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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

喪服の戯れ。 ~夫婦は似るもの。~

2022年01月31日(Mon) 21:15:01

さっきまで。
男はわたしの足許を、舌と唇とペ〇スとで、辱め抜いていた。

いまはわたしは、貧血に干からびた身体を横たえて、
乱れ髪に、乱れ衣装。
はだけた漆黒のブラウスに、たくし上げられた同色のスカート。
そして、みるかげもなく咬み破られた、黒のストッキング。
そんなふしだらななりで、ベッドに身を淪(しず)めている。

礼装というきちんとした服装ほど、乱れ堕ちるとふつうの服よりも妖しさを増す。
そう感じるのは、わたしだけであろうか――

いや、少なくとも、もうひとり。
わたしと同じことを感じている女がいる。
ほかならぬ、わたしの妻である。

ドアの向こう。
呼び出されるまま、誘い出されるままに、
さっきまでわたしの血を旨そうに啜り取った男をまえに、妻は艶然とほほ笑んでいる。
「待った?」
「待ちかねたぞ」
「お化粧に時間がかかったのよ」
「それなら納得だ」
「どうせ・・・血しぶきで汚してしまう癖にぃ」
「あんたの喪服には、持ち主のバラ色のしずくが良く似合う」
妻はフフッ・・・と、笑い返した。
まだいちどしか、抱かれていないはずなのに。
ぴったりと息の合ったやり取りを、小気味よげに交し合う。
「今夜は主人、帰りが遅いのよ。だいじょうぶ。二時間はお相手できるから」
妻はそういうなり、男に背を向けて、ネックレスをはずしにかかる。
男はそんな妻の後ろ姿に、寄り添うように近寄って、器用な手つきでネックレスをはずしていた。
「ありがと」
「男にネックレスを外されると、旦那の束縛からほどかれた気分がするだろう?」
「そんなの、とっくにないわ」
わたしの目があるとは知らず、妻は傍若無人にそうこたえた。
「だれか・・・浮気相手探していたの。まさか吸血鬼に襲われるとは、思ってもいなかったけど」
どうやら後半は、独り言のようだった。

ソファにゆったりと腰を掛ける女の足許にかがみ込んで、
男は舌をピチャピチャと鳴らしながら、黒のストッキングに包まれた脛に、唾液をはぜている。
女は悔しげに、けれども少しくすぐったそうにして、男の所作に目線を落とした。
「どお?新しいのおろしてきたのよ。喪服にはちょっと、光沢が濃すぎるかしら」
きっとそれが、狙いなのだろう。
今夜の妻は、喪服の娼婦。
夫の血を啜った男を相手に、汚された貞操をなおも恥辱にまみれさせて、夫の家名を貶めてゆく。

ばりばりッと音をたてて、ブラウスが裂かれた。
裂けたブラウスのすき間から、珠のように輝く白い肌を覗かせて、
目を細めて乳房にしゃぶりつく情夫に、乳首を好きなだけ、弄ばせていた。
股間がじわり・・・と逆立つのを、わたしは感じた。
さっきまで。
わたしを犯し抜いた一物が、妻のスカートのすそをかすめて、その奥深くをに狙いを定めている。
なん年ものあいだわたしが堪能したあのなめらかな肌を、彼と共有することに、もはやためらいは感じなかった。
けれども、恥を忘れて悶え狂う妻の痴態は、さらにわたしを悩ませ、焦がれさせる――
引き剥がれた黒のストッキングを片脚だけ通したまま、
妻はあらぬ方に目線をさまよわせつつ、
「もっと、もっとォ・・・」と、せがみつづけた。
先刻わたしがあげた呻きと、おなじ言葉を、おなじ声色で。
やつはきっと、思っているに違いない。
「夫婦は似るものなのだ」 と。
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コメント

真夜中にしっかりと読ませていただきました。まるで自分の経験を書かれている気になって。
我を忘れて相手の言うなりに応じてしまい、逢瀬を重ねてしまうというところは、私が共感するところでもあり本質的なところだと思います。

by ゆい
URL
2022-02-02 水 04:26:48
編集
ゆいさん
真夜中に読むには、すこし毒性が高すぎるのではないでしょうか?(笑)
われを忘れて言いなりになってしまう。
逢瀬を重ねてしまう。
そういう相手がいることは、案外幸せなことなのかもしれないですね。
by 柏木
URL
2022-02-06 日 03:38:31
編集

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