淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・
悔い改めた鬼畜。
2023年02月04日(Sat) 20:39:09
つ、鶴枝、、、っ!
樋沼謙司は悲痛な声をあげて、男ふたりの手ごめにされた妻を見た。
鶴枝の後ろから髪を掴まえて、
向かい合わせに立ちはだかるもうひとりに女の顔がよく見えるように、
力まかせにグイと頭を仰のけた。
ご婦人の髪をつかむものではない。
鶴枝の正面に立った未知の男は、仲間を冷静にたしなめた。
しかし、続けたひと言は、樋沼を戦慄させた。
礼儀を尽くせばきっとこの女(ひと)も、機嫌よくお前の恋人になってくれるだろう。
そういうつもりだったのか!?
樋沼は鶴枝を背後から羽交い絞めにしている男を見た。
彼は追川志乃生(しのぶ)といって、大学時代からの友人だった。
結婚式にも招んだから、鶴枝とも面識があった。
もともと鶴枝目当てに、ぼくたちを此処に招んだのか?
ぼくは・・・鶴枝をこんな目に遭わされるために、鶴枝を伴ってこの遠い街を訪問した というのだろうか??
追川が言われるままに鶴枝の髪から手を離すと、
未知の男はあとを引き取るように女の顎を捕まえて、おとがいをつよく仰のけた。
そして、女の首のつけ根を咥えると、がぶりと食いついた。
アアッ!
鶴枝が悲鳴をあげた。
男は女を抱き支えたまま、あふれ出る血潮をゴクゴクと飲みはじめた。
クリーム色のブラウスに、ボトボトと血潮が撥ね、むざんな斑点を不規則に散らした。
薄い唇から前歯をむき出しにして、鶴枝は苦痛に顔を歪めた。
しっかりと食いしばる前歯の白さが、樋沼の目に灼きついた。
ごくり・・・ごくり・・・
男が喉を鳴らすたびに、鶴枝は頬をヒクつかせ、眉を顰め顔色を翳らせてゆく。
鶴枝・・・鶴枝・・・
夫の呼ぶ声に応えるように、鶴枝は細っそりした掌に力を込めて、迫ってくる男の逞しい胸を弱々しく拒もうと試みたが、むだだった。
ふたりの男に挟まれながら、彼女は姿勢を屈め膝を崩し、なよなよとその場に尻もちを突いた。
支えろ。
吸血鬼に命じられるままに、追川が女の肩を支えた。
失血がこたえたのか、鶴枝は肩で息をしている。
吸血鬼は鶴枝のうす茶のスカートをひざまでたくし上げると、ふくらはぎに唇を吸いつけた。
肌色のストッキングがかすかに波打ちながら、恥知らずな唾液に塗りつぶされてゆく。
や、やめろ、、、
鶴枝の夫は、力なく呟いた。
うろたえ、悲嘆にくれる夫にはお構いなく、吸血鬼は再び牙をむき出して、鶴枝の脚に咬みついた。
パチパチと音をたてて、ストッキングが破れた。
鶴枝の下肢を彩る淡い色のストッキングは、卑猥な舌に舐め味わわれ、本来の用途にはない辱めを受けながら、破れ堕ちてゆく。
ストッキングを器用に剥ぎ降ろしてゆく吸血鬼の唇に卑猥な意図が籠められているのを夫は感じたが、もはやどうすることもできなかった。
鶴枝を手ごめにするまえに血をしたたかに吸い取られてしまった樋沼は、身じろぎひとつできなくなっていたのだ。
鶴枝の脚からストッキングを引きむしってしまうと、吸血鬼は彼女のうえに馬乗りになった。
追川は我が意を得たりとばかり吸血鬼の手助けをして、鶴枝の両肩を抑えつけた。
吸血鬼は鶴枝のブラウスを引き破り、スカートを腰までたくし上げた。
お願いだ、やめてくれぇ、、
哀れな夫のすすり泣き交じりの訴えも虚しく、吸血鬼はにんまりと満足そうな笑みを洩らすと、
逞しい筋肉に鎧われた臀部をスカートの奥の細腰に沈み込ませた。
片方だけストッキングに包んだ脚を切なげに足摺りさせながら、鶴枝は犯された。
下腹部にめり込まされた一物がしつように突き入れ引き抜かれ、彼女の奥底をくまなく汚した。
忘れられないセックスを体験させてやる。
吸血鬼のそんな意図が、
強く力を込めた猿臂やスリップ越しに突きつけられる筋骨隆々とした胸板、
それに重ね合わされた唇から容赦なく嗅がされる生々しくも熱い息遣いを通して、
鶴枝を圧倒した。
気がつけば、男の背中に腕をまわして、しがみついてしまっていた。
荒々しい吶喊に耐えかねてのこととはいえ、夫の目の前でほかの男に抱きついてしまったはしたなさに慄えながら、
男が無理強いに強いてくる激しい上下動に腰の動きを合せていった。
妻のふしだらを咎めるような夫の視線が、呪わしかった。
貴方が守ってくださらないからこんなことになったのよ、と言いたくなった。
しかし、屈強な男が二人、それも一人は吸血鬼という異常な状況で、夫になにができただろう?
