淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・
同級生の訪問。
2022年07月03日(Sun) 23:25:36
同級生のカオリさんが、ぼくの血を吸いに来た。
お兄さんのヨシトさんも、いっしょだった。
ヨシトさんは、母さんの生き血が目当てだった。
なので、半ズボンからむき出しにしたぼくの太ももをちょっとだけ咬むと、
すぐ家の奥へと入っていった。
けれどもぼくは、ちょっと咬まれたあの痛痒さにうっとりとなって、
その場にへなへなと尻もちをついてしまっていた。
両親の寝室のほうから、キャーという叫び声があがるころ、
ぼくはカオリさんに首すじを咬まれて、ほんとうにうっとりとなってしまっていた。
カオリさんの牙はぼくの首すじに食い込んで、
ヒルのように吸いついた唇が、獣じみたどん欲さで、ぼくの血を啜り取る。
けれども――
息せき切ったカオリさんの振舞いがぼくのことを圧倒して、
生命を脅かされているという恐怖さえ、忘れ果ててしまうのだ。
チュウチュウ、ごくりん・・・と、ぼくの血が彼女の喉を鳴らすのに聞き入りながら、
ヨシトさんが母さんを手なずけてゆくのを、やはり耳の奥で聞き取ってしまうのだった。
この街は、吸血鬼であふれている。
たとえば、仲良し三人組の女子のうち一人が咬まれると、
残りの二人は血管を空っぽにした親友のため、強制的に献血に応じる羽目になった。
とある球技部は、キャプテンが咬まれてしまうと、伝染(うつ)りが速かった。
上下関係が密だったから、後輩たちが先輩のため、次々と咬まれていった。
校内で行われる紅白試合では、
出場した全員が、おそろいのひざ丈のストッキングのふくらはぎに、赤黒いシミを滲ませている――なんてことさえ、起きるのだった。
先生たちはこういうとき、いつもなんの助けにもならなかった。
自分たちの教育現場には、掲げられた理想と寸分の狂いもないのだと思い込みたいらしくって、
クラスの親睦とか、年長者へに示すべき敬意とかを、ただ虚ろに説教するだけだった。
母さんはいまごろ、スカートをたくし上げられて、ヨシトさんに姦られちゃっているころだろう。
いつも上品に脚にまとっている、あの肌色のストッキングも、
むざんに破かれて、片脚にだけ通したまま、手荒い愛撫に揉みくちゃにされてしまっているのだろうか。
ぼくもカオリさんに組み敷かれて、
カオリさんはぼくの上に馬乗りになって、
制服の濃紺のプリーツスカートをユサユサさせながら、
ぼくとひとつになっている。
カオリさんは、自分のお兄さんに処女を捧げていた。
家族のなかで、まっ先に咬まれたヨシトさんは、自分を咬んだ吸血鬼を家のなかにひき込んで、
年頃の少女とその母親を襲うチャンスをプレゼントして、
首尾よくお母さんを愛人にした吸血鬼はお礼返しに、
カオリさんを真っ先に犯す権利を与えていた。
近い将来、カオリさんは、ぼくのお嫁さんになる。
けれどもきっと、ぼくは自分の花嫁に、お兄さんとの逢瀬を、許してしまうに違いない。
こういう夜、父さんの帰りは遅い。
きっといまごろ、カオリさんのお父さんと二人で、
留守宅で妻を支配されているのを苦笑いで受け流しながら、
一献酌み交わしているころなのだろうか。
あとがき
これも、蔵出しのお話です。^^;
吸血鬼の共存を受け容れた社会では、きっとこういうことが横行するんでしょうね。
わたしも、吸血鬼になりたい・・・ (笑)
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