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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

「地味子」と呼ばれた妻

2024年01月12日(Fri) 00:10:12

妻の百合子のことを、「地味子」と彼は呼んでいた。
「地味だから地味子だ」と、笑っていうのだ。
でも、侮辱された気分にはならなかった。
もしも妻を侮辱されたと感じるとしたら、それは彼が初めて妻のことを咬んだときに遡らなければならないだろう。

そう、彼は吸血鬼だった。

血に飢えた彼の毒牙にさいしょにかかったのは、ぼくのほうだった。
勤め帰りにぼくを襲った彼は、首すじを咬まれて昏倒したぼくの血を、ゴクリゴクリと喉を鳴らして楽しみ尽くすと、
こんどはスラックスを引き上げて、ひざ丈に伸ばして穿いていた靴下まで楽しみはじめた。
そのころ流行っていた、ストッキング地のハイソックスだった。
貪欲な舌なめずりに晒されて、皺くちゃにされてゆくことに憤慨しながらも、
ハイソックスごしにずぶりと埋め込まれる牙に、ぼくはあろうことか、性的な歓びを感じ始めてしまっていた。
男はぼくの片脚だけをしつように咬んで、提供可能と思える生き血を一滴余さず、むしり取っていった。
その場に横倒しになりながら。
このままご自宅に案内してくれはしまいか――と、ぼくはなん度も、請われていた。
家には妻がいる。きっとあんたの目当ては、妻の血なのだろう?
ぼくはそういって、あくまで彼の要求を拒みつづけた。
仕方がないな――彼はそう呟くと、公園のど真ん中にぼくのことを横倒しにしたまま、近くの公衆電話に足を向けた。
そして受話器を取ってなにやら囁くと、再び戻ってきて、言った。
奥さん呼んだから――たったそれだけだった。

「きゃあーっ!」
背後から羽交い絞めにされた妻は、首すじを咬まれて絶叫した。
吸血鬼の出没に慣れたこの街では、そのていどのことで人は出てきてくれないのだった。
ぼくの血に染まったままの牙を、妻の首すじにひと息に埋め込むと。
彼は頬に血潮を迸(ほとばし)らせながら、妻の生き血を飲み啜った。
頬に散った血潮は、ぼくから吸い取った分と、妻のものと、両方が混じり合っていた。
妻はその場に尻もちを突くと、男は妻のスカートをたくし上げて、
さっきぼくの脚にそうしたように、ストッキングに包まれたふくらはぎに、
好色な舌なめずりを、這わせていった。
すべて、ぼくの目のまえでのことだった。
ぼくに見せつけようとして、わざとそうしたのだった。
ゴクゴク・・・ゴクゴク・・・
妻の生き血は、じつに美味そうに、飲み尽くされてゆく。
頼むから・・・頼むから・・・妻を殺さないでくれ・・・
ぼくは必死に懇願した。
彼はぼくのほうを見やると、いった。
「大丈夫だ。
 気前よく血を分けてくれたあんたは、恩人だ。
 恩人の嫁さんを死なすほど、俺はひどいやつじゃない」
でも――と、彼は言いよどんだ。
恩人の嫁さんを、ともに愛する習慣を俺は持っている・・・
えっ。
絶句するぼくの前。
妻はその場に押し倒されて、ブラウスを剥ぎ取られていった・・・

逞しい腰の上下動に、妻の細腰が支配されてしまうのに、さして時間はかからなかった。
妻は無言で、おずおずと。
さいしょのうちは、ひどく遠慮がちに、そして行為そのものを忌むように、
むぞうさに圧しつけられてくる男の腰に、動きを一方的に支配されていた。
「地味子だなあ」彼はいった。
たしかに、妻は地味で、見映えのしない女だった。
「でも――俺はこういう子が好きなんだ」
彼は40に手が届こうかという妻のことを、こういう「子」と呼んでいた。
あとで訊けば――数百歳になるという彼にとって、ぼくたち夫婦はほんの子ども見えたのだろう。
彼は妻と身体を重ねつづけて、唇を吸い、うなじを吸って、
自分の背中に妻の両の腕(かいな)を巻きつけまでしていって、妻を支配してゆくのだった。
やがて、自由自在に操られてしまった妻は、ぼくだけの妻ではなくなっていた。
ぼくとの夫婦の営みよりも、遥かに大胆に腰を振って、彼の欲望に応えていった。

