fc2ブログ

妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

禁断の味わい。

2024年01月24日(Wed) 20:24:10

妻の百合子も。
娘の由香里も。
そして、それと同じくらいぼくまでも・・・
そろいもそろって、初めて吸われたときは。
脇役どころか、チョイ役の遂げる最期のようだった。
妻の百合子は夜の公園で、背後から羽交い絞めにされて、
ろくろく抵抗もできずに一方的首すじを咬まれてしまったし――
娘の由香里は授業中に、首すじから血を滴らせているクラスメートの子に呼び出されて、
母親に言われるままに自ら差し出した発育のよいふくらはぎを咬まれて、
紺色の通学用のハイソックスを破かれながら吸血されていった。

ふたりとも。
ろくろく抵抗もできないうちに、有無を言わさず血を吸い取られてしまったのだ。
もっともの話、そもそもが。
勤め帰りのぼくが狙われたのが、発端だった――

幸か不幸か。
相手は、人を殺めるのが嫌いな吸血鬼だった。
彼は三日にあげずわが家にやってきて、
ぼくを含め家族全員の血に舌づつみを打つのだった。
死なさない――という条件を突きつけられて。
ぼくたちはおずおずと素肌を晒し、血を吸い取られてゆくのだった。


「ただいまぁ・・・」
玄関の扉を開ける音と同時に、生気のない声が聞こえた。
でも、けだるげだったその声はすぐさま「あっ!」と短い叫びに変わり、
「ああ~っ・・・」
と、絶望的なうめき声につながっていった。
血を吸い取られるときの、か細い脱力感のこもった声色だった。

顔をあげると、玄関に佇む娘の由香里が、顔をしかめて姿勢を崩しかけている。
足許ににじり寄った彼が、制服姿の由香里の脛に、唇を吸いつけていた。
学校帰りのハイソックスがよほどお気に召したのか、
彼の唇はかなりイヤらしく、由香里の脛を這いまわった。
しなやかなナイロン生地を舐め味わうように。
舌が、唇がハイソックスに包まれた脚の輪郭をなぞり、
時おり唇に力を籠めて、喰いついてゆく。
喰いつかれるたびごとに。
脛を覆う白のハイソックスが、ビチビチと赤い血潮に染まっていった。

ちゅうちゅう・・・
ちゅうちゅう・・・
足許にあがる露骨な吸血の音に顔をしかめ、頭を抱えながら、
由香里はその場にくず折れた。

ぼくはどうすることもできずに、娘の受難を見守っていた。
つい今しがた。
娘の帰宅を当て込んで現れた彼に、スラックスを引きあげられると、
30分ほどかけて血を吸い取られたばかりだったのだ。
陶酔に似た疼痛と引き換えに、ぼくの血はそっくり、彼の干からびた血管へと移動していった。
そしていま、したたかに吸い取られた働き盛りの四十代の血液は、彼のなかで力強く脈打って、娘を襲う原動力となっている。
それに引き換えぼくのほうは、もう、起きあがる余力さえもっていなかった。
勤め帰りの薄々のハイソックスは、たしかに彼を悦ばせるために穿いたのだけれど。
思いのほかしつような舌なめずりに、妻の百合子のストッキングの脚に加えられた凌辱を重ね合わせていた。
あいつ・・・あいつ・・・百合子の脚をこんなふうにいたぶるのか・・・
嫉妬に焦がれながら血を吸い上げられて、気絶寸前まで追い込まれたところで、
ふと身体を放された。
彼の目線の彼方に、百合子がいた。

学生時代、お姫様のように憧れた女は、目のまえで男に組み敷かれ、
破られたストッキングを穿いたままの太ももを灯りの下にさらけ出し、
うなじに好色な唇を吸いつけられている。
彼はキュウキュウと、ひとをこばかにしたような音を洩らしながら、
百合子の血をさかんに口に含み、すでにかなりの量を飲み漁っていた。
彼の唇は、百合子の首すじにずうっと、貼りついていた。
百合子の首すじが、いとしくていとしくてならない――というくらいの執着ぶりだった。
たんに渇きや食欲を充たすためではなく、百合子の血の味をしんそこ楽しみ、味わっているように見えた。
しつような吸血にもかかわらず、百合子もまた、彼の腕の中で静かに目を瞑っていた。
失血のはやさに焦る様子も見せず、服に飛び散った血潮にうろたえる様子もみせなかった。
むしろ自分のほうからすすんで、彼の喉の渇きを自分自身の血液で癒そうとしているようだった。
彼が自分の血を気に入っていることを、はっきりと意識しているようだった。
自らの血潮の佳さを誇るように、背すじをピンと伸ばして、
床の上で濃厚なチーク・ダンスでも躍るかのように、身を寄り添わせているのだった。

