淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・
少年たちの会話。
2020年11月06日(Fri) 18:51:21
「最初に狙ったのは、ユッキーのほうだった」
達也は自慢そうに話し始めた。
ユッキーとは由紀也、つまり保嗣の父親のことだった。
さいきんの達也は、同級生の父親のことを、まるで友達であるかのようにそう呼び捨てにする。
これは、いくら親友でもふつうではあり得ない態度である。
「うんうん」
保嗣は興味津々、聞き入っている。
これもまた、息子としてはあり得なさそうな態度である。
達也は象げ色をした牙をむき出して、由紀也から吸い取った血がまだ滴っているかのように、その牙を舐めた。
「美味しかったの?父さんの血は」
「ああ、とても美味かった。さいきん、血の味を良くするために、タバコをやめたんだね。感心なことだよ」
「健康にもいいことだしね」
「そうそう」
達也の自慢話は続く。
「ユッキーが、奥さんの和江とふたりでいるときに、君ん家(ち)へ行ったんだ」
「それは気がつかなかったな」
父親だけではなく、母親も当然、呼び捨てである。
「和江がお茶の用意をしていて、ユッキーは独りでリビングにいたんだ」
「うんうん」
「それで、小父さん、喉渇いたんで、血をもらうねって迫ったんだ」
「父さん、嫌がったでしょう?」
「通勤のときに履いていく、あのストッキングみたいに薄い靴下が目当てで行ったんだ。
それは彼も心得ているからね。
きみっ!止めたまえっ!!って、注意されたんだ」
「でも、止めなかったんだろう」
「もちろんさ、首すじをガブリとやったら、たちまち目をまわしちゃったんだ」
「うわー、ひどいな」
「ソファからすべり落ちるようにしてじゅうたんの上に横になってくれたんで、
お目当てのあのすべすべした靴下を、舌でたっぷり愉しんだ」
「うんうん」
「よだれでぬらぬらにされるのがわかるらしくって、止めなさい、よしなさいって言ってたけど、
構わず愉しんで、それから脚にも咬みついたんだ」
「父さんの血、美味しかったの?」
「美味しかったさ。きみにわかってもらえないのが残念なくらいだよ。それから、お茶を持ってきた和江を襲った」
「父さんは、逆らわなかったの?」
「もちろんさ、だってそのまえに、ボク、ユッキーのズボンを脱がして、パンツも脱がして、
和江にしようと思ったことをして見せてあげたからね。
ユッキーに黙ってもらうには、あれが一番良いんだ」
達也は由紀也とは、すでに身体の関係を結んでいた。
どちらが入れる側にもなるほどの親密さではあったけれど、
こういうときには達也が自分の持ち物の味を、由紀也に思い知らせる役回りだったのだろう。
「和江はボクの命令で、いつもストッキングを穿いているからね」
「そうだね、毎日穿いているね」
「リビングに入って来るなり抱きついて、首すじをガブリ!とやったら、すぐにお膝を突いちゃった。
せっかくのお茶をぶちまけないようにって、そっちのほうが気になったみたい」
「さすが主婦だね」
「うん、さすが主婦だよ。それで、和江の穿いているストッキングも、隅から隅まで舐めまわした」
「母さん、嫌がったでしょう?」
「ウン、でも夫の前で恥ずかしそうにしているのが、ちょっとかわいかったな」
「父さんはどうしていたの」
「ボクのことを悔しそうに睨んでいたっけ。くすぐったかったなー」
まるで鬼畜な会話である。
けれどもふたりの少年は、どこまでも無邪気な声色で、やり取りをしていた。
「和江のストッキングも、ユッキーの靴下みたいにびりびりと咬み破いてね、
それから和江がボクの女だということを、ユッキーに思い知らせてやった」
「犯したんだね」
「そうさ、和江はボクの奴隷だから、さいしょは抵抗したけど、そのうちどうしようもなくなって、
ボクと腰の動きをひとつにして、愉しみ抜いてしまった。
”家庭が崩壊してしまいます”って言ってたけど、あれどういうことなのかな」
「崩壊どころか、ボクは母さんをきみの女にしてもらえて、良かったと思っているよ」
「ありがとう。きみのお父さんも、じつはそうらしいんだ」
「そうなの?だったら僕も安心だな」
「だって、”きみも一人前になったね”って、感心してくれたんだもの」
きっと悔し気に履いた捨て台詞に違いなかったのだけれど、
少年たちはそうはとらなかった。
そしてきっと――彼らの解釈のほうがじつは、正しいのかもしれなかった。
「そのあとね、なん度もなん度も和江のことを犯したんだ。
ユッキーはさいごまで目を離さないで、ボクたちが愛し合っているのを見ていたんだ。
そして、ボクの気が済むと、”保嗣が戻らないうちに”って、あと片づけまでしてくれたんだ」
「そうだったんだね、僕、ちっとも気がつかなかったよ」
「それに帰り際、”今度来るときは、もっと礼儀正しい子になってから来なさい”って言ってくれたんだ。
ということは、いつでも言って構わないってことだよね?」
「そうだね、やっぱりきみの母さんへの想いを、父さんにきちんと見せてあげるのが礼儀正しいってことなんだろうね」
「ボクもそう思う。また女が欲しくなったら、君ん家に行くからね。
奥さんを姦られてるときのユッキーの顔つき、すごく気に入っているんだ」
「そうなんだね、きみが愉しんでいるところ、こんどは僕も見てみたいな」
保嗣は無邪気にいった。
自分の悪友が父親の目の前で母親を犯しているところを見てみたいと――
両親がじつは息子の悪友の来訪を心待ちにしていることを、彼はどこまで理解していただろうか。
けれども彼自身もまた、母親の痴態を目の当たりにすることを心待ちにしていたのである。
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