淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・
【管理人の独り言】つむじ風
2022年01月19日(Wed) 20:40:41
突如として。
どす黒い”魔”が降りてきて、柏木の脳裏のなかをつむじ風のように、荒れ狂っていきました。
それが、先刻来あっぷしてきた、一連のお話しです。
それぞれ登場人物は別人、同性のケのあるもの、ないもの、さまざまですが、
どうもひとつの共通項が、あるみたいです。
折り目正しい家庭が、吹き荒れる吸血の嵐のなかにさらされて、
それなのになぜか皆さん嬉々として、状況にすすんで対応、堕落の一途をたどっているのです。
目の前で妻を犯されながら、相手の自分の妻に対する一途な想いに感じ入って、姦通を許す夫。
(妻にも、息子にも、そして自分にも・・・彼氏が。)
婚約者の生き血を吸い続けている男に、自らの若い血を吸い取らせ、半吸血鬼になってしまう花婿。
(生き血を吸われる婚約者 (副題:花婿の実家、崩壊す))
花婿になるはずが半吸血鬼として里帰りしてきた息子迎え入れ、妻や娘を促してつぎつぎと血液の提供に応じさせる一家の長。
(生き血を吸われる婚約者 (副題:花婿の実家、崩壊す))
不倫の現場を抑えながら、妻の情夫の吸血鬼に咬まれあの世送りになったのに、ふたりの逢瀬をなぜか手助けする夫。
(喪服の悪妻。)
まあ、ココでいがい絶対あり得ないシチュなのですが、
一貫描かれているのが、「自分の仇敵にすすんで生き血なり、妻なり娘なりを分け与えてしまう行為」です。
潔く妻や娘を提供された吸血鬼たちは、感謝のしるしに彼女たちに容赦なく襲いかかり、したたかに汚してしまうのですが、
仇敵の関係のはずなのに、襲う側、襲われる側双方に、ある種のシンパシーが感じられます。
そのシンパシーがなにによるものなのか・・・は、まだ謎です。
個人的によく描けたとおもうのは、「生き血を吸われる婚約者 (副題:花婿の実家、崩壊す)」に登場する、主人公のお父さんです。
自分の妻や娘の血を吸いに現れたのは、息子の婚約者の情夫。
そんな幾重にも仇敵の間柄のはずなのに、「一家の長らしく」振る舞い、
妻や娘に正装させてコトに臨む段取りをするのです。
妻はそんな夫の想いを察してか、華奢な身体いっぱいに巡る自身の生き血を余すところなく啜り取らせて、
自家の血液の魅力を誇りながら与えることに、「女の意地」を見出しています。
それに対して、血を獲た男は一定の敬意を払い、
けれども花嫁は容赦なく、姑や小姑を追い詰めます。
彼女こそが、まさしく「侵略者」だったのかもしれません。
さいごの一作は、異色です。
夫をかけらも尊敬しない、しかも裏切り抜いた挙げ句無同情に罵っている。
しかも言葉遣いが下品。
前作の、丁寧な言葉遣いと物腰で、婚約者を公然と裏切る花嫁とは、裏腹なキャラクターです。
こういうタイプの人妻は、ココでは珍しいです。
けれどもさいごの一行にたどり着いたとき、彼女の真意がほの見えます。
あの一行――
りあるな柏木には、想像することのできないフレーズです。
まさに、”魔”が描かせた一行でした。
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