彼にできたのは、妻に先だって瀕死になるほど吸血されて、仇敵に自分の妻を征服するための精力を与えたことだけだった。
お次は俺の番――
今度は追川が、鶴枝に迫った。
吸血鬼による凌辱に半死半生となった鶴枝のうえに、容赦のない追い打ちが加えられた。
同じく強姦であっても、相手が顔見知りであるほうが、罪の意識の生々しさは倍加する。
「こんどは人間どうし、仲良くしようぜ」
男はむごいことを言って、悔し気に歯噛みをする夫のまえで、その妻に迫った。
女はもうスカートしか身に着けていなかったが、豊かな胸を震わせながら、抱きつかれてゆく。
――貴男は主人のお友だちですよね?
ノーブルな細面に精いっぱいの批難を込めた眼差しを投げながらも、
もはや彼女の身体は彼女のものであって彼女のものではなかった。
お前たちは悪魔だ・・・
近寄ってきた吸血鬼に、樋沼は毒づいた。
ああ、確かにな。
吸血鬼はあっさりと、夫の悪罵を認めた。
よく視ておくんだ。
自分の女房がヤられるところなんて、めったに観られるもんじゃないぜ?
吸血鬼は夫の視線をその妻のほうへと促した。
呪うべき宴の坩堝にあって、鶴枝は理性を奪い尽くされて、夢中になっていた。
二人めの男と組んづほぐれつしながらも、突っ込まれた一物の齎す疼痛に耐えかねて、
柳眉を逆立て細っそりとした腰を激しい上下動にゆだね切ってしまっている。
交わし合う口づけは熱を帯び、ほどかれた黒髪を蛇のように上背に絡みつけながら、
本能のもまの吶喊を許すたび、その髪をユサユサと揺らしていた。
「あなた視ないで」という叫び声はいつしか、「あなた、視て視て!」に変わっていた。
大人しい彼女としては信じられないことに、大きいッ!と声をあげ、自分から暴漢に抱き着いてゆく。
慎ましく淑やかだった若妻は、夫の旧友を相手の交接に、耽り抜いてしまっていた。
どうだ、少しは気が晴れたか?
女を夫のまえに置き去りにすると、吸血鬼は男に訊いた。
ああ、かなりスッとした。
男は言下にそうこたえたが、すこし経ってから呟くように続けた。
あのだんなさんには、ちょっと悪いことしちまったな――
樋沼夫妻は、吸血鬼の主催する婚礼にそれとは知らずに招かれていた。
招いたのはほかならぬ追川で、彼自身もついふた月ほど前に、当地に住み着いたばかりだった。
移り住んでひと月と経たないうちに、男はこの土地の流儀を思い知る羽目になった。
夫婦ながら吸血された挙句、目の前で妻を犯されモノにされてしまったのだ。
さっき自分たちが犯したのと、まったく同じ経緯だった。
強気な追川は、自分一人がこのような目に遭うことに納得がいかなかった。
当地では妻を吸血鬼に差し出した男はべつの人妻を襲う権利を与えられたので、彼はさっそくその権利を行使することにした。
手ごろな知人夫婦を選んでこの街に呼び寄せて、コトに及ぶことを目論んだのだ。
自分の欲望を遂げるためには、経験者の協力が必要だった。
彼は自分の妻を愛人にしてしまった吸血鬼に、力添えを依頼した。
それが、さっきの一件だったのだ。
もともとあんたが悪いんだぞ。
追川は吸血鬼に、責任転嫁した。
もちろんだ。
吸血鬼はこたえた。
「あんたの奥さんは魅力的だからな、俺はひと目で、ヤるしかない、と思ったんだ。
だがこれだけは、言わせてくれ。
女を憎んだり侮辱するためのセックスは止めることだ。
お前はあのひとを欲しくて、此処に招んだんだろう?
