淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・
真剣な間男と、不真面目な夫。
2021年06月19日(Sat) 08:51:06
妻の真依(まより)に、吸血鬼はいった。
「まじめな恋愛関係だよな?わし達は」
真依は棒読みのように、こたえた。
「まじめな恋愛関係です」
「そういうわけだ。きみの嫁は、わしの愛人の一人になりさがった。悪く思うな」
ククク・・・と邪悪に笑う彼はしかし、すぐに真顔になった。
「どうかこの恋を、かなえてもらいたい」
夫としての権利を、少しは尊重してくれるつもりらしい。
ぼくはいった。
「まじめな恋なら、仕方ないです」
真依がたんなる慰み物として、本人の意思に反して乱暴されるなら、夫として真依を守らなければならない。
けれども、彼女がきみといっしょにいて幸せだというのなら、ぼくは夫の座を去るか、夫のまま彼女の恋を許容するしかない――
理解のあるご主人だな、と、吸血鬼はにこりともせずに言い、奥さんをしんそこ愛しているのだな、とも言ってくれた。
彼はぼくの血を吸ってその場に昏倒させて、
ぼくはふたりが愛し合うありさまを、理性を忘れて薄ぼんやりとなってしまった脳裏に、しっかりと刻みつけた。
しんけんに愛し合うふたりより、
めろめろにされてしまった妻の痴態に昂ってしまったぼくのほうが、
はるかに不真面目なような気がして、ならなかった。
- 前の記事
- 夫と間男とのあいだに、恋が成立するとき。
- 次の記事
- 不倫の予行演習。
- トラックバック
- http://aoi18.blog37.fc2.com/tb.php/4063-960fdcfd