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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

ストッキングを買いだめする妻

2006年07月28日(Fri) 05:49:29

「今夜、会社の宴会なの。行ってもいいよね?」
妻の理恵はあまりお酒を嗜まない。
むしろ酔っぱらいは大嫌い、というのが口癖なぐらいだ。
結婚以来ずっと派遣社員として働いているけれど。
どこの勤務先でも、いまほど頻繁に飲み会に顔を出すことはなかったし、
たまに断れなくて出ていっても、
アーイヤだった。イヤだった。世の中どうして酔っぱらいなんて人種がいるんだろう?
そんなぐちをこぼすのがせいぜいだった。
それなのに。
今夜もまた、理恵はスカートをひるがえして、夜の街へと出かけてゆく。

つまらんな・・・
和朗は、朝が早い。
夜には子供のように早くに寝てしまうこともしばしばだ。
さて、寝るか・・・
妻の理恵は宵っ張りなので、
和朗が寝る時には隣室の電気がついていることが多い。
けれどもなにごとにも無頓着なほうである和朗は、そんなことは苦にもならずに寝てしまうのだった。
妻のいない夜。
真っ暗な部屋は、意外に眼が冴える。
そういえばあいつ、スカートなんか普段穿かなかったよな・・・
飲み会のときだけは、普段とちがう装いの妻。

留守中妻の箪笥をのぞくような不健全な趣味はもっていなかったけれど。
却ってそれは幸いだった。お互いのために。
箪笥の抽斗のとある一角には。
普段夫が見慣れないはずのストッキングが、渦巻くようにたくさん詰め込まれているのだから。
それもさいしょは安っぽいバーゲン品ばかりだったのが。
中身は、普通の女性としてはごく頻繁に入れ替わり、
だんだん薄手でつややかなものに取って代わっていって、
いまでは高価なインポートものさえ混じっているのだから。

がたん。ばたん。どたっ。
時ならぬ物音に、和朗は目が覚めた。
がさつな妻は、戻ってくるとやけにけたたましい物音を立てるのだ。
今夜もまた、それだろう・・・
たかをくくってそのままの姿勢で寝そべっていると。
ぅー。・・・。
かすかな呻き声がする。
「?」
どこかに、ぶつけたのかな?
それとも、具合でも悪いのだろうか?
布団のなか、さすがに和朗は首をひねり、起き出していった。

理恵が玄関に腰をおろして、ぐったりとなっている。
「おい!?だいじょうぶか?」
ワンピースの肩を揺すられても、理恵の返事ははかばかしくない。
あたりには饐えたような、酒のにおい。
理恵が身にまとうにはもっとも適さない芳香だった。
「飲まされ・・・ちゃった」
ばかだな。断ればいいのに。
「だって、だっ・・・てぇ」
理恵はへらへらと笑っている。
なにが起こっても陽気なのが、この女房のいいところ・・・なんだろうけれど。
シャワー浴びたい。
危ないぞ・・・?
だって、キモチ悪いんだもん。
言い出したらきかない妻。
そのくせ正体はなくなっている。
オレが入れるの・・・?
ちょっと躊躇はしたけれど。
もともと優しいたちの和朗は、大柄な身体に妻を抱きとめて、
シャワールームまで連れてゆく。

「脱がせて・・・服」
おいおい。
若い頃ならいざ知らず。
そういうこととはこのごろ無縁になりつつあるのだが。
和朗は文句ひとついわないで、
妻のワンピースを脱がせにかかる。
注意深い夫なら。
まてよ。
そう、思ったはずである。
出かけてゆくとき。
妻の服装は黒っぽいブラウスにオレンジ系のスカートだった。
少なくとも、いま着ている白と黒のワンピースではなかった。
ストッキングの色も、黒から肌色に変わっている・・・

