淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・
彼氏にバラした、処女喪失。
2023年02月19日(Sun) 01:33:10
浩美には、彼氏がいる。
同じクラスのけんじは、自他ともに認める関係だった。
お互い初体験がまだなのが、不思議なくらいだった。
原因はどちらかというと、けんじの側にある。
浩美がなん度も大胆になるたびごとに、彼は尻込みしてしまうのだ。
まだそこまでの責任は取れないし。
それが彼の言い草だった。
身体の奥深くの疼きを覚えはじめた若い肉体をもて多少あましながらも、それでほ浩美は満足だった。
けんじが浩美のことを大切に考えている証しだと思ったからだ。
周りの女子たちは、経験者がちらほらしていた。
それ以上に、街に横行し始めた吸血鬼の毒牙にかかるものが増えてきた。
身体を許した彼氏の影響力もさることながら、
吸血鬼の支配力は、それを軽く上回った。
浩美の親友の環(たまき)は、彼氏がいるのに、吸血鬼を相手に処女を捨てていた。
おかげで、彼氏とヤルときには大胆に振る舞うことができたと、あとから聞かされた。
相手が吸血鬼じゃ、どうしようもないな。
恋人の初めての男になり損ねた彼氏は、かなり残念がっていたけれど。
環の身体を自由にできる特権を与えられたことに、より夢中になっていて。
彼女のしたことを裏切り行為とは受け取っていないようすだった。
でもねぇ、と!環は声をひそめる。
あいつに、ヘンなこと、頼まれちゃっと。
なに?
気乗りしない口調で相槌のように返すと、環は聞いて頂戴よ度言わんばかりに、なおも声をひそめてくる。
お前の処女をもらえないのなら、せめてお前がなくすところを視たかった。
今度、再現してくれよ。
ええ〜!?
冷めた性格の浩美もさすがに声をあげてしまい、
シッ!と親友にたしなめられる始末だった。
それで、、、まさかリクエストに応じたの??
環は少しのあいだ口ごもっていたが、ためらいながらも頷き返してくる。
えー!あり得ない!!
あのときは、あわてて口を抑えたものだが。。
その浩美が、公然の彼氏を差し置いて、貴之とヤッてしまった――
血を吸われていたという特殊な状況――とは言いながら。
あのとき浩美は冷静だったし、相手のことを叱ったり詰ったりさえしていた。
そのいっぽうで、相手の好みに合わせて、脛までのハイソックスをキッチリと引き伸ばして、くまなく舐め尽くさせさえしてしまっていた。
いちど咬まれた首すじにキスも許したし、自分の血の着いた唇と唇を重ね合わせて、血の香りを嗅ぎながらのディープ・キッスにまで応じてしまった。
ショーツを脱いで意思表示をしたのも、自分のほうからだった。
たかがハイソックスの丈に目をつけてきただけの男にそこまでさせて、
さいごにはキッチリと、火照りを帯びて逆立った一物を、自分でも届かない秘奥まで刺し込まれてしまったのだ。
けんじがいうように、「責任」の問題をうんぬんするのなら、
彼女は越えてはいけない一線を、あっさり飛び越えてしまったことになる。
もしもけんじのお嫁さんになるとしたら――これはやばいわよね、、、?
ちょっと付き合って。
放課後貴之をつかまえて、浩美はぶっきら棒にいった。
けじめ、つけてくれるわよね?
貴之は、頷くしかなかった。
けんじは彼にとっても、仲の良いクラスメートだったから。
貴之を伴ってきた恋人にふしんそうな目を向けるいとまもなく――
あたし、この人に血を吸われてるから。
貴之に対してぶっきら棒な彼女は、どうやら恋人に向かってもそうらしい。
「う・・・!?」
なんと返事をして良いのか見当がつかなかったらしく、けんじは喉にものでも詰まらせたようななま返事をした。
「だれかに噛まれたのは、わかるって」
睨むように迫ってくる浩美にたじたじとなったのか、窮したように彼はいった。
たしかに、お気に入りのハイソックスは丈足らずで、咬まれた痕のふたつの赤黒い斑点は、まる見えになっていた。
それを浩美は臆面もなく、だれの目にも明らかに、くっきりと外気に曝していた。
まるで見なさいよと誇示するばかりに――
「でも、相手が貴之とはな・・・」
男ふたりは困ったように顔を見合わせる。
「なん度も咬まれてるのは見て分かったし、気の強い浩美のことだから自分の意思でそうさせてるのは察しがついたけどさ。。」
浩美はなおも、挑発するように告りつづける。
「咬まれたさいしょの晩にさ、もう犯されちゃった。
抵抗しても逃れられないはずだけど。
この人ったら意気地なしだから、本気で嫌がったらきっと、逃げ出せたと思う。
でも、あたしのほうからパンツ脱いだの。
なぜだかわかる?
