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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

おカネで解決することは、良くないことではあるのだが・・・

2020年11月06日(Fri) 19:35:24

勤務先の事務室で。
達也は由紀也のお尻にガブリ!と食いついた。
「うう・・・っ!」
ひくくうめいて倒れる由紀也に、獣のようにのしかかって、
今度は首すじにガブリ!と食いついた。
息をのんで見守る同僚たちの目も気にせずに。
ぐいぐいと生き血を飲み漁る。
由紀也がぐったりしてしまうと、スラックスをたくし上げ、
お目当ての紺のハイソックスのふくらはぎに、ぬるぬると舌を、唇を、しゃぶりつけてゆく。

「スーツ代です」
招き入れられた由紀也の家で、達也は神妙にとり澄まして、茶封筒を差し出した。
中には5万円入っていた。
「断る!」
由紀也は断固として拒んだ。
「第一、学生のきみがこんな大金を持っているわけがないじゃないか」
「父に事情を話して叱られて、これで許してもらってこい、そうでなければ家にあげないと言われたんです」
達也は正直にそういうと、
「どうもすみませんでした」
ともう一度、神妙に頭を下げる。
由紀也は応える代わり、
「母さん、これ」
と、茶封筒を押しやっていた。

おカネを受け取った ということは。
もういちど、チャンスをもらったようなもの――それが達也の解釈だった。
夏用のスラックス一本に、5万円はかからないだろう。
とすると、5万円分の衣類の毀損を、畑川家は認めたことになる・・・
「それじゃ小父さん、まだ喉が渇いているんで・・・」
夫婦の目が、恐怖に見開いた。

「10万円で、示談にしてもらえませんか」
達也の父親の間島幸雄はそういって、茶封筒を差し出した。
既視感に苛まれながらも、由紀也はいった。
「お断りします。それでは家内に売春をさせるようなものです」
お尻を咬まれたスラックスを台無しにされた見返りに、5万円を受け取ったら。
それ相応のものをまた、奪われた。いや、相応以上に違いない。
ここでこの10万を受け取ったら、妻がどういう目に遭うかわからない――由紀也は実感としてそう思った。
「うちとしても、恥をさらすことですから、表ざたにはしません。達也君も将来のある身ですから――
 ですからこれは、どうぞお収め下さい」
鄭重に、鄭重に、懇願していた。
「わかりました。やむをえませんな」
間島はどこまでも慇懃にそういって、もう一度頭を下げた。
「親にここまで頭を下げさせたんだからな」
達也の尻を軽くどやしつけて、頭を押さえつけるようにして、下げさせた。
本人も仕方なげに、お辞儀をする。
どうも、父親のいるところでは、神妙になる子らしい。

ふと気がついたのは、間島父子が辞去した後のこと。
妻の和江がいそいそと、外出の支度をしている。
喪服に網タイツ。それは最近の達也の好みな装いだった。
お金を受け取らなくても受け取っても、妻と達也が切れることはない。
「ねえ由紀也さん」
妻は改まって何かを言うとき、夫の名を口にする。
「やっぱりお金、受け取った方がよくありません?」
「どういうことだね」
追い詰められた獣のような目をしているのが、自分でも分かった。
「やぁだ、怖い顔しないでよ。
 べつにお金が欲しいとか、そういうさもしい気持ちで言っているんじゃないの。
 決まったお金をいただいて、きちんとけじめをつけたほうが、お互い良いと思いますのよ。
 いちど、考えてみて下さらない?」
では私、行きますから――
妻はそう言って、不貞の現場へ出かけていった。
「行きます」が「逝きます」に聞こえた由紀也が、妙な昂奮のひと刻を過ごしたのは、いうまでもない。

「きみがひと月に出せるお金は、いくらくらいかね?」
達也に背中を向けて、由紀也が訊いた。
「小遣いが5千円だから、半分までかな」
「じゃあ、2千円にしようか」
「そうですね、2千円にしよう」
ふたりはにっこと笑った。

妻の貞操、ひと月2千円――
ずいぶん安い売春だと思ったが、
すじを通した和江は満足そうだった。
夫の由紀也も、満足そうだった。


あとがき
春ころに描いていた異常なシリーズですが、どういうわけかすらすらと描けます。(笑)
前の記事
淫姦される家族を主題に、レトロチックに詠んでみた。
次の記事
少年たちの会話。

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