さすがに。
夫は、息を呑む。
脱がしたワンピースの下からあらわになった太ももに。
ちりちりに裂かれたストッキングが、貼りついていた。
ちょっとしたはずみに破けた。
そんな感じではなくて。
明らかに、人為的な力がくわわっている。
裂け目のほぼ真ん中には、咬まれたような痕が。
かすかな痣と、唾液のような透明で微量な粘液をあやしたまま。
白い肌に赤黒い滲みをたたえている。

おーい。おおい。
朝になってもまだぼんやりとしている妻。
和朗の口調がのんびりしているのは、根っからの性格なのだろう。
心の奥にはただならぬさざ波が立っているはずなのだが。
それ以上に。
気は確かか・・・?
そういいたくなるくらい。
飲み会の翌日の理恵は夢でも見ているような顔つきになっている。
今朝の場合はとりわけ、それがひどかった。
マーマレードが嫌いな和朗のパンに、マーマレードをしっかり塗りたくるし。
ふだんはあまり飲まない牛乳をたっぷり注いで、飲み込んだあとにむせ返っているし。
きょうは会社、休むわ・・・
そんな妻の言葉に、かえってホッとしていた。

その日の仕事は忙しく、帰りは深夜になった。
和朗を迎えたのは、真っ暗な自宅。
いつも宵っ張りの理恵だったが。
さすがにもう、床に就いたらしい。
飲みつけない夕べの酒が、よほどこたえたのだろうか?
服を脱ぎ、シャワーを浴びて。
夕べ妻の服を脱がせたことがちょっとだけ、記憶をかすめる。
子供作らないの?
母ののどやかな口調が思い出される。
うちにはまだご縁がない話だよなあ・・・
このところ縁遠くなっている妻の肌をひさしぶりにおがんだのに。
夕べも、それどころじゃなかったっけ。
シャワールームを出ると、そらぞらしいほどの冷気を感じた。
いまどきの季節に似合わないほどの、まるで毒を含んだような冷気・・・・・・
和朗はふと、気を喪っていた。

あっ・・・ああ・・・っ。
寝室から、妻の声がする。
気分が、よくないのだろうか?
待てよ。飲み会は夕べだったはずだ。
薄闇の向こうに、見慣れた妻の肢体がうごめいている。
まだ服を着ているようだ。
黒っぽいブラウスに、オレンジ色のスカート。
ストッキングは黒、だろうか?
つい最近、そんな服を見たっけな・・・と思いながら。
いつのまにか、妻の周囲は滲むような灯りを帯びはじめ、
気がつくと服の色がはっきりと見えるほどの明るさになっていた。
じょじょに眼が慣れてくると。
半透明にまぎれたもうひとつの影が、妻にまといついているのを発見した。
「お前は、誰だ・・・?」

お前は、誰だ?
誰何されても、影はうごきをとめない。
黒のストッキングを履いた妻の脚に、しなやかな腕をからみつかせ、
ついでのことに唇までも、あてがって。
あちこちに、見境なく。要所要所に這わせてゆくのだ。
冷静な状態の和朗なら、力ずくでも相手のうごきを止めたであろう。
けれども今、彼の意識はひどく薄ぼんやりとしてしまっていて。
目のまえの出来事も、うつつか幻か・・・という状態だったのだ。
「あら。ばれちゃった」
妻がイタズラっぽく、舌を出す。
「ごめんね。もうちょっとだけ、目つぶっててくれる?」
どういうことなの?
妻に訊ねる声色が、子供のようなたどたどしい口調になっている。
「んー。ひと言ではいえないなあ」
妻はそれでも、語りはじめてくれた。
黒ストッキングの脚を、影のいたぶりにゆだねつづけたまま。
薄墨色に染まった理恵の脚が、はじめて夫の目に、淫靡なものに映った。

