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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

野暮ったい黒タイツ

2022年11月05日(Sat) 01:00:37

冷たく透きとおった風が吹き抜ける通りを、緑色の制服に身を包んだ女学生がこちらに向けて歩み寄ってくる。
背は寸詰まりで、ずんぐりとした身体つき。
血色のよいだけが取り柄のあまり美しくない丸顔には、赤茶けたにきびが浮いている。
真面目くさった赤い縁の眼鏡の奥には、ちょっと意固地そうな細い目が、不景気な視線をこちらに向けて、
早くも待ち伏せしている黒い影の思惑を見通していた。

濃いグリーンのブレザーに、同じ色調のチェック柄のスカート。
そんなお洒落な制服を、ほかの生徒とは別の学校のそれのように、野暮ったく着こなしている。
太ももを見せびらかすようにミニスカートをなびかせて歩く同級生たちよりも、ぐんと丈が長く、ひざ小僧が完全に隠れてしまっていた。
スカートのすそから覗く、黒タイツに包まれた脚は肉づきが豊かで、
そこだけが若い女の生き血を欲しがる性(さが)をじんわりと逆なでする。
いつものお定まりの、少女のあか抜けない佇まいに、八束はなぜか安らぎさえ感じていた。

少女が八束の前で、足を止めた。

血が欲しいんですね?

彼女はぶっきら棒に八束に話しかけ、自分よりも上背のある相手を、白い目で見あげた。
「ああ――喉が渇いている。ひどくね」
「じゃあ、すぐそこで」
感情を消した鈍い声色でこたえると、少女は傍らの公園へと革靴に縁どられた脚を向けた。

公園の奥まったあたりには、手ごろなベンチがあった。
入り口からの視界は人の背の高さほどの生垣に遮られて、閑静な住宅街の真ん中にありながら、
人の注意を惹かない死角となっている。
少女は重たそうな鞄を傍らに置くと、ベンチに腰かけて脚をくつろげた。
参考書がいっぱい詰まって変形しかかった鞄には名札が提げられていて、
「遠藤みずき」と、少女の名が整ったサインペンの筆跡で書かれていた。
「タイツ破きたいんでしょ?」
もの分かりのよい受け答えとは裏腹に、少女の声色はあくまでもぶあいそで、事務的でさえあった。
応えの代わりに八束は、少女の足許にかがみ込んで、
丈の長いスカートのすそからわずかに覗く黒タイツの脛に、唇を吸いつけた。
しつように這いまわる唇のあとを、飴色をした唾液が糸を引いてつづいた。
男が唇をなすりつけながら、自分の履いているタイツの舌触りを楽しみはじめているのを、
少女はしかめ面のまま受け止めている。
黒タイツ越しに、しっかりとした肉づきのひざ下をくまなく舐めまわすと、
八束はふくらはぎの一角を侵すように、ひときわ強く唇を圧しつけると、口の端に隠した犬歯で、おもむろにみずきの足許に食いついた。

「――っ!」
咬んだ瞬間、少女は声にならない叫びを洩らしたが、
声をあげることを恥じるかのように押し黙り、
男が吸血に耽るあいだ、じっと身を固くして、鋭い目線をあらぬ方へと投げている。
17歳の健康な血液が、吸血鬼の渇いた舌を潤して、喉に満ち、胃の腑に澱んだ。

二度三度と、男はみずきの左右の脚に代わる代わる咬みついたが、少女は頑ななまでに歯を噛みしめて、男の牙を受け容れつづける。
女学生の足許を覆うタイツやストッキング、ハイソックスを咬み破って愉しむという、
潔癖な少女には忌まわしいだけのはずの不埒な所作に、
明らかに嫌悪の情を交えながらも、彼女はひたすら沈黙を守り受け留めつづけてゆいった。

彼女の履いている黒のタイツは、艶も彩りもほど遠く、ただたんに分厚いだけの野暮ったい代物だった。
「あたしなんかを、どうして襲うの」
ある日少女は、八束に尋ねたことがある。
初めて襲われた、次の次くらいのころだった。
もっと可愛らしくて、靴下フェチな貴方が悦びそうなお洒落な靴下を履いている子がおおぜいいるのに――と言いかけたとき、
男はいった。
「あんたがクラスで一番知的な子だからだ」
少女は押し黙り、用意していた罵詈雑言を呑み込んだ。
そして、彼女の履いている野暮ったいタイツを舌でいたぶり咬み剥ぐことに熱中している男に求められるまま、
左右の脚を、ゆっくりと交互に差し出しつづけていった。

初めてのときはきっと、彼女の豊かな体形が目を引いただけだろうと、少女はおもっている。
きっとたくさん、血を獲れるから――
たしかにあの夜、男はひどく飢えていた。
塾帰りの彼女をこの公園に引きずり込むと、抗う制服姿を芝生のうえに抑えつけ、
無防備になった首すじに思い切り牙を降ろしてきた。
ジュッ!と鈍い音を立てて血が飛び散って、ブラウスの襟首を濡らすのを、彼女は感じた。
男は傷口に唇をあてがうと、ヒルのようなしつようさで彼女の血を吸い上げて、ゴクゴクと喉を鳴らして呑み込んでいった。
飢えている!とっさに彼女は直感した。殺されるのかと思った。
でもすぐに、吸血鬼との共存を受け容れているこの街では、吸血鬼に襲われても殺されることはないと教わったのを思い出していた。

