淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・
不貞もロマンス
2021年08月23日(Mon) 07:21:39
妻と母とを、二人ながら犯されて、数か月が過ぎた。
この数か月は、いままでの人生を洗い流すほどの力を持っていた。
村に移り住んですぐに、二人を見染めた兄弟は、
わたしを虜にすることで、獲物への距離をひと息に詰めて、同時に想いを遂げていった。
立ち去ってもらうためにふたりに手渡した缶ビールが飲み干されてしまうまえに、
わたしは兄弟の棲む家を訪れて、
妻も母も真面目な交際を希望していると告げた。
しんそこ嬉し気に顔を見合わせる兄弟の横顔を、わたしも眩し気に見つめてしまっていた。
二人の相手に、適切な男性を選んだのだという実感が、ひしひしとわたしを包み込んでいた。
不仲の嫁と姑が、これを境に打ち解けた関係になっていた。
ともに、わたしの目を盗んで逢瀬を遂げる立場。
女どうしが共犯になるのに、さして時間はかからなかった。
妻は母のセックスを、「ロマンスですわ」と評していた。
父がすでに、いなくなっていたからだ。
けれども母は、「やっぱり不貞ですよ」と、謙遜していた。
それもそのはず、母の彼氏は、父の写真のまえで姦りたがり、
母も好意的に、彼の願望をかなえるようになっていた――喪服まで着込んで。
漆黒のスーツに身を包んだ母は、貞淑そうなを見せつけるように、
恋人に背中を向けて、父の写真に手を合わせる。
これからわたくしがいたしますこと、どうぞお許しくださいね――と、呟きながら。
そして、淫靡に光る黒のストッキングの脚をおし拡げられながら、
深い深い吐息を洩らしていくのだった。
妻は自分のセックスを、「不貞だ」といって自虐していた。
けれどもその「不貞」の表現は、いみじくもわたしにも向けられていて、
「きょうも貴方を裏切るわね♪」
というのが、わたしを勤めに送り出すときの妻の決まり文句になっていた。
三人そろった晩ご飯の席。
昭和のようなちゃぶ台のまえで、妻はわたしに深々と一礼する。
「ごめんなさい、あなた。きょうも不貞を犯してしまいました」
「ロマンスですよ」
と、言い添えたのは、母だった。
「不倫の恋も恋じゃないの。わたくしといっしょ。貴女の恋もロマンスなのよ」
あいまいに頷くわたしを受け流して、
「認めて下さるのですね!?お義母さま」
と、妻はしんそこ嬉しげだった。
「じゃあ――お前の恋もロマンス・・・ということで」
わたしはとどめを刺すように、思い切って告げた。
とっくにわたしだけのものではなくなった妻。
そのことを妻の眼の前で認めた、初めての刻だった。
あとがき
前作の続きです。
半月以上も経って思いつくというのは、このお話には愛着があるからかもしれないですね。
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