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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

メイドのいる邸

2006年08月03日(Thu) 08:03:33

ちろちろと明滅する照明だけが頼りの、薄暗がり。
燭台を持ち歩くメイド姿の長い影が通りかかった。
はた、と立ち止まると。
燭台を置きなさい。
そう、命じられて。
置きどころをかえた燭台が照らし出す少女の影が。
次の瞬間、大きく揺れた。
「あっ、お許しくださいませ・・・っ」
のけぞるその身に、もうひとつの黒影が重なり合って。
仰のけたうなじに、唇が吸いつけられる。
きゅっ、きゅうっ・・・
むざんな吸血の音。
メイドは絶句して、やがて力尽きたように、ぱたりと廊下に倒れ臥した。
影はメイドの血に濡れた唇に、にんまりと笑みを滲ませて。
ひざ上までの長靴下を履いた足許に、そろそろとかがみ込んでゆく。
黒の長靴下のうえからあてがわれる唇が、もの欲しげに吸いつけられて。
きゅっ・・・きゅきゅうっ・・・
しずかになったメイドのうえにおおいかぶさる吸血の音はいつまでも絶えることがなかった。

まりあがはじめて訪ねたそのお邸は。
ウッソウと茂るツタに埋もれたような、古風な洋館。
初めまして。
なるべく初々しく。適度にピチピチと。そしてもちろん、お行儀よく。
ご主人さまになる人に、お辞儀をする。
ご主人さまは、四十代。それとも五十くらいかな?
とっても落ち着いた上品な人で。
でもどこか、お顔の色が悪くって。
奥様もやっぱり美人だけれど。華がなくて、やっぱり顔色がお悪かった。
―――気にすることはないのですよ。
とりなすように、御主人様が口をはさむ。
わが家の遺伝でね。みんな顔色がよくないのだよ。
きみに面倒を見ていただく息子もね。
ちょっと気難しいところがあるけれど。心の優しい子だから。よろしく頼みますよ。
静かだけれど。威厳のある声色でそういわれると。
まりあは背すじをぴんとさせて、最敬礼のお辞儀をしてしまった。

お坊ちゃんはまだ童顔を残したお年頃で。
いつも半ズボンの下に黒の長靴下を履いていた。
古風な装いがとてもよくお似合いで。
けれども御主人様以上に無口で。
はじめのうちは合わせるのに苦労した。
けれどもすぐに、優しい子なんだってわかったら。
まりあのほうがちょっぴりお姉さん気分になって。
気詰まりの多いという住み込みのお仕事も、
そんなに苦にはならなくなった。
けれどもお坊ちゃんが最初に口にした言葉、ちょっと不思議で忘れられない。
ここにくるお姉さんはね、いつも突然辞めちゃうんだ。きみもいつまでもつのかな。

黒のミニのワンピースに、まっ白なエプロン。
脚には黒の長靴下。
長い髪をキュッと結わえて、いままでよりグッと清楚な感じにして。
お仕着せのメイド服はきちんと着こなして、変化は靴下で出すようにしている。
黒の長靴下を着用のこと。
規則にはそれしかかかれていなかったけれど。
お坊ちゃんがよくなついていたという前の前のメイドさんは、薄い靴下を履いてたみたい。
ふたりで写っている写真を、お坊ちゃんはなぜか、
パパやママには内緒だよ。
そう言って、こっそり見せてくれた。
きょうはお坊ちゃんの好きな、黒のガーター・ストッキングにしてみようかな♪
まりあお姉さんの足許をちらちら盗み見ているの。ちゃんと気づいているんだぞ。^^

こんどのお嬢さんは、活きの良さそうなかたですねぇ。
夫人のささやきは、夢遊病者のように力が抜けている。
そうだね。なかなかハキハキとした、感じのよい子のようだ。
どうしたら、よろしいかしらねぇ。あまりお気の毒なことになってはいけないわ。
そうだね。この邸には、魔が棲みついているからな。
そんな夫婦の語らいを、まりあは夢にも知らない。

