まえがき
たいとるは「女装妻」ですが、ほとんど純女の人妻の話として読めるようなお話に仕上がりました。
なので、女装に関心の薄い方も、読んでみてください。^^
妻のゆいを伴って、吸血鬼の悪友宅を訪問した。
うら若い人妻の生き血を啜りたいという欲求に、応えてやるためだった。
ぼくたち夫婦と彼との間に妖しい三角関係が生じたのは、去年のことだった。
そのときやはり彼は飢えていて、灰になる寸前になって相談を持ち掛けてきたのだ。
ゆいひとすじのぼくにとって、うら若い人妻、といえば、ゆいしか思い当たらなかった。
彼もそれを見越して、ぼくをターゲットに選んだのだと、あとでいった。
親友が灰になるのはどうしても避けたかったぼくは、
相手が吸血鬼ときいて怯えるゆいに説明した。
彼はぼくの親友だから、ぼくの愛するひとの血を吸い尽くして死なせることは決してないこと。
すでにぼくの母や妹も経験者で、いまでも時々つき合っているけれど、
ふたりとも旅行に出てしまっているので、急場に間に合うわけにはいかないこと。
人妻の血を啜った後の吸血鬼は、ひどくエッチな気分となって、
ゆいとセックスをしたがると思うけど、
そこは目をつぶって許してやってほしいこと、など、など。
ゆいを抱かれてしまうことには、さすがのぼくも抵抗があった。
けれども、気丈な母やおぼこだった妹が抱かれてゆくところをのぞき見する愉しみを経験してしまったぼくにとって、
ゆいが犯されるところを覗く ということに、耐え難いほどの誘惑を感じてしまったのも事実だった。
ゆいは、「気分は喪中♪」と称して、ブラックフォーマルを着込んで、
ぼくに連れられて初めて、吸血鬼と顔を合わせた。
「案外ふつうなんですね」
ゆいは拍子抜けしたように、いった。
自分の父親くらいの年恰好の、風采のあがらない初老の男をまえに、
むしろ安心したようだった。
楚々とした装いの、黒のストッキングの足許に、唇を吸いつけられるまでは。

薄地のストッキングごしに、ヒルのような唇をヌメヌメと這わされて、
ゆいはさいしょ気持ち悪そうに相手を見おろしていたけれど、
吸血鬼はだまっているゆいと接して、
彼女が彼のために穿いてきたストッキングの舌触りを愉しんでいることを、
決して嫌がっていないのだと、自分に都合の良い誤解をした。
そしておもむろに牙をむき出すと、薄いナイロン生地をぱりぱりと破きながら、ゆいのふくらはぎに魔性の異物を埋め込んでいったのだった。
やわらかなふくらはぎから吸い出されたゆいの血液が、
ぼくの悪友の唇を浸し喉を潤してゆくのを、
ぼくは息をつめて見守るばかり。
ゆいもまた、両手で口許を羞ずかしそうに抑えながら、
咬み破られたストッキングがいびつに妖しくよじれてゆくありさまを、
ただひたすらに見つめおろしていた。
本物の女よりも、女らしかった。
口許に散った吸い残した血を丹念に舐め取りながら、吸血鬼はぼくにいった。
最高級のほめ言葉だった。
彼の言い草に、ぼくは満足を感じた。
そうなんだ。
ゆいはほんとうは男の子だけれども、性別の差を越えてぼくと結婚して、いまは女としての日常を穏やかに送っている。
そんな日常をぼくたちの日常を、彼は必要以上に乱そうとせず、妖しい色どりをつけ加えてくれた。
漆黒のブラウスを半ば剥ぎ取られ、半ばを腕に通して、
重たげなスカートを腰までたくし上げられて、
ゆいはショーツを引きずりおろされるままに引きずりおろされて、
股間にそそり立つ吸血鬼のペ〇スを、従順に挿入されていった。
根元まで埋め込まれたとき、彼女はなん度めか白い歯をみせて、
こみあげる昂りをぼくの視界から押し隠そうと、むなしい努力を重ねた。
ぼくは彼女に近寄って、なおも抗おうとする両腕を、優しくじゅうたんのうえに抑えつけながら、いった。
「愉しんでいいんだよ、ゆい」
男はぼくの囁きを耳にすると、くすぐったそうににんまりと笑みながら、ゆいとの距離を否応なく縮めていった。
息はずませた上下動の激しさが、抑えた腕を通して生々しく、伝わってきた。
ゆいはどこまでも優しく、可愛かった。
フェラチオを望まれれば、恥ずかしながらも応じていったし、
初夫よりも大きいわあと言え!と命じられると、
ぼくに許しを請うような目線をチラチラと送りながらも、唯々諾々とそれに従った。
脚から抜き取られた黒のストッキングを戦利品のようにせしめられて、
むぞうさにポケットに突っ込まれてゆくのを、眉を寄せて見つめていたが、
決してそれを取り返そうとはしなかった。
「お前のゆいは俺がストッキングフェチだと知りながら、薄黒いなまめかしいのを択んで穿いてきて、俺をしんそこ愉しませたのだ」