美味そうだ――しんそこ美味そうだ・・・
彼に抱きくるまれながら吸血される百合子を見ているうちに、
そんな想いが、むしょうに湧きあがってきた。
失血が度重なるにつれて知らず知らず、
血に飢えたものたちの気持ちが、わかるようになり始めていたのだ。
こんなにも渇いた気分だったのか。
こんなにも切ない想いだったのか。
そう思うと――
目のまえで暖かい血に満たされている彼を見て、彼のためにはしんそこ良かったのだと思えるようになり始めていた。
目のまえで、妻や娘がほしいままに、生き血を吸い取られているというのに――

「あのひと、ママのこと本気で気に入ってるみたいだね」
いつの間にか傍らに、由香里がいた。
首すじからしたたる血潮が、制服の襟首をバラ色に染めている。
「ママのこと、とても気に入ってるんだと思う。
 パパ・・・ママのこと取られちゃわないようにがんばってね――」
娘はそう言うと、力尽きたかのように、ぼくのすぐそばで四つん這いになって、弱々しい吐息をセィセィと吐きつづけた。
「お前だって――気に入られしまっているんじゃないのか?」
ぼくがそういうと、娘はこたえた。
「私?私はただ、太ってて血を一杯獲れるからってだけじゃないかな・・・」
娘の言い草は、少し投げやりに聞こえた。
「気に入ってもらいたいのか・・・?」
ぼくが声をひそめると、
「どうなんだろう・・・わかんないや・・・
 でも私、血を吸われるのは嫌じゃないから、気にしないでね」
妻と娘を守れなかった情けない夫――と、ともすれば想い塞いでしまうぼくを気遣うように、娘はこたえた。
脛の半ばまでずり落ちた白のハイソックスが、血に濡れていた。
バラ色の飛沫が不規則な水玉もようとなって、真っ白な生地の表面に散っている。
ふと、渇きを覚えた。
「――いいよ・・・」
娘がそう呟いて、ハイソックスをひざ小僧の下まで引き伸ばすと、ぼくのほうへと差し向けてくる。
われ知らず、足首を掴まえていた。
ふくらはぎに、舌を這わせてしまっていた。
しなやかなナイロン生地の向こうに、温みを帯びた柔らかなふくらはぎが、息づくようなうら若さを伝えてくる。
そこからはもう、止め処がなかった。
どうやって喰いついたのか、憶えていない。
由香里のふくらはぎがキュッとこわばるのを、咬み入れた犬歯で感じていた。
唇の下で娘の履いているハイソックスが生温かく濡れるのもかまわずに、
それでもグイグイと、皮膚の奥を求めていた。
ちゅうっ・・・ごくり。
ぼくは目の色を変えて、まな娘の血潮で喉を鳴らしていた。

禁断の飲み物を得たぼくは、由香里を引き倒すと、首すじに咬みついていた。
由香里は抵抗しなかった。
むしろ自分から、荒い息を爆ぜるぼくの口許に、うなじを差し向けてきた。
じゅるっ。じゅるっ。
生々しい音を立てながら。
ぼくは娘のブラウスを、血浸しにしていった。
傍らで百合子が、スカートを腰までたくし上げられて、ひざ下までずり降ろされた肌色のパンストをしわ寄せながら、足摺りをくり返していた。


あとがき
チョイ役で血を吸い取られてしまうような人妻だって。
若いころにはいまの夫と、精いっぱいのロマンスを演じていたはず。
そんなあたりもちょっとだけ、表現してみました。

娘さん。
血を漁り獲られてしまう理由は、果たしてほんとうに、「太っているだけ」なのでしょうか・・・?
前の記事
ぞんざいな扱いではなかった――
次の記事
地味なパンストを愉しまれる。

コメント

コメントの投稿

(N)
(B)
(M)
(U)
(T)
(P)
(C)
管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
http://aoi18.blog37.fc2.com/tb.php/4189-39fc31f6