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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

吸血鬼とお母さんの鬼ごっこ

2024年01月24日(Wed) 20:33:54

淡い草色のワンピースを着た百合子が、公園のなかを逃げ惑っている。
「怖かったら逃げるね」
笑みを交えてそう応えた妻が、たしかに逃げ惑っている。
けれども、逃げ惑って――というのは、もはや適切な表現ではないかも知れない。
妻の足取りはあくまでも手加減したもので、
迫って来る吸血鬼に容易に肩を掴まれてしまうていどの緩慢なものだった。
ふり返りふり返りしながら肩までの黒髪をなびかせて、
ワンピースのすそを風にそよがせて、
すそから覗くふくらはぎを彩る淡い色合いのストッキングに、脛を適度に透きとおらせて、
巧みに吸血鬼を誘惑していた。
「あっ」
抱きつく猿臂に声をあげて、頑是ない子どもみたいに激しくかぶりを振って、
うなじに喰いついて来る牙を避けようとはするけれど。
その努力はもちろん、妻の身を守り通すことは無い。
力を籠めた猿臂に身体をギュッと固定され、否応なく咬まれてしまうのだ。
ビュッと飛び散る血潮が、ワンピースの肩に撥ねる。
妻の生き血をひと想いに吸い尽くそうとはしないで、
吸血鬼はわざとのように、華奢なワンピース姿を固い猿臂から解き放つ。

季節はずれの蝶が弱々しく翔ぶように、妻はふたたび弱々しい足取りで逃げ惑う。
そしてまたもや他愛なく捕まえられて、首すじを咬まれてしまう。
さほどの量を喪うわけでもないのに、男の腕のなかの妻は大仰に、
「ああ~っ」と絶望的な呻きをあげながら、生き血を啜り取られていった。
むさぼる喉が、美味そうに鳴った。
ひと口ひと口、彼は妻の生き血を愛おしむように飲み味わっている。
そして、猿臂に巻かれた妻をまたも解放し、弱々しい足取りを余裕たっぷりに追いかけてゆく。
いちどに吸い取る量をわざと加減して、この他愛ない鬼ごっこを長引かせようとしているのだ。
けれども妻のほうもまた、公園の外には出ようとはせずに、とりとめもなくパンプスの脚をもつれさせる。
そしてまた、あっけなく捕まえられて、逞しい腕のなかで切なげな呻きをあげるのだった。

なん度めか解放された妻は、よろよろとよろけて、噴水の礎石に身をもたれかけさせた。
失血で、動きが明らかに衰えていた。
立て膝をした妻の足許に、好色な唇が吸いつけられた。
ストッキングをしわ寄せながら、淡いナイロンの舌触りを愉しんでいるのだ。
妻は目許を翳らせて、羞じらうようにかぶりを振った。
めくれ上がらないようにワンピースのすそをひざ頭で抑えた掌は、
それ以上相手の不埒な愉しみを妨げようとはしていない。
じょじょに姿勢を崩す妻にのしかかるようにして、彼は妻のパンプスを脱がせ、
足の裏にまで舌を這わせた。
「あははははっ」
妻がくすぐったそうに、開けっ広げな笑い声をあげた。
男の舌は、悪魔に支配されたようにしつようだった。
ストッキングのうえからしゃぶりつけられた舌は、薄いナイロン生地を卑猥に舐め抜いた。
いやらしい舌なめずりが、妻の足許を上品に染めるストッキングに、露骨な皴を波打たせ、唾液をしみ込ませてゆく。
なん度も咬まれ、ストッキングをチリチリに咬み破られながら。
妻はじれったそうに身を揉んで、
「いけません」「やめてください」「ひどいです・・・」
と囁きをくり返し、情夫の痴態を制しようとしている。
けれども本心は言葉と裏腹であるのは、ひと目見てそれとわかるほどだった。
彼が愉しみやすいように、脚をさりげなくくねらせて、狙われた部位を舌に添わせてゆくのだ。
時おり、力を籠めて喰いつかれると。
「きゃあ~」
と大仰な声をあげて応じたが、むしろストッキングを咬み破られることに歓びを含んだような声色だった。

彼に掻き抱かれた妻は、ワンピースの前の釦をひとつひとつ外されていって、
さいごにはぎ取られたブラジャーに隠されていた胸を露出させた。
彼女が着古したこのワンピースをチョイスした理由がわかった。
前開きで、彼にとって脱がせやすい服だったのだ。
節くれだった掌が貧相な胸を愛おしむように覆い、しつような愛撫を加え揉みくちゃにしてゆく。
ピンと勃った乳首を賞玩するように唇に含むと、くちゅ・・・くちゅ・・・と卑猥な音を洩らしながら、舌で愛撫を加えていった。
もはや、つけ入る隙もないほどの愛撫だった。
乳首を噛まれる気遣いはないとわかったうえで、全幅の信頼をこめて開かれた胸は、むしろ誇らし気に舌と指とに晒されてゆく――

「パパ・・・」
娘が傍らで、上目遣いにぼくを見た。
下校中に申し合わせたようにぼくと待ち合わせ、前もってぼくの渇きを飽かしめてくれていた。
ブラウスに撥ねた血潮がその余韻となって、純白のブラウスを鮮やかに染めていた。
ぼくは娘と、視線を合わせた。
母親似の顔の輪郭が、妻のそれと重なった。
「どうやら、出る幕はなさそうだね・・・」
ぼくは情けなさそうに笑った。
「そうだけど――」
娘も、困ったように笑った。
「パパはいいの?」
「ぼくはかまわない。
 ママは嫌がっていないし、彼も楽しそうだ。
 このうえ邪魔するのは、やめにしておこう」
「ウン、わかった――」
娘の声は思いのほか、キッパリしていた。
「じゃあこのまま、さいごまで見届けようね」
逃がさない――と言わんばかりに、娘の掌がぼくの手の甲を押し包む。
ぼくは自分の掌を動かさなかった。

足摺りをくり返す脛から、片脚だけ脱がされたストッキングがじりじりと弛み堕ちてゆく。
強引な上下動に細腰をあずけながら、妻は相手の背中に腕を回し、
濃厚なキスに自分から応えはじめている。
もう、ぼくたち父娘に視られているのをじゅうぶんに、意識していた。
意識しながらも、夫婦のあいだでしか演じてこなかったであろう営みを、
人目さえも厭わずに、恥を忘れて、いや――誇らしげに、くり広げてゆくのだった。


あとがき
なん度も「逢う瀬」を見るにつけ。
ご主人も彼と奥さんとの仲を認めたようです。
めでたしめでたし。^^

鬼ごっこのシーンは時おり描きますが、
逃げては捕まえられ、逃げてはまた猿臂に巻かれ――というのは、ひとつの愛情表現のように思えます。

「怖かったら逃げても・・・」と、前作でのたまわったご主人ですが。
つかず離れずの愛情表現をスキなくくり返すふたりに、とうとう脱帽したようですね。^^
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