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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

招く喪服。~穏やかな竜巻。~

2022年01月31日(Mon) 23:24:50

そのつぎに雅恵と会ったのは、父の四十九日のことだった。
虚しい四十九日だった。
なにしろ、弔われているはずの本人は、とうに墓場を抜け出して、半吸血鬼として”大活躍”をしているのだから。
もともとの寝取り魔、犯し魔が、さらにパワーアップしただけじゃないか。
口さがない親族は皆、そういった。
彼等のだれもが、妻や娘を父に犯されていたし、
彼女等のだれもが、父にスカートを脱がされていた。
半吸血鬼になった父は、モノにした女たちの巡礼を始めて、
情婦にした女たちを一人残らず、生き血を味わってしまったのだ。
わが父ながら――もうどうしようもなかった。

通夜の晩、唇をかんで泣き腫らしていた母は、父との別離が悲しかったわけではなかった。
ひとしきり弔いが済んだ後、妻の仇敵、娘を犯した男と怨みを抱いた男どもに償うために、
夜這いを挑んできた男どもの相手を、義理堅くも一人残らずし尽くして、
夫を弔うために装った漆黒のブラウスやスカートを、劣情にまみれた掌に引き裂かれたくし上げられて、
比較的堅固であった貞操を、恥知らずなあしらいにゆだねることを余儀なくされたからだった。
償うと決めたのは母だったから、息子のわたしがどうこう言うことはできなかった。
「あんたも視るんだ。視る義務がある」
母の肉体を欲しがる男どもに要求されるままに、婦人ものの喪服姿で縛られたまま、
凌辱を耐え忍び、戸惑いながらも感じはじめ、さいごにはよがり狂ってしまう母のありさまを、逐一見届けさせられたのだ。

「あたしも償わせてもらうわね♪」
すっかり淫らに堕とされてしまった妻までもが、黒のハンドバック片手に現場に現れて、
喪服のうえからむしゃぶりついてくる男どもの花息の荒さにあきれながらも、
「お義母様おすそ分けをいただきますね」
と母にことわりまで入れて、淪落の淵に溺れていった。

乱脈の悦びに耽った父の報いを受けて、自分の妻と息子の嫁とが償わされるのを、父はどう思っただろうか。
あのでたらめな父のことだから、案外悦んでふたりの痴態に見入ってしまったかもしれない。


前置きが長くなった。
そういう父の四十九日に、雅恵は夫と娘を伴ってきていた。
故人がそういう人物だとは、雅恵の夫もよもや知るまい――と思っていたのだが。
不義の血がつながった娘の婚礼を、
父はあろうことか、雅恵の義妹になる少女たちを犯して祝ったという。

うちの一族、きっと伯父さんのおかげで吸血鬼に狙われるようになったのよ。きっと。

雅恵は、いつものどこまでも穏やかで怜悧な言葉つきで、おそろしいことを口にした。
因縁ね。
そうつづける雅恵の言い草を、わたしは否定しなかった。
どうして本人に報いないんだろう?
そういうわたしの問いを、彼女は鼻で笑って受け流した。
世の中、そういうものじゃない。

私ね――と、雅恵はつづけた。
目線の向こうでは、まだ幼い彼女の娘が、夫の妹たちにお洋服を褒められて無邪気に笑っている。
娘が大きくなったら、あのひとに襲わせてあげようと思っているの。
ゆくゆくはあの学校に行かせたい――そんなふうな、ごくしぜんな口ぶりで、雅恵はまな娘に、呪わしい未来を与えようとしている。
無邪気に跳ね回る足許は、フリルのついたアミアミの白のハイソックスが、稚ない脚の輪郭を華やがせていた。

あのひと――って、どっちの?
わたしの問いをもっともだと思ったのか、雅恵は真顔でこたえた。
もちろん、吸血鬼のほうよ。
そう言いかけて――そうか、お父さんも吸血鬼になっちゃったのよね。と、つづけた。
ふたりで話しているとき、雅恵は父のことを、「お父さん」と呼ぶようになっていた。
血のつながっている父親だから、無理はない。
夫ばかりか、どうして夫の妹たちまで連れてきたのか?
もちろん、義妹たちは故人に、処女を捧げた関係だから。

あなたはどうするの?子供ができたら、やっぱり襲わせてあげるんじゃなくて?
真綿で首を絞めるような問いを発する雅恵の声は、しかしどこまでも優しげで、穏やかだった。
怖い女だ、と、はじめて思った。
けれども雅恵は、そんなわたしの顔色にはとんじゃくなく、つづけた。
でも、真紗湖さんたら、彼の子どもを産んじゃうかもね。
なにもかもを、知っている口調だった。
真紗湖――わたしの妻――が吸血鬼の子を産んで、彼がその子を襲ったとしたら・・・
それは近親相姦じゃないのか・・・?
わたしが問いを発する前に、それと察したのか、雅恵はいった。
むしろ悦ぶかも知れないわ・・・ね?

こないだ、母が襲われたわ。
あたしと似ているから、どうしてもモノにしたいって頼まれて、
逢引きのときに、母も誘ったの。
娘と同じひとと、セックスしない?そう誘われて応じる母も母だと思うけど――でも、相性はとても、よろしかったわ。
母娘で、真紗湖さんのライバルになっちゃったわね。

ライバルはいくらいても、構わないんだろう。
彼の喉の渇きは、たった数人の善意では、癒しつづけることはできなかった。

あたし、招く人なのかもしれない。
雅恵はいった。
嫁入り前に、貴男を招いて。
主人と結婚して、主人の妹さんたちを、お父さんのために招いて。
女物の喪服を着た貴男を、あたしのなかに招いて。
だから母を招くことも、娘を招くことも、たぶん許されていると思うの。
そういえば――
人の生き血を好むあの男までも、招いてしまったわね。
貴男との逢瀬の、すぐあとに・・・
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