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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

ご近所の弔問先で夫婦ながら亡者に襲われ妻が犯された件

2023年05月19日(Fri) 21:05:45

この街に吸血鬼がいるといううわさは、赴任する前から知っていた。
けれど、実際に足を踏み入れてみると、どこにでもあるようなごくふつうの地方の街だった。

忌中の回覧板がまわってきた。
はす向かいの色町さんというお宅で、ご主人が亡くなったらしい。
回覧板を持ってきたお隣の奥さんは、お通夜にいらっしゃいますよね?と念押しするように俺に言った。
「やっぱりこういうときには、行かなくちゃならないもんなのかなあ――」
俺が言うと女房の華菜は、
「しょうがないじゃない、ご近所づき合いが大切だっていうんだから」
と、相槌を打ってくる。
どちらも、気乗りしないことが見え見えの問答だった。

どうやら吸血鬼にやられたらしい――と、お隣の奥さんは声をひそめて教えてくれた。
ここの吸血鬼は、死ぬほど吸わないはずなんですけどねぇ・・・と、ふしぎそうに首をひねっていた。
ふつう吸血鬼といえば、人の血を吸い尽くして殺してしまうか、自分の仲間にしてしまう。
そんな固定観念を持っていたのだが、どうやらこの街に棲む吸血鬼は、そうではないらしい。
「人の生き血を純粋に愉しんで、舐め味わうんだそうですよ。
 あらいやだ、私ったら!変なこと言っちゃって。忘れてくださいねぇ」
奥さんはどことなく楽しげにそういうと、そそくさと背中を見せて自分の家のほうへと戻っていった。
早くも喪服に着替えていた彼女の足許を、黒のストッキングがなまめかしく透きとおらせていた。

夕刻になるとそれでも俺たちは、喪服を着て色町家を訪問した。
いちどか二度くらいしか顔を合わせていないはずのご主人の顔は記憶が定かではなく、
遺影にも見覚えがなかった。
ひつぎの前には喪主である奥さんと息子さん、それだけしかいなかった。
「あらいらしたのね」と愛想よく振舞っていたお隣の奥さんも、いつの間にか姿を消していた。
ちぃ―――ん。
お線香の匂いとともに鉦を鳴らす音がひっそりと響いた。
それを合図に、なんとしたことか、ひつぎのふたが突如として開いた。
なんと、死んだはずのご主人が、白装束のまま起き上がったのだ。
鉛色の顔で、目だけがランランと輝いている。
えええええっ!
俺はびっくりして、縮みあがってしまった。女房を逃がすのさえ忘れた。
ご主人は俺にやおら飛びかかってきた。
首のつけ根に痛みが走った。
なんとしたことか、ご主人は俺の首すじを噛んで、血を吸い上げ始めたのだ。
キャアッ――ッ!
華菜も思わず悲鳴を上げたが、組んづほぐれつする二人の男を前に、どうすることもできない。
グチャグチャと汚い音を立てて血を吸い上げられながら、
俺は貧血を起こして、その場にひっくり返っていた。

つぎの獲物は、いうまでもない、女房の華菜だった。
華菜は黒のストッキングの脚をすくみ上らせて、俺が血を吸い取られるのに目を見張っていたが、
俺がぶっ倒れてしまうと同時に、自分も尻もちを突いて、その場に動けなくなってしまった。
亡者と目を合わせてしまった華菜は、狼狽して部屋から逃げ出そうとした。
四つん這いになって、這う這うの体なのだ。
背後からすぐに、亡者に腰を抱かれて圧し伏せられた。
うろたえて手足をジタバタさせる華菜を抑えつけて、首すじに唇を吸いつけていった。
俺の血が撥ねたままの唇が、華菜のうなじを這った。
俺は助けを求めるように遺族のほうを見たが、彼らは姿を消していた。
ああ――ッ!
悲鳴一声、華菜はうなじに喰いつかれ、声と同じくらいの勢いで、血潮が畳に飛び散った。