この街に吸血鬼が出没するのも、
それと知りながら、窮乏した両親がこの街を選んだのも、
彼女はよくわかっていた。
だから――いずれはそうした者たちの毒牙にかかるとは、覚悟していた。
胸もとをまさぐる猿臂を拒みはしたものの、もはや逃れるすべはないと観念した彼女は、すぐに抵抗を諦めた。

結果的には、賢明な判断だった。

ひとしきり彼女の血を吸い取って落ち着きを取り戻した八束は、彼女に謝罪を告げて、彼女の生命を断つ意思はないと告げてきたのだ。
それでも、一定の凌辱行為は、忍ばなけれはならなかった。
その夜、歩みを進める彼女の足許を照らし出した街灯は、
スカートと同じ色調の濃いグリーンのハイソックスのリブを浮き彫りにしたように際だたせていて、
ハイソックスに包まれた豊かなふくらはぎは、吸血鬼をすっかり魅了してしまっていたのだ。

首すじからおびただしい血液を抜かれた彼女は、ほとんど意識もそぞろになりながら、
昼間のように明るい芝生のうえにうつ伏せにされて、
彼女の足許ををなぞるようにしつように舐めつけてくるる舌と唇で、
制服の一部であるハイソックスのしっかりとしたナイロン生地の舌触りを愉しませる羽目に陥ったのだった。

生気に満ちたみずきの血に、八束はしたたかに酔い痴れた。
豊かな肢体を脈打つ血液は飢えた吸血鬼の食欲をそそり、
食欲を満足させるとこんどは、みずきの着ている折り目正しい制服姿に劣情したのだ。
野暮ったい着こなしぶりに、吸血鬼はむしろ欲情していて、
濃い緑のハイソックスが真っ赤に染まるほど、みずきの足許に執着した。

その夜、飢えた吸血鬼を自らの血で存分に満足させた少女は、
自分の血を吸い取った男に付き添われて帰宅した。
不幸にして、父親は不在だった。
出迎えた母親は、貧血でもうろうとなった少女の傍らで抑えつけられて、
娘がハイソックスの脚を愉しませたのと同じように、薄地の肌色のストッキングを穿いた脚を弄ばれた。
みずきの野暮ったさはきっと、母親の質素な生活ぶりに影響されたに違いないと、
安ものらしいパンストを咬み剥ぐことに熱中しながら八束はおもった。
倹しい生活でもストッキングをたしなむ趣味のよさにも、好感をもった。
人肌恋しさに矢も盾もたまらなくなった八束は、みずきの傍らでその母親を犯した。
それ以来、母娘は代わる代わる吸血鬼に首すじをゆだね、血液を日常的に提供するようになっていた。


その日も下校途中のみずきを公園に引き込んで、野暮ったい黒タイツを咬み剥いでしまうと、
少女は恨めしそうな白い眼をして、あらわになった白い脛を見、タイツを破った男を見た。
「いつも思うけど、趣味よくないですよね」
ふつうなら。
吸血の愉悦に酔った少女たちや人妻たちは、こぞって彼に恍惚としたまなざしを向けるのに。
彼女には毒が効かないのか、血を吸われた後も、氷のように冷静だった。
まだ冬も浅いのに彼女が学校指定のハイソックスではなくてタイツを履いているのは、
手持ちのハイソックスをすべて、惜しげもなく咬み破らせてしまったからなのだと、八束はよく知っていた。
彼のためになん度もスカートのすそを汚すようになったみずきの母が、そう告げたのだ。

打ち解けない顔つきのまま、
それでも男に逢いつづけて、
望むほどに生き血を吸わせ、
好むほどにタイツを破らせ、
それが多分、彼女なりの心づくしなのだと――
八束は覚りはじめている。

もうじき卒業だよな。
八束はいった。
進学クラスに入ったこの娘はきっと、都会の大学を受験し、旅立ってしまうのだろう。
頼みがある――と、八束はみずきにいった。
何?
相変わらず、ぶっきら棒な相槌が返ってくる。
志望校に合格したら、いちどあんたを犯してもよいか。
男の予期に反して、少女はかたくなに、「だめ」といった。
そうか――
しんそこ残念そうに、八束はあらぬ方を見やった。

沈黙が流れた。

傍らの少女が珍しく、クスッと笑った。
がっかりしたみたいね。
求愛をこばまれたら、だれでもそうだ。
八束はこたえた。
求愛しつづけてるじゃない。
いつも求められて――そのたびにあげてるじゃない。
少女は恨めしそうに、いった。
やはり制服姿を辱められながら、うら若い血潮を吸い取られるのは、屈辱なのだろう。八束はおもった。
けれどもそれはちがった。
少女はいった。

いちどじゃ嫌。

え・・・?

何度も抱いてくれるというなら、愛されてもいい――少女はめずらしく羞じらいながら、告げている。
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