FC2ブログ

妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

家に招ぶ

2006年08月01日(Tue) 07:01:19

ごとり。
物音で、目が覚めた。
今は深夜。
音の主はこっそりと開けたつもりでも。
なりをひそめた闇は、かすかな音を。
透きとおるほどに耳もとまで届けてくれる。

バスルームに向かう、ワンピース姿の妻。
乱れ髪の後ろ姿。背中には、かすかに付着した泥・・・
「おかえり」
わざと、声をかけてやった。
きゃ。
妻は軽く声をあげると。
もぅ。
拗ねたように、口を尖らせる。
逢ってきたの?
ええ。
お相手は、訊くまでもない。
このごろの妻の相手は、娘の職場の同僚たちをつぎつぎと襲っていた、
あの遠慮深い老吸血鬼。
すぐにわかるよ。彼に逢ったあとは、背中が汚れるからね。
とまでからかうのは、さすがに控えたけれど。
「お宅にはね、とても伺えませんって、遠慮なさるの」
彼が男性としての想いを遂げるのは、相手のいない女性ばかり。
妻には、そして私にも。ひどく遠慮しているのだという。

ある晩のこと。
庭先が妙に、ざわざわしている。
直感にかられて。玄関伝いに庭に回りこんで。
木立ちにまぎれた、彼の姿を見出した。
「とうとう、お見えになられましたね」
後ろから肩に手を添えると。
紳士は決まり悪げに俯いた。
「申し訳ありません。今夜は、先客がありましてね」
半開きになったガラス窓一枚へだてて、妻を襲っているのは。
いつもその身を黒衣に包んでいるあの男。
熱烈な抱擁のなか。
妻は早くも、目線をウットリさせてしまっている。
ひくく謝罪の言葉を呟く彼を。
妻はとりなすように、赦しを与えて。
みずから、ブラウスの襟元をくつろげる。
美しいでしょう・・・?
囁いてやると。
紳士は感に堪えたような目を妻に釘づけにしたまま、ゆっくりとうなずいている。
与えることは、美しいのですよ。
そんな私の囁きに、紳士は深く、頷いている。
奥さんを許すことは、できませんか?
紳士はびくっと身をすくめ、まともに見つめてきた。
彼の死後すぐに、未亡人は再婚していた。
おかげで彼は寄る辺のない身となって。
寒々とした夜道を独り、徘徊している。
それでは、お寒いでしょう。
ええ・・・
曖昧に頷く紳士に。
手加減するように、彼に頼んであります。
足りないぶんを補うために、きっと母のところに行くでしょうから。
つぎは、貴方の番ですよ。
ハッと振り返る彼。
ヘンは男でしょう?
さすがに恥じる私を、こんどは彼が赦す番だった。
照れ隠しするように。
さぁ、どうぞ。妻が待ちかねていますから。
どうぞ遠慮なく。貴方を妻の客人として歓待いたします。

がたり。
隣室で、物音がする。
今は深夜。
音の主は、こっそり開けたつもりだろう。
妻のベッドは、からだった。
ひっそりと足音を忍ばせて。
闇夜の微光は、輪郭だけを滲ませている。
窓辺に佇む妻。抱き止める老紳士。
とうとう来て下さいましたのね。
妻は嬉しげに、情夫を見あげる。
仰のけられたおとがいに、すうっと指を滑らせて。
男はしんからいとおしむように。
静かにうなじを、えぐってゆく・・・


あとがき
「黒いハイソックスの看板娘」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-338.html
「睦言の中身」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-369.html
の続編です。
一回限りのサイドストーリーのつもりだったのですが。
どういうわけか、反響があります。
反響があると、つい描いてしまいます・・・^^;
前の記事
悪戯小僧と息子
次の記事
老いらくの恋?~再あっぷ案内

コメント

コメントの投稿

(N)
(B)
(M)
(U)
(T)
(P)
(C)
管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
http://aoi18.blog37.fc2.com/tb.php/422-7b02c1fe