キュウッ、キュウッ、くいッ、くいッ・・・
押し殺すような音を立てて、華菜の血は亡者の欲望のまま吸い取られてゆく。
俺は華菜を助けようと焦ったが、手足がいうことを聞かない。
失血で、すっかり痺れてしまっていたのだ。
どうすることもできないままに、みすみす華菜の血を吸われるがままになってゆくのだ。
やめろ・・・やめろ・・・華菜を殺すんじゃない!
叫んだつもりが、かすかな呟きにしかならなかった。
けれどもそれは、相手の耳に届いたらしい。
亡者はこちらをふり返った。
顔色が、さっきの薄気味悪い鉛色から、ずっと血の気を帯びていた。
そういえば、一昨日夫婦で買い物に出た帰りに、この人とは会釈をし合ったっけ。
化け物の顔が、血の気が戻っただけで、隣人のそれにたやすく変換した。
その血色は、俺たち夫婦の身体から吸い取ったものに違いないのだ。
おぞましさに、慄(ぞっ)とするのを覚えた。
「こ、殺さねぇ・・・」
化け物はうめくように、いった。
え?と訊き返そうとすると、なおも呟いた。
「あ、ありがたい・・・」
え?
俺は思わず、訊き返してしまった。
ひとの女房をつかまえて生き血を啜っておいて、「ありがたい」とは何事だ!?
けれども俺は覚っていた。
噛まれた傷口に浸潤するように、毒液が身体の奥にまでしみ込んできて、
男の意図をありありと、伝えてきたのだ。
男はせつじつに、俺たち夫婦の血を欲していたのだ。

男はすぐに俺から視線を逸らすと、すぐさま華菜に注意を引き戻していった。
華菜は負傷しながらも、手の力が緩んだのをよいことに、無体な抱擁から抜け出そうとしていた。
男は華菜の脚をつかまえ、抑えつけた。
肉づき豊かなふくらはぎが、薄手の黒のストッキングに映えて、ジューシーに透きとおっている。
「うふっ、エエな、エエのお・・・」
男はうわ言のようにそう呟くと、華菜のふくらはぎに唇を吸いつけてゆく。
唇の端から洩れた唾液が、ストッキングの表面に散った。
「ひッ!」
華菜の呻きが、恐怖に引きつった。
男は華菜の脚をストッキングのうえからヌルーッと舐め味わうと、
再び牙をむき出して、華菜のふくらはぎに喰いついた。
「ギャッ!」
華菜の悲鳴は、お世辞にもきれいなものではなかった。
圧しつけられた唇の下、ストッキングにツツーッと裂け目が拡がって、地肌の白さを見せつけた。
男はご満悦で、華菜の血を呑み耽っている。
ごくッ、ごくッ、ごくッ・・・
飲まれているのが女房の血でなければ、じつに豪快な飲みっぷりといえてしまいそうなほど、
男の喉はじつに旨そうに、華菜の血にむせ返っている。
「やめて、やめて下さい、お願いしますッ――」
華菜の訴えはその場に居合わせただれにも聞き届けられず、
しばらくの間は華菜の血で旨そうに鳴る喉鳴りだけが、部屋を支配していた。
男は、華菜のうら若い血液を、ひたすら楽しんでいた。

「誠に申し訳ございません」
傍らには、姿を消したはずの奥さんが戻って来ていた。
「主人が生き返るには、どうしても人さまの生き血が必要だったのです。
 それでどうしてもと、お呼び立ていたしました。
 お隣の奥さまも、じつは同罪ですの」
見ると、回覧板を届けてくれたお隣の奥さんも、部屋の隅に座って、きまり悪そうに会釈を投げてくる。
「さ、わたくしたちもお相伴しましょ」
喪主の奥さんに促されて、お隣の奥さんも喪服のスカートを引き上げて、黒のストッキングの太ももを露わにしてゆく。
「お相伴」とはこの場合、逆の意味だろう。
けれどももしかすると、「血を吸う」側だけが味わっているのではなく、
「血を吸われる」側も、なにかを得ているのかもしれない――そんな馬鹿な!俺は自分の妄想を、慌てて打ち消した。