ひとしきり凌辱を済ませると、彼はいった。
「奥さん、あんた以外は初めてのようだな」
真面目な妻なんだ・・・
ぼくはさすがに、涙ぐんでいた。
「素晴らしいものを頂戴した。礼を言う」彼はいった。
そして、まだあお向けになったままの妻のスカートをたくし上げると、
太ももにしつようなキスを這わせた。
妻は恥ずかしそうにしていた。
あとで訊いたら、「穿き古しのストッキングが恥ずかしかった」と言っていた。
そんなときでも、いやそんなときだからこそ、そんなことが気になったのだろう。
妻の穿いているストッキングは、肌色のごくふつうのタイプのものだった。
そのふつうの主婦の穿いたふつうのストッキングを、男はじっくりと、味わっていった。
くまなく、味わい尽くしていった。
チリチリに破けたストッキングの脚を街灯に曝(さら)したまま、妻が気絶すると。
彼はもういちど、ぼくのほうへとにじり寄った。
そして、まだ咬んでいないほうの脚のスラックスを引き上げて、靴下の上から唇を吸いつけてきた。
ストッキング地のハイソックスを通して、男のなまの唇が、ひどく好色に迫って来る。
彼はボクの靴下を、唇で、それから舌でもてあそんだ。
さっき妻のストッキングにそうしたように、辱め抜いたのだ。
「あんた、薄い靴下が好きなんだな」
ぼくは、やっとの想いでいった。
「わかってくれて嬉しい」彼はいった。
「妻のストッキングも狙っていたのか?」
「そうだ。買い物に出た時にストッキングを穿いていた」
そんなころから――ぼくは呆れる思いだった。
「だが、あんたの知らないところで奥さんを先に襲うのは無礼だと感じた」
不思議なことを律義に考える男だった。
「ご主人の靴下のほうが、しっかりとした舌触りがするな。
 生地も少しだけ、厚いんだろう。
 だが、実に艶めかしい味わいだ。気に入った。何足も持っているはずだね」
「ああ持っているとも――」
ぼくはこたえた。
「破りたいなら、破ればいい」
半ばやけくそになって、ぼくはいった。
「遠慮なく、楽しませてもらおう」
彼はそういうと、ぼくのふくらはぎにズブリと牙を埋めた。
妻の穿いているストッキングと同じくらいしつように嬲りものにされながら、
ぼくの足許を染めていた薄地のナイロン生地は、ふくらはぎの周りでブチブチとかすかな音を立てて、裂けてゆく。
「ご満悦なようだな」
からかってやりたい気持ちになっていた。
しかし彼は悪びれもせずに、「ウン、ご満悦だ」とだけ、いった。
頭の奥が痺れてきた。
ヌルヌルと抜かれてゆく血液が妖しく傷口を撫でて、どこか官能的な気分をそそり立たせてくる。
いったいどうして・・・?と疑問に思うと、それを読み取ったかのように、彼はいった。
「奥さんもたぶん、同じ気持ちだ。
 たいせつな血液をいただくお礼に、少し楽しませてあげようと思うのだ」
いい気なことを・・・という言葉を、ぼくは飲み込んだ。
いつの間にかぼくは、ずり落ちかけたストッキング地の靴下を自分から引き伸ばして、男の舌に晒してやっていた。
「いい舌触りなんだろ?好きに楽しめよ」
ぼくは駄々っ子みたいに、口を尖らせていた。
「嬉しいね・・・」
彼はそれに応えるように、たんねんに舌を這わせてきた。
きめ細やかなやり口だと、認めないわけにいかなかった。
ぼくは素肌に、鳥肌を立ててしまっていた。
当然彼も、そのことに気づいているはずだった。
「妻のストッキングも、楽しみたければ楽しめばいい」
ぼくはすっかり、投げやりな気分になっていた。
「そうさせてもらう。まだ喉が渇いている。死なさない程度に、奥さんの血をいただくよ」
「妻さえよければ、ぼくはかまわない――」
さっきまでのぼくには予想もしないようなことを、ためらいもせずに受け答えしていた。

男の唇が再び、スカートをたくし上げられた妻のふくらはぎに吸いつけられてゆく。
妻はかすかに、意識を取り戻した様子だった。
失血で喘いだ身体は、うつ伏せの姿勢になっていた。
はからずも。
ふくらはぎを存分に、楽しませてやることのできる体位でもあった。
しつように這わされてくる男の唇を迷惑そうに見おろしていたけれど、
ピチャピチャと舌なめずりする男の悪戯を、やめさせようとはしなかった。
そして、ぼくがそうしたように、ずり落ちかけたストッキングを引きあげて、恥知らずな舌なめずりに、晒していった。

うふふ・・・ふふふ・・・
妻の口許から、含み笑いが洩れてくる。
彼は妻の穿いているストッキングをあますところなく咬み破ってしまうと、
妻の身体をあお向けさせて、またも首すじを咬んでいた。
妻の首すじが、そんなに気に入ったのか?
ぼくの投げた悪罵を横っ面で受け流して、それでも彼はこたえを投げ返してきた。
「ああ気に入った。地味子は佳い血を持っている。首すじの咬み応えも、なかなかよろしい」
彼の答えの不気味さのあまり、ぼくは背すじをゾクッと慄(ふる)わせた。

