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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

喪服の悪妻。

2022年01月19日(Wed) 20:24:32

喪服の下に、ガーターストッキング。
主人の喪が明けて、今夜は黒一色の装いをまとわなければならないさいごの夜。
あたしはハンドバッグに必殺の武器を仕込んだ女スパイよろしく、重たい漆黒のスカートの裏側を、そんなふうに武装した。
忍んできたのは、主人をあの世に追いやった、吸血鬼。
デキてしまったあたしたちのことを、あまりとやかく言うからこんなことになるの。
すべて、貴方がいけないのよ・・・

夫婦のベッドで半裸になって彼とくつろいでいるとき。
主人は出し抜けに現れて、不倫の現場を抑えたとばかり、はしたなくわめきたてた。
そして、あのひとの餌食になった。
刻一刻と血色を奪われてゆく主人の顔を、あたしは余裕綽々、腕組みをして見守ってあげた。
「顔色がよくないわよ、あ・な・た♡」
冷やかすあたしに返す言葉もなく、主人は自分の奥さんの貞操を奪った男に、生き血を啜り獲らせてしまっていた。
主人にとっては仇敵であるはずの彼のほうがまだ、思いやりがあった。
「ご主人の血はなかなか旨い。なろうことなら生かしてあげても良い」
とまで、言ってくれたんだもの。
それでも彼は、喉の渇きに耐えかねたのか、ついに主人の血を吸い尽くしてしまったのだけど。

地元ではそこそこ大きな商売をしていた主人の家は、後継ぎの現職専務の急死に騒然となり、
その騒ぎは毎日遊び歩いているだけの主人の弟が、渋々後継を引き受けるまで続いた。
どちらもだめな兄弟で、この愚鈍で無能な義弟は、葬儀の席もわきまえず、薄い墨色のストッキングを穿いたあたしの脚に発情した視線を巻きつけて来、もらったばかりの嫁を嘆かせていた。

主人の家は旧家だったから、さすがに葬儀は盛大で、はげ頭の義父も業突く張りな姑も、
息子の不審死の真相究明なんかより、お葬儀に粗相がないかのほうに、よほど気を使っていた。

あたしの愛人は、目だたぬようにひっそりと、それでも間近にいてくれた。
あたしを庇うためじゃないのは先刻承知だったけれど、まあ心強いには違いなかった。
彼の真の目的?
それ訊くの?訊いちゃうの?
決まってるでしょ。
人妻に目のないやつのことだもの。

お通夜の晩には、姑が襲われた。
和服の喪装にクラッときたとか抜かしていたけど、
わざわざあたしのまえで御披露に及んでくれたのは、あたしとしては溜飲がさがったかな。
土葬の帰り道では、バカな義弟の嫁が咬まれた。
いつも居るのか居ないのかわからない、存在感のかけ離れて無い女だったから、
黒のストッキングを脱がされ喪服のスカートにベットリ精液を塗りたくられても、旦那を始めだれも気付かずじまいだったのには笑えた。
でもそれ以来、義弟の嫁は毎晩のように、あいつの呼び出しに応じているという。
不景気な顔してるくせに、案外あなどれないのかも。

初七日までのあいだ、あたしは禁欲を通した。
あの口うるさい婆ぁは、あいつに犯されてからすっかり大人しくなっちゃったから、
姑の目を盗んで主人の仇敵とエッチするくらい朝飯前だったけど、あいつが望むのだから、まあ仕方ない。
そのあいだ。
あいつはあいつで、弔問に訪れた人妻たちを、片端から食い散らしていたのだから世話はない。

主人が土葬に付されたのは、お寺の裏手にある墓地だった。
あたしはその本堂であいつと示し合わせて、顔をあわせた。
本堂には、主人の位牌と遺影とが、まるでお寺の主であるかのように威厳たっぷりにしつらえられていた。
その前で、ヤろうというのだ。
まことに、神をも恐れぬ所業だった。

「この度は、どうもご愁傷さまで」
あいつは滑稽なくらい型通りの挨拶であたしを笑わせると、
あたしはわざとらしくしおらしく、
「主人がいなくなって、寂しゅうございます~♪」
とか言って、やおら喪服のスカートをたくしあげたのだ。
それが冒頭の光景なのです。