「若奥さま、もうご無理ですよ。いくらお若くてもそれ以上いっぺんに飲ませちゃったら身が持たないわ」
喪主の奥さんはご主人を華菜から引き離すと、「こんどはこちら」と、
追いやるようにお隣の奥さんのほうへとご主人の身体をのしかからせてゆく。
引き上げられた重たい漆黒のスカートのすそから覗いた太ももは、素人の奥さんとは思えないほどなまめかしかった。
ご主人は、お隣の奥さんの腰を抱き寄せると、黒ストッキングの太ももに唇を吸いつけた。
パチパチと微かな音をたてて、ナイロン生地がはじけていった。
「うッ――!」
お隣の奥さんがおとがいを仰け反らせる。
ゴクッ、ゴクッ、グビッ・・・
華菜のときよりもさらに貪欲に、ご主人はお隣の奥さんの生き血を需(もと)めた。
奥さんがその場でぶっ倒れてしまうと、ご主人は喪服のブラウスを引き裂いて、
その下のブラジャーまで剝ぎ取って、乳首を口に含み、ぞんぶんに舐め味わってゆく。
もはや、彼の欲求が生き血だけにとどまらないことを見せつけてゆくのだった。

「どうぞこちらへ」
喪主の奥さんは、蒼ざめた顔で茫然としている俺たちを、隣の部屋へと招き入れた。
「この街に来てまだ間もないので、びっくりされたことでしょうね。
 でもこのあたりでは、こういうことよくございますの。
 主人がおふたりの生き血を頂戴した御礼代わりに、このあたりの慣わしをお伝えしておきますね」
差し出されたメモには、こんなふうに書かれていた。

汀 憲継
 色町若菜
   晴雄
   凛太
 伊香堅司  
   布美子(お隣の奥さま)

色町晴雄
 伊香布美子
 寺澤 晃
   華菜

これは・・・?
俺が声をあげると、奥さんはいった。
「この汀憲継というのが、おおもとの吸血鬼です。
 そうそう、ご自宅のお向かいさんですね。
 それがわたくし色町若菜を襲って男女の関係をして、ことのついでに主人や息子の血も吸ってしまいましたの。
 幸い息子の時は手加減してくれましたが、主人のときはつい吸いすぎちゃって・・・こんなことになりました。
 エエ、主人は自分の妻を犯した男に、生き血を吸い尽くされてしまったのです。
 じつは主人、前々から伊香さんの奥さまと不倫してたんですが、なにしろご近所でしょう?
 汀さまは伊香家のご夫婦も狙ったのです。
 でも――汀さまは伊香さまの奥さまに主人のことを取り持ってくれて――
 汀さまがご主人の血を吸っているあいだに、布美子さんしっかり浮気を楽しんでいらっしゃるのだわ。
 わたくしですか?わたくしは汀さまが時おり訪ねてくださるだけで満足なのです。
 幸い、主人とも関係は続いておりますし。
 でも、こんどは血を吸い尽くされてしまった主人のために、新たな血液の提供者が必要になったのです。
 血を吸い尽くされてしまっても、
 ひと晩明ける前にだれかの血で身体を充たすことができたら、吸血鬼にならずに済むの。
 主人は吸血鬼になるよりも、自分も血の提供者で居つづけたいと望んだので、
 (変わっておりますでしょ?自分の妻を犯した男に血を吸われたがってるなんて!)
 布美子さんに手伝ってもらって、おふたりをお招きしたのです。
 ひどいやつだとお思いでしょうか?
 でもここに棲んだ以上、いつかは必ずだれかに襲われてしまいますもの。
 どうせなら、お互いご近所のほうがなにかと便利ではないですか。
 あら、あら」
最後のひと言は、部屋の向こうの痴態に向けられたものだった。
「御満足ぅ・・・?」
妻の声に色町氏はウムと応じて、こちらの部屋へとあがり込んできた。
「お前も――」とだけ言うと、
奥さんはすべて心得ているらしく起ちあがって、黒のストッキングの脚を差し伸べてゆく。
ご主人が足許に抱きついてきくると、ためらいもなくストッキングを食い破らせて、
喉を鳴らしながら自分の血を飲み込んでゆくのを、ちっとも騒がず見おろしていた。
しつような愛撫は、両脚に加えられた。
奥さんの白い脛には、いびつによじれた帯のようになったナイロン生地の残骸が残るばかりになっていた。
「これで皆さん、おあいこね」
奥さんは軽く笑って、ストッキングをむざんに裂き取られた脚を見せびらかす。
華菜も、あちらの部屋でのびている隣の奥さんも、ストッキングを派手に裂かれてしまっていた。
女三人は、互いに顔を見合わせて、きまり悪げに笑った。