信じられなかった。
唇と唇が、重ね合わされた。
セミロングの黒髪を、男の指先で弄ぶままにさせながら、
妻は恋人のように、迫らせられた唇に応えていった。
ふたりは、お互い求めあうように吸い合い、また吸い合った。
自分の血の味を嗅がされながら、妻は「ほろ苦いですね」と呟いた。
彼はいった。「いやな匂いじゃないだろう」
「ハイ、嫌ではないです」
妻は案外なくらい、ハキハキとこたえた。
ふだんはボソボソと囁くように、低い声で話す妻だったが、
その活舌のよさは、初対面の人に向ける、よそ向きの顔をしたときの態度と同じだった。
「じゃあもう少し・・・」
彼に言われるままに唇を吸われ、吸い返しながら、妻は始終、ぼくの視線を気にしていた。
「あなた、ゴメン」
初めてふり返った妻は、ぼくに向かってそう告げた。
差し伸べられた妻の掌を、ぼくはぎゅっと握り返してやっていた。
「生命は助けてくれるみたいだから――」と、
まるで自分から望んで妻の生き血を与えた夫みたいなことを、ぼくは妻に向かって告げていた。
「ウン・・・」
妻は口ごもりながら頷き返してくると、
「じゃあ、あげられるだけの血は全部、あげまちゃいますから――」と、彼に向っていった。
彼は熱いキスで、妻の好意にこたえた。
それからふたりが身体をひとつにしてしまうのは、もはや当然のようななりゆきだった。
強引に迫らせられる逞しい腰に、妻の細腰は翻弄された。
さいしょのそれは、強いられた行為といってよかったが、
いま目のまえで妻が営んでいる行為は、決してそうではなかった。
男にかしずく女の所作になっていた・・・

「地味子さんの血を、時々楽しませてくれないか」
ぼくたち夫婦をひとまとめにして自宅に送り届けた彼は、夫婦の寝室に寝かしつけたぼくたちに、訊いた。
「いまさら、なにを――」というぼくに、
「あくまで地味子さんのご主人はきみだから」と、彼はいう。
「私からは言えない」
妻は身を横たえたまま、ぼくに目線を送ってそういった。
あの人に血を吸われたいだなんて、人並みな主婦の私には恥ずかしくて言えない。
そういう意味だとすぐにわかった。
挟み撃ちに合ったような気分だった。
けれどもたぶん、
彼はぼくのことを、冴島百合子の夫として尊重しているつもりなのだ。
そして妻もまたぼくのことを、自分の夫として重んじているつもりなのだ。
もう、しょうがないなあ――
失血にけだるく歪んだ理性を振り覚まそうとしながら、ぼくはいった。
「生命を奪らないというのなら――これからも妻の生き血をよろこんで、ご馳走しよう・・・」
「ありがとう」
「ありがとう・・・」
彼からだけではなく、妻からもお礼を言われてしまった。
「もちろんぼくも、あんたに血液を提供するから。
 できれば・・・妻に手を出すのは、そのあとにしてもらいたい」
ぼくはそういって、夫としての面目を、かろうじて保とうとした。
「薄いハイソックス、いっぱい買い置きしておきますからね」
妻は主婦の目に戻って、ぼくにそういった。
「ストッキングがお好きだなんて、変態ですよね」
妻はそう言って、あっけらかんと笑った。
彼も面白そうに、声をあげて笑った。
ぼくも二人と声を合わせて、笑っていた。
三人が初めて意気投合した瞬間だった。

「どうして妻のことを、地味子なんて言うの?」
ぼくは訊いた。
彼はちょっとだけはにかんだような目つきになって、こたえた。
「彼女のこと、きみと同じ名前で呼んじゃ悪いと思ったからね――」
ぼくは彼のことを、かわいいとおもった。
それが彼のたくらみだとしても、もう良いと感じていた。
「構わないさ。百合子はぼくにとって今でも最愛の妻だけど――
 もうすでに、きみの愛人の1人に組み込まれてしまったのだろう?」
「うん、まさに俺のコレクションのなかの、だいじな1人だな」
彼はヌケヌケと、そういった。
「愛人がいっぱいいないと、私いつも貧血になっちゃう」
妻が間髪入れず、援護射撃を入れてきた。もう完全に、愛人を弁護する立場だった。
「夫として許可しよう。
 きょうからきみの百合子だから――いっそ呼び捨てにしてもかまわない」
首のつけ根につけられた傷口が、ジンジンと妖しく疼いた。
「その代わり――ぼくの血も楽しんでくれないかな?」
うわ言のようになったぼくの声色を察して、彼はすぐさまぼくのほうへとにじり寄ると、激しく疼く傷口を吸った。
じゅるうっ。
生々しい吸血の音に、痺れてしまった・・・
ごくん、ごくん・・・露骨な音を立てて飲み味わわれながら。
ぼくは痺れを覚えたまま、彼の欲求に応えつづけた。
惜しげもなく、血液をむさぼり摂らせてやっていた。
「つぎは百合子の番だね」
嬉し気に弛んだ口許に、妻は自分のほうからキスを重ねる。
ぼくの血がたっぷり撥ねた唇に、妻の唇が妖しくからみついた。
「ご主人、悪いが百合子は俺のモノにさせてもらうぜ――」
彼はそう言って、思うさま血液を抜かれたぼくのすぐ傍らで、妻を犯し、そして狂わせていった。
頭を撫でられ、キスを雨のように降らされ、
破れ残ったストッキングを弄ばれて、貧しい乳首を存分に舐めまわされて。
妻は夢中になって、堕ちてゆく。

その夜、ぼくたち夫婦は彼の、忠実なしもべとなっていた。
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