あいつったら、主人の位牌と遺影のまえで、あたしを本堂の板の間に抑えつけて犯そうとした。
あたしは懸命に脚をばたつかせて、暴れてやった。
これだけ抵抗したら、だんなかもきっと、成仏するだろう・・・ってくらい、思いきり思いきり、暴れてやった。
主人を咬んだあいつの牙が、あたしの首すじをかすめた。
切れ味の良い切っ先が引っ掻いた痕を、なま暖かい血がかすかに滲む。
あいつはすかさず、舌を這わせてきた。
さいごに喪主である奥さんを成仏させるのが、楽しくってね・・・
あいつはあたしの耳許でくすぐったく囁き、
あたしはあいつを変態変態と罵りながら、なおも脚をばたつかせていた。

広々とした本堂は陰にこもって薄暗く、這いずり回った床は冷え冷えとしていたけれど。
火照りを帯びたあたしの身体には、ちょうど良かった。

とうとうあいつは、あたしを仰のけに抑えつけて、喪服のブラウスを引き裂いた。
スリップの吊り紐を引きちぎり、ブラジャーまで剥ぎ取って、主人の血を吸ったあのなま暖かい唇で、あたしの乳首を含んでいった。
男の舌に玩ばれて、乳首がそそり立つのをおぼえたとき・・・
組んつほぐれつするあたしの腕を、あいつじゃないだれかが抑えつけた。
その掌には強い意思が籠められていて、あたしを絶対に放すまいとしていた。
あたしが身動きできずにいるあいだ、
あいつは薄い墨色のストッキングを穿いたあたしの脚をくまなく舐めて、
夫を弔おうとすりあたしの形式的な意図までも、蹂躙し抜いてしまっていた。
内股にまで舌を這わされて、くすぐったさにへらへら笑った。
あたしのへらへら笑いに合わせるように、虚ろな嗤いが頭の上から降ってきた。
嗤いの主を見あげると、あたしは思わずゾッとした。
・・・死んだはずの主人だった。

鉛色の掌が、あたしの両肩を抑えつけ、
そのあいだじゅうあいつは、あたしの喪服姿を辱しめるのに余念がなかった。
あたしのはたらいた不倫の営みを呪わしげに睨みつけ、
妻の仇敵に自分の生き血を気前よく振る舞うはめになったあの横暴でばかな主人が、
あたしを辱しめて愉しむ間男のために、手助けをしている。

意味がわからない‼

思わず叫んだ声が、本堂に虚ろに響いた。
あいつは主人に抑えつけられているあたしに馬乗りになって、物凄くぶっとくなった一物を、あたしの股間に埋めてきた。
あー、うー、くうぅぅ・・・っ。
あとは、いつものくり返し。
ただいつもとちがうのは、主人があいつのお楽しみを手伝っていること。
あいつ、あたし、それに主人――。
三人が三人とも、勝手な想いを込めて、未亡人スタイルのあたしを凌辱することに熱中していた。

午前2時。
さんざんな交尾の果てに力の抜けた身体を大の字にしたまま、あたしはかつての夫をみた。
あんた、幽霊なの?
まあ、そんなとこだな。
主人らしき男は、フフッと笑った。
いままで見たことのない、ニヒルな嗤いかただった。
戸籍はお前に消されちまったし、あんなに盛大な葬式しちまえば、そんな手前生きてますとは言いにくいよな。
俺は叔父貴のいた、隣町に行く。
あそこはここよりも吸血鬼が多くいて、叔父貴の家もあらかた血を吸い尽くされちまったみたいだが。
叔父貴は叔母や従妹や、家族の血を気前よく振る舞ったから、やつらに感謝されて、一家全員死なずに済んでいるらしい。
俺は半分、吸血鬼になっちまった。
だれかさんのお陰でな。
いや、そのだれかさんのお陰で息を吹き返したわけだから、もう悪口は言えないな。
だからあの街に行って、だれかの血を分けてもらうんだ。
お前とはここでお別れだ。
俺の血を景気よくむしり獲ったあいつと、仲良く暮らすことだな。
おい。あんた。この女をよろしくな。
言い忘れたが、あんたの牙はこの女によく似合う。
結ばれておめでとう。

憎たらしいけど、敗けを素直に認めた男らしい態度だった。

あたしはだれに促されるともなく、言い返していた。
いっしょについていくわよ。
べつにあんたなんかに、惚れ直した訳じゃない。
ただ、見せつけてやりたいだけよ。
あんたの奥さん、淫乱なんだから。
朝も昼間も鼻を鳴らして、ビッチのように男を欲しがるんだ。
あんたはそれを、指でもくわえて視てりゃいい。
なにせ、もうこの世にいないひとなんだからね。
分をきちんとわきまえるのよ。
そうしたら・・・
今度実家から、妹を連れてきてあげる。
あたしと見合いしたときから、あの娘に色目使ってたよね。
あたし――それが許せなかったんだ。
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