ご主人はなおも目を血走らせていたが、俺と目が合うと、いった。
「突然で悪かった。ぢゃがもう少しだけ、協力してくだされ」
え――?
俺が怪訝そうな顔をする間もなく、ご主人がのしかかってきた。
たたみのうえに抑えつけられた俺は、再び首のつけ根を食い破られて、
色町家の畳を自分の血で濡らした。

ご主人が俺を放して起きあがるときにはもう、
俺は貧血で頭をクラクラさせてしまっている。
「これでよしと」とご主人は呟くと、こんどは再び華菜の番だった。
華菜は、着てきたジャケットを脱ぎ捨てて、ワンピース姿だった。
四角い襟首に縁どられた胸もとの白さに惹きつけられるように、ご主人は華菜の肩に猿臂を伸ばしてゆく。
華菜は怯えた顔つきで、失血に苦しむ俺と、迫ってくるご主人とを等分に目をやっていたが、
「あなた、だいじょうぶ?」
と俺に身を寄せようとしたところをつかまえられて、またも首すじを噛まれてしまった。
「ああーッ!」
なん度めかの絶叫が客間に響いた。
「若けぇ、若けぇなあんたの奥さん――活きが良くって、気に入ったです」
敬語交じりのため口に、害意は感じられなかったけれど。
彼が俺の目の前で女房の首すじに噛みついて血を啜っていることだけは確かだった。
「やめろ、やめろ、放してやってくれ・・・」
俺は声も切れ切れに訴えたけれど、
「そうはいかねぇんだ、今夜は特別な夜なんだ」
と、ご主人はくり返すばかり。
「そうなのよ、特別な夜なのよね」
向こうの部屋から移ってきたお隣の奥さんは、犯された凄惨なままの姿で、ご主人を弁護する。
ブラウスは引き破られ、片肌があらわになっていた。
ご主人はなおも、華菜に迫った。

華菜は壁を背負う格好になって、もう逃げられなくなっている。
「奥さん、悪りぃが、もう少しだけ脚をイタズラさせていただくぞ」
厚かましくも、華菜の穿いている黒のストッキングを、なおもいたぶり抜きたいらしい。
華菜は怯えた顔で相手を見つめると、ちょっとだけ俺のほうへと謝罪するような目線を投げて、
やがておもむろに、あきらめたように、自分のほうから、ツツッ・・・と脚を差し伸べてゆく。
え?おい!?なにをしているんだ!?
俺は思わず声をあげようとしたが、喉が引きつって声にならなかった。
華菜が差し伸べたのは、まだ嚙まれていないほうの脚だった。
男は華菜のふくらはぎに舌を這わせると、
「エエ舌触りのパンストぢゃ」と、しんそこ嬉しげに華菜の脚を舐めまわしてゆく。
女ふたりは興味津々、華菜の受難に見入っていて、同性の危難を救おうとするけしきはみせない。
「破ってもエエな?」
わざわざ念を押して、華菜が小さく頷くのを見届けてから、
男は尖った歯をむき出して、華菜の脚の輪郭を犯した。
涙の痕のように、ツツーッと伝線がつま先まで走ってゆく。
キュウッ、キュウッ・・・と、ひとをこばかにしたような音を立てて、華菜の血は吸われた。
固く瞑られた華菜の瞼から、涙があふれた。
「あら、あら、かわいいわぁ」
喪主の奥さんが、はしゃいだ声をたてた。
「ほんとう――あたしもさいしょはそうだったのよ」
「アラ、わたくしもですわよ」
女ふたりは、楽し気に言い争っている。
その間に、男は華菜のふくらはぎにも、太ももにも、ワンピースごしに腰やお尻にも咬みついてゆく。
熱っぽい接吻を迫らせるようなやり口だった。
そして最後にもう一度、首すじに喰いついた。
意外にも、華菜は叫び声をあげなかった。
「あァ・・・」
かすかに洩れた吐息に、どこか聞き覚えがあった。
そして、慄っとした。
夫婦のベッドでアノときに洩らす吐息と、全く同じだったのだ。