特殊サークルの、会員になったの。
もう、半年くらいになるかな。
会合があれば予定を繰り合わせてでも、出ていくの。
近くに住んでいる親戚の、結婚式くらいかな。優先順位でいうと。
だからあなたの留守中も、しょっちゅう行ってたわ。
呼び出されると必ず、スカート穿いて、おめかしして。
もちろん、ストッキングも穿いて・・・出かけていくのよ。
夕べもじつは、そちらのほうだったの。
黙っていて、ゴメンね。
なにをされに行くのかって?
だいじょうぶ。安心して。
一般会員のばあいは、ストッキングを破かれるだけ。
そう。おなじサークルの男性会員にサービスするんだよ。
破きたい人には破かせてあげるの。
触ったり、舐めたりも、アリかな・・・
ちょっぴり。だけど。
でもね。お愉しみはそこまで。
素肌に触れるのはダメだし、もちろんエッチも厳禁。
ちょっと変わっているのは。そうね・・・
血を吸われることかしら。
お酒のにおいでごまかしたけど。
夕べはふたりがかりで。ハデに吸われちゃって。服が汚れたの。
ほら。

和朗は、息を呑む。
むぞうさにたくし上げられたスカートの裏地には、
赤黒いものがべっとりと広がっている。

ああ、平気よ。だいじょうぶ。
キモチいいんだ。血を吸われるのって。
和朗も、どう・・・・・・?

うかつだった。
影はもうひとつ、存在した。
そいつは和朗の背後にまわって、かがみ込んで。
かっちりとしたうなじに、
ちくり。
鋭利なものを、素早くうずめてしまっている。

ちゅ、ちゅ~うっ。
夫の身体からあがる吸血の音に、理恵は満足そうな笑みを浮かべた。

判定結果。弱M型。
「強、だったら。どうなの?」
咎めるような目をして見あげる理恵に、影は呟いた。
この場でさいごまで、尽くしていただけたか・・・な。
冷ややかな口調とは裏腹に。
傍らで眠りこけている和朗に対するたくまぬ親愛の情が伝わってくる。
・・・仲良くしてもらえそうね?・・・ああ、もちろん・・・
え?
ふたりの声が聞えたのか。
和朗が切れ切れに、呟いている。
「お客さん・・・かんげいするよ」
ありがと。
理恵は優しく手を伸べて。
瞑りかけた夫の瞼を、しっかりと閉じてやっている。

女性会員の夫がサークルの会員になると。
一般の男性会員とは違う役割を与えられる。
そう。会の趣旨を、じゅうぶんに理解して。
愛する妻を、自分の責任のもとに、会に提供することに同意して。
あやかしの宴に、妻を送り出す。そうした、大切な役割を。
もちろん、会に出席することも許可される。
むしろ、歓迎される・・・といっても、間違いないはずだ。
ただし、その場合には・・・
妻はもちろん、女性会員としての役目を果たすことになる。
おなじ会員となった、夫のまえで・・・

「おぉい、理恵」
和朗がいつもののんびりした声で、妻を呼ぶ。
おかしいな。ぜんぶ夢・・・・・・だったのか?
残業に疲れ果てて、裸のまま寝てしまったらしい。
体のあちこちについた畳あとが、ひどくずきずきしてくる。
うなじに潜り込んだ疼痛などは、とっくに皮膚の奥底に紛れ込んで。痕跡さえも残っていない。
妻は今朝も、スカート姿。
「帰り、遅いの?」
いままで妻が夫に訊いていたことを、今朝は夫が問うている。
「う~ん。わかんない。・・・あ。でも夕食は外で済ましてくれると助かるな」
ああ、いいよ。
気軽に引き受けた和朗は、知らず知らず長めのスカートからのぞく足許に目をやっている。
「それ、ストッキング?」
「きょうは違ーう。柄もののハイソックス。だってすぐ破けちゃうから」
わざと破ってるんじゃ・・・という言葉を飲み込みながら。
それでもうっかり、口をすべらせてしまっている。
  破けたところも色っぽいねぇ。
「あら、貴方にしては珍しい」
少女のようにはしゃいだようすは、いつもとまったく変わりがなかった。
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