淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・
文集
2021年03月12日(Fri) 08:00:15
春先に親友から、分厚い文集が送られてきた。
内容は、去年の夏旅先で知り合った吸血鬼と、親友夫妻との交情の記録だった。
迷い込んだ山中で、さいしょに親友が血を吸われ、
朦朧となった目の前で奥さんが草むらに組み敷かれ、首すじを咬まれながら犯されたのをなれ初めに、
やがて夫婦と吸血鬼とは打ち解けあって、親友は妻の不貞を許し、
愛妻の貞操喪失記念にと、ストッキング一枚に剥かれた妻が愛し抜かれるいちぶしじゅうを、
ひと晩がかりで目の当たりにするという体験をしたという。
そんな田舎にストッキングなどを持って行ったのは、
さらにそのまた知人の誘いで、当地の婚礼に出るためだった。
婚礼があるというのは、嘘ではなかった。
自分の妻と吸血鬼との婚礼であると気づくのに、そう時間はかからなかったから。
出会った吸血鬼は、ストッキングフェチだった。
喪服に黒のストッキングを身に着けていれば、年配のご婦人にまで言い寄るようなやつだった。
まして、まだ四十代の親友の奥さんの、ストッキングに透きとおる足許が狙われたのはむしろ当然だったのだと、親友は文集のなかで書いていた。
手持ちのストッキング二、三足では愉しませきれないと、奥さんは感じた。
家に帰ればこじゃれた洋服を、奥さんはなん着も持っているのにと、親友も感じた。
彼らが都会の自宅に吸血鬼を迎え入れたのは、これもとうぜんのなり行きだった。
こんな文集が送られてきた理由は、ひとつしかなかった。
文集を持ってきたのは、ほかならぬ吸血鬼当人だったから。
あまり度が過ぎると健康を損ねるから――という理由で、彼は夫妻といちど距離を置くことにしたのだ。
その間の血液の供給先として選ばれたのが、わたしの家だった。
わたしにはまだ三十代の妻、この春中学にあがる娘、それに還暦前の母がいた。
三人の女たちが、どんなふうにしてスカートをめくられたのか、わたしは文集に書いた。
妻や娘のフレッシュな生き血だけではなく、
ふだんでもストッキングを脚に通す習慣を持った母さえもが、すっかり吸血鬼のお気に召していた。
長年連れ添った妻がストッキングをひざまで降ろされて、じゅうたんのうえを転げまわるのを、父までもが好奇心を苦笑に押し隠してひっそりと覗き見していた。
この文集を、弟のところに送ってやろう。
彼はまだ、新婚だ。
吸血鬼はきっと、満足するだろう。
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