華菜の恰好の良い脚から、黒のパンストがズルズルと引きずり降ろされてゆく。
無念そうに歯噛みをしながらも、華菜は相手の欲求に応えて、
パンストを脱がせやすいようにとさりげなく、脚の向きを変えていった。
ショーツも黒だった。
男は華菜の股を軽くおし披(ひら)くと、ショーツのうえからおもむろに唇を吸いつけていった。
ちゅるっ、じゅるっ、ぢゅるううっ。
接吻をくり返すたび、音が露骨でしつようになった。
薄いショーツのなかで、華菜の陰毛の一本一本が、恥知らずな唾液に濡れそぼっているのだろう。

目のまえでここまで夫権を侵害されながら、俺はなぜか腹を立てていなかった。
なぜだ?華菜が目の前で犯されようとしているのに――
首すじにつけられた咬み痕が、またもずきん!と強く疼いた。
そうだ、こいつのせいだ。
操を踏みにじられようとしている華菜の戸惑いよりも、俺はむしろ、
夫の前で人妻をモノにする特権を行使しつつある吸血鬼のほうに共感を感じ始めている――

いつの間にか。
華菜はワンピースの後ろのファスナーを降ろされてしまい、黒いブラジャー一枚になっていた。
電灯に照らし出された白い肌が、なめらかに輝いている。
たしかに――咬みつきたいというやつの気持ちが、いま痛いほどわかりはじめていた。
整然とした肌理をした、つややかに輝く白い素肌を、むたいに食い破り醜い噛み痕を刻印する。
それがどんなに楽しいことか、傷口の妖しい疼きが、刻々と伝えてきた。
「ご主人様、よかったですわね。ご自分の奥さんが初めて犯されるところを御覧になれるなんて」
喪主の奥さんが、ゆったりと言った。
自分の亭主が人妻を犯そうとしている場に立ち会っているとは思えないほど、のどかな声色だった。
口ぶりからして、皮肉や冷笑ではなさそうだった。
しんそこ、妻の貞操やぶりをいっしょに祝うことができる幸運を悦んでくれているらしかった。
この連中の貞操観念は、俺には理解できない――俺はなんとか、そう思おうとした。

男は、華菜のブラジャーとショーツに手をかけると、ピーッ、ピーッと鋭い音を立てて引き破くと、
乳房と秘部を同時に無防備にさらしてしまった。
「ご主人悪いね、今夜は楽しませていただくよ」
それが俺に対するご主人の、さいごの礼儀だった。
「ひーっ」
ご主人はにょっきりとふくれあがった一物を手にすると、それを華菜の股間に忍ばせてゆき、
悲鳴をあげる妻にのしかかって、こともなげに腰を淪(しず)め、妻を狂わせていった。

お茶の間に、母親の声があがった。
「凛太さん、もうお勉強はいいわ。こっちきて御覧なさい。
 母さんのときは嫌だったろうけど、よその奥さんだったら良いんじゃない?
 しっかり見て勉強するのよ」

