fc2ブログ

妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

告げ口をする喪服。~絡まり合う、相姦の糸。~

2022年01月31日(Mon) 22:26:42

雅恵につぎに会ったのは、父の通夜の席だった。
街に棲みつく吸血鬼に魅入られた父は、血を吸い取られたうえに吸い尽くされて、いまは腑抜けのようになってひつぎのなかに収まっている。
――あのひともきっと生き返って、半吸血鬼におなりになるだろう。
だれもがそう、囁き合っていた。

父は好色家だった。
通夜の席に参列した女性のいくたりもが、彼にブラウスを剥ぎ取られ、ストッキングを脱がされた経験を持っていた。
有夫・未婚の見境もなく、父は目に留まった女性に手を伸ばし、
未婚の娘を親たちの前で犯すことも、
堅実な主婦を夫の前で蕩かすことも、
まるでそれがライフワークでもあるかのように、余念がなかった。
それが親族や友人の妻や娘であっても、むしろそのことにそそられるようなひとだった。
もしもかりに吸血鬼にならなかったとしても、じゅうぶん充たされた人生といえた。

母は目を腫らして祭壇近くに侍っていたが、父を想ってのっことだったかどうか。
夫の艶福は妻の禍い――そのことで親族のなかでも、友人たちにも、責められたことがたびたびあった。
見返りにあんたとやらせろ――そんなふうに迫られたこともあったという。
堅実で、貞操堅固な母は、めったなことではそうした欲求に応じることはなかったが、
ただいちどだけ、許してしまったことがあるという。
それも、雅恵に聞かされたことだった。

父は実の妹を犯していた。
初心だった彼女は、父に完全にイカされてしまい、
もとめられるまま、学校帰りの三つ編みのセーラー服姿を抱きすくめられて、
嫁入り前の身体を、恥を忘れて淫らな血潮に火照らせていったという。

新妻のなした一人娘が、義兄の胤だと知ったとき、叔父は怒り狂ったという。
血相を変えて義兄の家に向かったとき、不幸にもわたしの父は留守だった。
披露宴の席で見染めた姪の同級生を、押し倒しに出かけていたのだった。
叔父は母に迫って、父に妻を犯されたほかの男と同じ要求をした。
そのときにかぎって、迫ってくる叔父の手を逃れることができず、母はスカートを脱がされていった。

あなたのお母さんとね、あたしのお父さん――あなたの生まれる前からずっと、仲良しなのよ。
あなたのお父さんと、あたしのお母さん――ふたりもずっと昔から、仲良しなのよ。
そう、それってとっても、いいことじゃない。
まだなにも識らなかったころのわたしは、雅恵の囁きにそんな無邪気な反応しかしていなかった。

けれども色気づいてきたころには、すべてを知ってしまっていた。
雅恵の告げ口という緩衝材がなかったら、わたしはどれほど傷ついていただろう。
けれども彼女の囁きは、毒液のようにわたしの心の奥底にわだかまり、潔癖な理性を痺れさせて、
厳しかった母がみせる”女”の刻を目にしたい願望を募らせるようになっていた。

父の留守を狙って、母を口説いて、組み敷いていく叔父と、
ふすまのすき間から、なかの様子を垣間見ながらも、父へは告げなかったわたしとの、
淫らな黙契が成り立つのと並行に、
父の度重なる悪業に、罪悪感を消した母が、叔父の欲求にすすんで応えるようになったことを、
わたしはむしろ、悦んでいた。
なにしろ――生の濡れ場を、観覧料を支払うことなく目の当たりにできるのだから。

妻が吸血鬼に襲われても良いと告げたあの晩に。
わたしの情夫となった吸血鬼が、うら若い人妻の生き血を欲することを妨げなかったのは。
もしかすると――そのころの記憶がわたしの背中を押し、理性の力を奪ったからかもしれなかった。
前の記事
咬まれる喪服。~不倫の逢瀬の、忌むべき帰り道~
次の記事
怜悧な喪服。~「相姦」の罪。~

コメント

コメントの投稿

(N)
(B)
(M)
(U)
(T)
(P)
(C)
管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
http://aoi18.blog37.fc2.com/tb.php/4114-5d455c72