬あっけにとられたような顔をしていたが、
保護者同伴で堂々と、男の子だけど女子の制服を希望していると聞かされると、
納得したような顔つきになって、
「ああ、そうだったんですね。わかりました。ではご用意しますね」
そういって倉庫に行きかけると、ぼくに耳打ちをした。
「きみ、良かったね、お母さんがわかってくれる人で」

その日に買ったのは、標準服と呼ばれるブレザーとジャンパースカートの組み合わせだった。
けれども、たまにはお洒落をしたいでしょうと言い出したママは、
入学祝いにと、カラフルなスカートのついたブレザーの制服も買ってくれた。
そして、入部した合唱部がセーラー服の着用を義務づけていたので、
セーラー服も買ってもらった。
「だいぶ出費がかさんだわね」
ママはそういいながらも、もの分かりの良い主婦を演じてくれた。
その日もベッドのうえで、吸血鬼の小父さんとはぁはぁ息を弾ませていたから、
お願いするタイミングが偶然、よかったのかもしれなかった。

学校に入ったぼくは、合唱部に入って、そこの副部長格の子と仲良くなった。
明るくて屈託のない、良いトコ出のお嬢さん――佐奈川百合絵さんだった。
「そろそろ紹介してもらおうか」
小父さんがそう言いだしたのは、
「もう一ヶ月待って!」
と言いたいタイミングだった。
でも、その一ヶ月が過ぎたときには、なにもかもが終わっていただろう。
男ふたりはそれを分っていたから、ぼくはつぎの日の放課後、佐奈川百合絵を体育館の裏へと連れ出した。

騒ぎにはまったく、ならなかった。
処女の勘は鋭いらしい。とくに吸血鬼に対しては。
相手の正体に一瞬で感づいた百合絵さんは、アッとちいさく叫んで口許に両手をあてて怯えたけれど、
小父さんはそんな彼女のセーラー服の肩を容赦なく掴まえて、
白い首すじに赤黒く爛れた唇を吸いつけると、がぶりと咬みついていった――

着用を指定された黒のストッキングに、いくすじもの伝線を走らせながら、
百合絵さんはいつもの快活な少女に、戻っていた。
「きょうのストッキング、穿き古しなんだからね、恥かいちゃったじゃないの!」
彼女はぼくの背中をどかん!とどやしつけ、
破けたストッキングをねだる吸血鬼には気前よく振る舞って、
スカートのなかに手を入れられて、脱がされるままにくしゃくしゃにしわ寄せながら、
ストッキングを引き下ろされていって、
しまいに脚から抜き取られていった。

彼女は処女だった。
吸血鬼の小父さんは、甘い果物にありつくように、
三日にいちどは彼女のまえに現れた。
合唱部の副部長は逃げ惑いながらも部室を出ようとはせず、
部室のなかで頭を掴まれ、肩を抑えつけられて、
激しく食いつかれた首すじから撥ねた血で、襟首を赤黒く汚されていった。

養護教諭に耳打ちされたのは、それから一週間後のことだった。
百合絵さんが養護教諭に匿われた保健室のベッドのうえ、
小父さん相手にはぁはぁ息を弾ませているのを目の当たりに、
ぼくは不覚にも、スカートのなか、自分のショーツにびゅうびゅうと射精してしまっていた。
彼女の浮気にも、腹は立たなかった。

やがて彼女の上に乗っかるのが小父さんだけではなくて、
運動部のキャプテンが、のしかかるのも、見せつけられていた。
百合絵さんの黒のストッキングは破かれ引きずりおろされて、
薄々の黒のストッキングの脚は、
運動部のユニフォームの真っ赤なリブ入りハイソックスの逞しい脚に挟まれ蹂躙されていった。

ぼくは、男の子としてはもう、終わってしまったのかもしれない――
そう思ったとき、百合絵さんはいつものように、背中をどかん!とどやしつけてくる。
なに黄昏てるのよ。あたしたち、彼氏と彼女なんでしょ?
そして小声でささやくのだった。
あんただって、愉しんじゃってるくせに――

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