十代前半の男の子にとって、刺激的すぎる勉強だったはずだ。
「ちょっとあたし、面倒見てくる」
お隣の奥さんが座をはずして、目を血走らせて階上の勉強部屋に引き取った凛太のあとを追った。
発育してしまったぺ〇スを揉んで、出してあげるのだという。
「時々飲んでもらっているみたい」
奥さんは、独り言のように、おそろしいことを口にした。

華菜も俺も、茫然として座り込んでいた。
さっきまで華菜は、豊かなセミロングの黒髪をユサユサ揺らしながら、ご主人と組んづほぐれつしていた。
さいしょはおずおずとだったが、一度刺し貫かれてしまうと、もう止め処がなかった。
「さいしょが好(よ)すぎたの、だからといって――していいことと悪いことがあるわよね」
華菜はうわ言のような口調で、それでもしきりに恥じていた。
「恥ずかしいのはこっちもいっしょだ」
俺は素直に応じていた。
「お前が夢中になってるの視て、興奮しちまった」
「あら、あら」
恥ずかしすぎる告白に対して、華菜は寛容だった。
ズボンがびしょびしょになっているのを見て、
「早く、クリーニングに出さないとね」
と、主婦らしい心配をした。

「若奥さん、ご主人、布美子さん、わたくし。
 四人もの方の血を思う存分吸い取らせていただいたおかげで、主人は死なずに済みました。
 心から御礼申し上げます」
改まった口調で、色町の奥さんがいった。
三つ指ついて頭まで下げられて、「いやいや・・・」と俺たちまでもが恐縮してしまい、
華菜にいたっては「ふつつかでした」とまでこたえてしまっている。
「ふつつかなんかじゃねぇよ」
男がいった。
「旦那さん、時々でエエから、華菜ちゃんの血ィ吸わせてもらえんかの?
 わしは吸血鬼にはならずに済んだが、嗜血癖は身に着いちまっておるから、
 これからも布美子さんのことは、日常的に襲うことに決めておるんぢゃ。
 ぢゃが、それだけでは足りんて・・・もうお一人、襲えるおなごがおれば、安心して暮らせるというもの。
 うちの家内には汀さまがいるから、亭主といえども手ぇ出せんのでな・・・」
それはなんとも気の毒に――と思ったが、
いちばん「気の毒」なのは、妻を吸血され犯された俺のほうではないだろうか?
ご主人は、俺の想いを汲み取っていた。
「あんたらご夫婦のご厚意がなければ、いまごろわしは吸血鬼に成り下がっておった。
 感謝の気持ちは忘れねぇ。おふたりを侮辱するようなまねも、もちろんしねぇ。
 いまは血がなくなってのぼせ上がっておるぢゃろうから、きょうの返事は要らねえから、
 明日以降、良い返事をきかせておくれでないか?」


家にたどり着いたのは、夜中すぎのことだった。
俺も無言。華菜も無言。
亭主のまえでほかの男を相手によがり声をあげてしまったことを恥じているのか、
華菜は終始目を伏せていた。
「護れなかった俺が悪いから」
と、俺は華菜をかばった。
俺も――目のまえで妻を犯されながら昂ってしまった恥ずかしさが、ついて離れなかった。
あれは恥ずかしい。どうみても恥ずかしい。
夫の風上に置けないほどの恥ずかしさだ。
けれども――
華菜のことをあそこまで大胆に、雄々しく踏みにじったあの牡(おす)の身体の力強い躍動が、
瞼の裏に灼(や)きついて離れなかった。

それぞれにシャワーを浴びて、寝に就いた。
ベッドルームに入るとやおら華菜を抱き寄せて、激しく唇を吸った。
華菜も、応えてきた。
さいしょは謝罪するような、おずおずとした応えかただったが、
回を重ねるにつれ、俺の熱情が伝わったかのように激しく乱れはじめて、
ここしばらく交わしていなかった愛の刻を、はげしく交わした。
血を吸われたうえに、あの男になん度も犯され、疲れ切っているはずの華菜だったが、
そんなようすは微塵も窺われなかった。
むしろ、俺が圧倒されるほどにむさぼり返し、互いにガツガツとむさぼり合ってしまっていた。
心地よい疲れと虚脱感を身体の隅々にまで感じながら、俺は眠りに落ちた。