あのひとが恋しいなら、友だちにそう言えば良い。
ただ踏みにじるだけのために招んだのなら、さっさと家に帰してやれ。
ついでに自首することを薦めるね」
そんな勝手な・・・
追川はそう言おうとして、止めた。
相手の言い草に一理を認めたのだ。
確かに妻は犯されて、やつのものになってしまった。
手段は邪悪だったが、妻に熱烈に恋したことは間違いない。
そして、今でも愛している妻は、彼のもとを去ることはなく、ともに暮らしている。
吸血鬼は追川夫人を犯しながらも、夫婦別れをしないよう配慮を重ねてくれていたのだ。
時折遂げられてしまう不倫を除けば、なに不平を交えることのできないほど、妻は自分に尽くしてくれていた・・・
「それに俺は、女を選ぶのと同じように、だんなのことも見極めたうえで手を出している」
吸血鬼はいった。
「自慢するな――」
追川は口を尖らせたが、徐々に落ち着きを取り戻していた。
どういうことだよ?
声を潜めて問う追川に、吸血鬼はこたえた。
「妻を襲われて興奮してしまいそうな、寛大なご主人をもつご婦人だけを狙っているのさ」
追川は、一言もなかった。
「あんたにも権利はあるから、いちどは付きあった。
だが、身体目当てに女をいたぶるだけのセックスしか考えないのなら、俺は手を切るぜ」
吸血鬼は真顔だった。
「わ、わかった・・・」
追川は観念したように、いった。
「俺は自首する。
樋沼夫人は独身時代の俺にとって、理想の女(ひと)だった。
でももう、取り返しがつかないよな。。」
追川はむしろ、サバサバとした表情になっていた。
「和美のことはよろしく頼む。
いまだから言うけど――女房を気に入ってくれたのがあんたで、ほんとうは良かったと思っていたんだ」
追川が起ちあがると、控えめにノックする音がした。
誰だ?とドアを開けると、そこには樋沼夫妻が佇んでいた。
追川は、きまり悪そうな顔つきになった。
樋沼も、さらにきまり悪そうな顔をしていた。
鶴枝はその樋沼に隠れるようにひっそりと立っていて、夫の肩越しに追川を見つめている。
「さっきは――」
追川が言いかけると、樋沼がそれを遮るように、いった。
「追川くん、迷惑でなければ、その・・・うちの家内の恋人になってくれないか?」
え?
追川はあ然とした。
「申し訳ありません、お二人の話を立ち聞きしてしまいました。はしたないことです」
鶴枝は小さな声で頭を下げた。
「あのあと、主人と話し合ったんです。
わたくし、主人以外の男性は、初めてでした。
あまりのことに気を呑まれて、つい夢中になってしまいましたが――
たぶん、夜のお相手の相性は、追川さんととてもよろしいと思ってしまったんです。
主人は、わたくしと別れたくないと言ってくれました。
ですので――恋人ということでいかがでしょう?
ひとりの人妻として、恥ずかしい申し出だとは重々承知しております。
でも――貴男の身体が忘れられなくなってしまったの。
吸血鬼様も、よろしかったら・・・毎日のお相手はいたしかねますけれど、お尽くししたいと存じます」
樋沼が妻に代わった。
「情けない話だけど、きみには完敗だ。
昔はぼくのほうがモテたつもりだけど――本丸を攻め取られちゃったね。
生真面目な鶴枝をあそこまでたらし込んじゃうなんて、お見事だった。
これからはきみのことを、男として尊敬するよ」
目を白黒させている追川に、吸血鬼はいった。
「だから言ったはずだ。俺は狙いをつけた女の亭主まで観察すると」
「鶴枝って、呼び捨てにしてもかまわない?」
鶴枝はにこやかに答えた。「ハイ、追川さま」
追川はきょうにそなえて、入念なリハーサルをしたのだと打ち明けた。
妻の和美を鶴枝に見たてて、二人の間に挟んでどんなふうに料理するかの手順を決めていたのだ。
「どうりで手早いわけだ」
樋沼はあきれた。
「奥さんの髪を掴んだりして、申し訳なかった」
追川は謝罪した。「人妻を恋人にするなら、もっと相手を気遣って」と、妻に忠告されたともいった。
「きみ自身、このひとに奥さんを犯されていたんだね」
「同病相憐れむということさ」
追川はこたえた。
樋沼は鶴枝に促されて、口ごもりながらいった。
「きょう鶴枝を連れてきたのは――
さっきの”儀式”をもう一度やって見せて欲しかったんだ」
視るのがくせになりそうだ――樋沼はそういって笑った。
鶴枝は真新しいスーツを着ていた。
「このお洋服も、堕とすの楽しんでくださいね」
そして、真新しいストッキングを通した脚を、上目遣いの媚びを含みながら、差し伸べてきた。
「わたし、わたくしね――」
鶴枝は羞ずかしそうに、いった。
「髪を掴まれるの、嫌じゃないの。
わたくしを主人の前で、さっきみたいに荒々しく引きずり回してくださいませんこと?」
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