吸血鬼はぼくにそう囁いて、ああたんのうした、と聞こえよがしに言った。
身体の奥底に脈打つ血潮をしたたかに味わわれてしまったゆいは、恥ずかしさに真っ赤になって、うつむいた。
それからのゆいは、貞淑な人妻から、貞淑で淫乱な人妻にかわった。
京極夫人としての清楚な服装を、彼に愉しませるために装うようになっていた。
ゆいのファッションセンスを目のまえで褒められて、夫のぼくも悪い気はしなかった。
仮にそのすぐ後に、こぎれいな装いをしどけなく乱されてしまうのだとしても――
ゆいは、ときにはぼくの目を盗んで逢瀬を愉しみ、
あとから悪友からの見せびらかしですべてがばれて舌を出す、
そんなお茶目な不倫を愉しむようになったのだ。
ふつうの夫婦では、不貞は裏切りに直結する。
けれどもゆいの不貞はむしろ、ぼくたちの結婚生活に、新たな刺激をもたらしたのだ。
その日もゆいは、ぼくの誘いに応じてくれて、吸血鬼宅への訪問を拒まなかった。
情夫のために念入りに化粧をするゆいを横目に、ぼくは淡い嫉妬を覚え、
恥ずかしい隆起が股間を圧迫するのを感じた。
その日のゆいは、白のハイネックのセーターに、下も白系の花柄のひざ下丈のスカート姿。
軽やかな色と質感のスカートが、クリーム色のストッキングに包まれた足許にまといつく様子は、人妻というよりも良いとこのお嬢さんのようだった。
ウィッグは先日買ったばかりのナチュラルブラックのロング。
初めてのお試しだよ、と笑うゆいの目鼻が、優しく上品に輝いた。
ぼくのきれいなゆいを、あいつに見せびらかしてやりたい。
そんな気分になっていた。
ぼくはゆいを吸血鬼に見せびらかし、
吸血鬼は乱れるゆいをぼくに見せつける。
ゆいを挟んで裏表から楽しんでいる関係――
うまく言えないけれど、
同じひとりの女性を愛したもの同士の連帯感が、
彼とぼくとのあいだで生まれていた。
「ウフフ、きょうはいちだんと、かわいいね」
ぼくたち夫婦を迎え入れた吸血鬼は、舌なめずりせんばかりにゆいを見つめ、
ゆいもまたそれに応えて、胸を張って彼の好奇心たっぷりの視線を受け容れた。
さあ座り給え――吸血鬼がゆいのために用意してくれた椅子は、
きょうの衣裳に合わせたかのように、白の小じゃれたチェアだった。
ゆいはお行儀よくチェアに腰かけて、
クリーム色のストッキングに包んだ足許を、さりげなく見せつける。
それは結婚式のとき、ウェディングドレスの下にまとったものと、同じブランドだった。

お行儀悪いことのできないお嬢さんのような楚々とした態度に、彼はいっぺんに参ってしまった。
「ああ、たまんねぇ」
珍しく下品に語尾を歪めながら、彼は息遣いも荒く、ゆいの足許にかがみ込んだ。
チュッとあがった性急な接吻の音に、ゆいはどぎまぎしながら、
「せっかく穿いてきたの、愉しんでくださいね・・・まだ心の用意ができてない」
と、しんそこ焦った表情になっている。
けれども吸血鬼は応えもせずに、いつも以上に下品に舌を這わせ、薄地のナイロン生地をいびつによじらせながら、ストッキングの舌触りを、彼女の心遣いを、野放図に愉しんでゆく。
「ああ、ああ、たまらない・・・たまらないわ・・・」
ゆいはそう呟くと、ちいさく叫んだ」
「破って、破って頂戴!」
声よりも早く、ストッキングはブチブチと音を立てて裂け散った。
ちゅうっ・・・
ひそやかにあがる、吸血の音。
ちゅうっ、ちゅうっ、ちゅうっ・・・
それはとどまることを知らないように続き、
吸血がつづくにつれて、ゆいの身体から力が抜けていった。
吸血鬼はゆいの身体を這いあがると、首すじを狙った。
「お洋服汚してもいいけど、ウィッグは新調したばかりなの」
薄眼を開けて呟くゆいに、吸血鬼は頷くと、
ロングヘアを器用にかいくぐり、かりりと首すじを咬んでいった。
チェアからすべり落ちた若妻を待つ運命は、ひとつだった。
呪縛にかけられたように身じろぎひとつできなくなったぼくの前で、
ゆいは猥褻極まりない蹂躙を受けつづけ、
床のうえを転げまわりながら、淫靡な舞踏を踊りつづけた。
切ないため息、躊躇いがちに洩らすうめき声。
感じ切って敏感になり切った美肉が、
痴欲もあらわに覆いかぶさってくる男のまえに、さらけ出される。
股間から伸びた一物が、エレガントなロングスカートの奥にまで侵入して、
わずかながら持ちこたえていたゆいの理性は、完全に崩壊した。
もっと、もっとォ・・・
夫であるぼくのまえ、人妻としてのたしなみも忘れ果てて、
男の両肩にしがみつき、だだの牝として振る舞いつづけたのだ。
そんなゆいのエッチな可愛さに、
ぼくはズボンのなかで射精をしつづけてしまっていた。