ふと気がついたとき。
部屋はまだ、華菜と乱れあった直後と同じく明るかった。
われ知らずまどろんでしまったようだ。
時計を見ると、2時。
熟睡したようにも感じたが、気を喪っていたのは意外に短い時間であった。
傍らをみると、華菜の姿がなかった。
いつも几帳面な華菜に似つかわしくなく、クローゼットが開け放たれていて、
衣類を取り去られたハンガーが床に落ちていた。
箪笥の抽斗も半開きになっていて、切られたパンストのパッケージが屑籠に乱雑に放り込まれている。
すべてが、華菜らしくない振舞いだった。
なにが起こったのか、俺は直感した。

表に出た俺は、すぐにさっと身をかがめて、手近な物陰をさがした。
街灯がスポットライトのように照らす真夜中の路上。
身を寄せ合うふたつの人影が、ひっそりと佇んでいた。
確かめるまでもない、ご主人と華菜だった。
華菜はクローゼットから引っ張り出した、真っ赤なタンクトップに黒のミニスカート。
足許には、スケスケのストッキングを黒光りさせている。
先刻脚に通していた礼装用のそれとは打って変わって、光沢のギラつく派手めのものだった。
華菜の気に入りのブランドで、都会にいたころは親友の結婚式のときによく脚を透していたのを覚えている。
差し伸べられた白い首すじに、男の唇が這っている。
男はなん度も、華菜の首すじに噛みついてゆく。
それが愛撫に等しいあしらいなのだろうということは、はた目にもわかった。
華菜も惜しげもなく白い肌をさらして、醜い噛み痕をくり返しつけさせてしまっている。
華菜もまた、男の真意を汲み取っていた。
「赤い服にバラ色の血――」
華菜はクスッと笑った。
俺とふたりきりの時だけにみせる、密やかで挑発的な笑いだった。
ご主人は華菜を引き寄せて、口づけを交わした。
まるで恋人同士のように、華菜は優雅にその唇を受け止めてゆく。
「来なさい」
男は華菜の手を引いた。
引かれるままに、華菜は男の意思に従った。

ふたりとも、想いは同じ――ということなのだろう。
いちどは冷静に考えなさい、と言われながらも。
夫との激しい愛を交わした後も。
相手の男を忘れることができなくて、華菜は夫婦の寝室を抜け出した。
あの伏し目がちな態度も、自分の奥にとぐろを巻いた想いに対する後ろめたさでしかなかったのだろう。
華菜が家を抜け出したのとほとんど同時に、ご主人のほうも、華菜を俺の家から奪い取ろうとして、家を抜け出した。
ふたりの想いはからずも、スポットライトの下で落ち合ったのだ――
俺は、なぜか深い感動を味わっていた。
夫としては忌むべきはずの、妻の不倫の現場のはずなのに・・・

庭に面した居間は、開け放たれている。
さっきまで、ご主人本人が骸となって、ひつぎのなかに収まっていたあの部屋だった。
奥さんも息子も、とっくに寝たのだろうか。
他の部屋はどの部屋も、静まり返っていた。
部屋に引きずり込まれた華菜は、挑むような瞳で、ご主人を見あげていた。
ご主人は有無を言わさず、華菜の足許に唇を圧しつけてゆく。
軽く抵抗しながらも、どうやらそれは彼女の本心ではない。
圧しつけられてゆく唇も舌も、しだいしだいに熱を帯びて、
真新しい華菜のストッキングを、恥知らずなよだれにまみれさせてゆく。
夫である俺に、操を立てるポーズをとっているのか?
もしかして、俺が覗いているのに気がついているのか?
ずきり・・・と胸の奥に黒い衝動が衝きあげた。
あ・・・
華菜が痛そうに目を瞑った。
噛まれたのだ。
ちゅうっ・・・ちゅうっ・・・
先刻ほどに急調子ではないが、華菜の身体をめぐるうら若い血液を、明らかに味わい楽しんでいる。
あああー
華菜が身を伏せて、打ち震えた。
男がのしかかり、首すじを噛んだ。
紅いタンクトップに、バラ色のしずくが撥ねるのが見えた。