あんなミステリアスな迫りかたをされて、そのまま何もなしに終わるなんて、つまらないと思ったの。
生き血をたっぷりと啜り取られて、あたしの本音や心の底のことまで、見通されたような気分になって。
生命の欠片を口に含まれるって、とても濃いつながりだって思えちゃって。
けんじには、悪いことしたと思ってる。
でもね、したことはあんまり、後悔してないかな・・・」
浩美の一方的な告白に、けんじは彫像のように立ち尽くしていた。
「あの・・・その・・・」
ヘドモドしている彼を引き立てるように、浩美はいった。
「訊きたいことわかってるんだ。
感じちゃったのか?イカサレちゃったのか?っていうんだよね??」
「あ・・・うん」
けんじはみっともなく頭を垂れながら、肯定している。
「さいしょは血も出たし、痛かっただけ。
ヤれて満足としか、思えなかった。
でもね、なん度も咬まれて、なんどもヤられているあいだに、キモチよくなった。
イッちゃうようになった」
自慢たっぷりの自分の彼女から目を離すと、けんじは貴之を見た。
「最近オレと目を合わせないのは、そのせいか?」
「そのせいだ」
棒読み口調で、貴之はこたえる。
「さすがに悪りぃなと思ってさ――でもやめられないんだ」
「お前も、浩美が好いってことだな?」
「浩美の身体に惚れちまった」
貴之はいった。
どちらもボソボソと、暗くて低い声色だった。浩美が噴き出してしまうくらいに。
気勢をそがれたふたりは、起こった事実を確かめ合うばかり。
「で・・・?」
「で・・・」
果ては重たい沈黙で、会話さえ途切れてしまった。
「これじゃ喧嘩にならないわね」
がっかりしたように、まず浩美が重たい沈黙を破った。
「喧嘩させる気だったのかよ??」
男ふたりは、口を揃えて声をあげた。
「たしかに――もしも浩美をオレから奪うつもりなら、相手になるけど。。」
けんじが初めて、しっかりとした顔つきになった。
「いや、そんなつもりはない」
「つもりはないって――」
「浩美が嫁に行くのは、俺のところじゃなくてお前のところだろ?」
「それはそうだけど――それでいいのか?」
「俺はそれが良いと思ってる」
「オレの女に手を出すなって言うべきなんだろうな、ここは一応」
いかにも気乗りのしない口調でけんじが口を開くと、
「俺がいさぎよく手を引くよって、言うべきなんだろうけどな、ここはやっぱり」
貴之も気の抜けたようなあいさつを返すばかり。
「手を出しても構わないって言ってくれないか」
「それはさすがに、言えないな」
「でも俺はたぶん、ガマンできないぜ?」
「できる限り、ガマンしてくれないか?」
「できる限りはもちろん、ガマンするつもりだけどな」
「できない場合もあると・・・?」
「それはお互い、聞きっこなし・・・」
あ、駄目!と、浩美が割って入った。
「あたしがだれとどう付き合うかは、あたしが決めるから」
ふたりは、げっそりとした顔つきになった。
「けんじのための純潔――奪(と)られちゃったときのこと再現してあげようか?」
「あ、ウン」
思わず答えてしまったあとで、いくら両手で口をふさいでも、もう遅い。
あっという間に貴之に、がんじがらめに縛られてしまった。
くしくもそこは、彼女が初体験を遂げた教室だった。
そう――二人は自分のクラスの教室で結ばれたのだ。
「こうだったよね?」
「こんなふうだったな」
浩美が不意打ちに教室の壁に抑えつけられるところ。
目も止まらぬ速さで首すじを咥えられ、咬まれてしまったところ。
ブラウスにほとばしった血が、バラの花が咲くように拡がるところまで、けんじの前で忠実に再現される。
腕を突っ張って抵抗したけれども、失血でだんだんと力が抜けて、とうとうもう一度うなじを咬まれ、ゴクゴクとやられてしまったところ。
ハイソックスの口ゴムの少し上あたりを、すはだに唇を直接あてて咬みついて、
静かに喉を鳴らして啜り取ってゆくところ。
ふたりが折り重なって、勁(つよ)く逆立ったぺ〇スが制服のスカートの奥に忍び込んでいって、
迫ってくる逞しい胸をわが身から隔てようと、彼女は腕を突っ張り、唾を吐きかけてまで抗いつづけて、
そしてさいごに、
ずぶり――と突き刺されてしまって、声も出ないほど感じていって――。
こんなふうだったんだ・・・
こんなふうだったのよ・・・
にんまりと笑んだ浩美の唇を、貴之のそれがふたたび塞いだ。
狎れあったディープ・キッスに熱中するふたりを、けんじはいつまでも見守りつづけて、
そしてその夜ひと晩、彼の未来の花嫁がよがり声をあげつづけるのを、聞き通していた。
披露宴の最上段に。
しゃちこばったけんじと取り澄ました浩美とが、肩を並べている。
「ほんとうは。未練があったんじゃないの?」
背後からヒカルが、毒を含んだ囁きを注いできた。
「いや、これで良かったんだ」
貴之は、振り返りもせずにこたえた。
あの純白のウェディングドレスの裏側を、自分の淫らな粘液でなん度も染めたことも、
いまでは楽しい、一コマの夢――。
「落ち着いたらまた、連絡するわね」
とりあえずは彼女の、そんなささやきをアテにしてみよう。
そんなときにはたぶん、けんじはわざと出張に出てしまうのだろう。
それとも案外、あの夜みたいに、どこかの物陰から、二人が熱い吐息を交わし合うところを、のぞき見してしまうのだろうか・・・?
あとがき
いちおう前作とともに、連作ものです。
発想のきっかけは・・・
たまたま行きずりに、3人連れの女子高生を見かけましてね。
うち2人はタイツ、でも真ん中の子がこの季節に、ブラウス1枚、ミニの紺のスカートの下、黒のオーバーニーソックスを履いていたんです。
インパクトありましたね・・・
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