月は西へと降りかかっている。
あれから1時間も愛されただろうか。愛し抜かれただろうか。
華菜は黒のストッキングを片脚だけ穿いたまま、セミロングの黒髪をユサユサと揺らしながら、
あお向けになった男の身体のうえで、躍動していた。
時には四つん這いになって、後ろからのえげつない挿入を受け留めさせられて、
口に咥えさせられて、なかに噴き出されて、嬉しそうにむせ返っていた。

不思議に、怒りも悲しみも湧いてこなかった。
妻の肉体を雄々しく支配した牡が、妻のことをしんそこ気に入って、
その夜が明けるのもまたずに二人で落ち合っていた。
最愛の妻の貞操は、昨夜激しく散らされた。
それは、若い夫婦にとってとても大きな、かつ深刻でもある影響をもたらしたはずだ。
けれども――
苦痛と犠牲を強いられた上に奪われた果実を、相手の牡はしんそこたんのうし、深く愛し始めている。
華菜を女として、高く評価していることは間違いなかった。
俺にとっては忌むべき一夜も、彼らにとっては、記念すべき「初夜」だったのかもしれないのだ。
もしもあれが「初夜」だとしたら、喪服は花嫁衣裳だったということか。
夫婦という良心の呵責を打ち破って生まれた、激しい恋。
もしもあれを「初夜」と呼ぶのなら――外野の人間は祝うしかないんだろうな。たとえ亭主である俺も含めて。

俺は割って入ることも、ふたりの行為を制止することもせずに、
自らの敗北を静かに反芻しながらふたりがし遂げるところを見届けると、
あとはしずかに、足音を消して立ち去ったのだ。
最愛の華菜を、四十男の欲望に独り占めにさせてやるために――


週末は、静かな曇り空だった。
「行こうか」
俺がふり返ると、
「行こう」
華菜ははずんだ声で応じた。
行先はもちろん、色町の邸。
華菜はよそ行きのグレーのジャケットに、同じ色のフレアスカート。
「清楚な服のほうが、興奮するらしいの」
華菜は得意げにそういった。
あの夜からいままでも、幾夜となく俺のことを裏切った女の言い草だった。
俺はそれでも、華菜の言葉をくすぐったく受け流した。
純白のタイつきブラウスは、バラ色しずくを今度も鮮やかに散らされてしまうのだろうか。
脚に通した肌色のパンストも、おろしたばかりのものだった。
「穿き古しじゃ恥かいちゃうから」
照れ隠しにつぶやく華菜に、
「礼儀作法というものだね」
と、俺も応じる。
ひと足歩みを進めるたびに、露骨なくらい派手やかな光沢が、その足取りを艶やかに彩ってゆく。

華菜の素肌をみすみす食い破らせてしまうことが。
よそ行きの衣装もろとも、ムザムザと辱められてしまうことが。
夫の立場からすれば最愛の妻に対する凌辱が、
じつは道ならぬロマンスの成就なのだと、いまは納得できてしまう。
自慢の妻を、きょうも見せびらかしてやろう。
ピチピチと若い華菜の肢体に、目の色を変えてむしゃぶりついてくるご主人の顔色を想像するだけで、
俺は恥ずかしい欲情に股間が熱くなってゆくのを、ガマンすることができなくなっていた。

ふたりの首すじには、おそろいのように、初めて噛まれた痕が赤黒く二つ、綺麗に並んでいた。
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街に棲みついた夫婦の記憶。

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