ビックリしちゃった。
お気に入りの半ズボンの下。
お坊ちゃんが履いていたのはいつもの黒のハイソックスじゃなくって。
ひざ上まですうっと透ける、黒のストッキング。
あの、それ、女ものなんですかあっ?、って、訊いちゃった。^^;
お坊ちゃんは照れくさそうにまりあを見あげて。
ウン。たまにね・・・履いてみたくなるんだよ。
まりあはそんなボクのこと、笑ったりしないでくれるよね?
エエ。もちろんですわ。
お坊ちゃんは男の子なのに。とてもほっそりとした脚をしていて。
黒のストッキングに包まれたふくらはぎは、まるで本物の女の子みたいで。
ゾクッとするほど、なまめかしい。
まりあのストッキングも、履いてみたいな。こんど、貸してくれないか?
うんうん。
いっしょにイタズラに熱中する、悪い子になったみたいな
ちょっとスリリングな気分になって。
いま履いているやつ、脱いであげようか?
そう口にするのを、かろうじてくい止めていた。^^;

夜になった。
寂しいお邸のなかは、暗くなると本当に真っ暗になってしまって。
怖いくらい、シンと静まり返っている。
広いお邸のお掃除はとても大変で。
まりあはきょうもへとへとになって、ベッドに就いた。
メイド服から、ネグリジェに着替えようとしたら。
急に眩暈がして、そのままばったりと、ベッドに臥せってしまった。

真っ暗になっている。
でも部屋のなかにいるのは、まりあだけではない。
寝室にかすかに息づくものが、だんだんこっちへと迫ってくる。
動けない!
金縛り・・・というのだろうか?
手も脚も、痺れたようになって。身じろぎひとつ、できないのだ。
息遣いはだんだん近く、荒くなってきて。
とうとうまりあのうなじの上で、動きをとめた。
研ぎ澄まされた目線が、首筋を狙っている。
恐怖と、そしてなぜかわき上がる、えもいわれぬ陶酔と。
淡く昏い渦のなかに、うっかり身をゆだねてしまいそうになったとき。
「まりあお姉ちゃん、どこにいるの?」
廊下でお坊ちゃんの声がした。
まりあの上におおいかぶさろうとした影は、ハッとしたように身を起こし、
つぎの瞬間、霧のように掻き消えてしまっている。

おはよう。
お坊ちゃんは、このところ、顔色がよくない。
前から蒼白かった頬が、さらにいっそう、透きとおるようになってきた。
時折身につけてくれるのは、まりあがあげた黒のストッキング。
パパやママには内緒なんだ、そういいながら。
まりあを招ぶときは必ずといっていいほど、脚を彩っている。
色の白くなったぶん、いっそう妖艶に映えるようになっていた。
夕べ、まりあのこと、お捜しになっていたでしょ?
思い切って、まりあのほうから切り出してみた。
え?そんなことないよ。
お坊ちゃんはしんそこふしぎそうに、首をかしげている。
重苦しい霧が去ったあと。
すぐにドアを開けて覗いた廊下には、人影ひとつなかったのだ。

今夜は特別な夜だから。
早くに自室にこもって、朝まで部屋を出ないように。
めったにご指示を出さない御主人様が、
いつになく重々しい口調で、そうおっしゃった。
まりあ。今夜ボクの部屋に来てくれる?パパやママには、絶対、絶対、内緒にしてね。
お坊ちゃんの目がいつになく、しんけんだった。

もうとっくに、ネグリジェに着替えている時分。
そして、自室から出ることを御主人様から禁じられた刻限。
まりあはメイド服のまま、お坊ちゃんの部屋へと向かっている。
黒のガーターストッキングを穿いた脚を、忍ばせて。
約束の時間を、ちょっと過ぎてしまった。
扉ひとつへだてた廊下から、行き交う足音がいつになく、絶えることがなかったからだ。
お坊ちゃんのお部屋は二階の一番隅にある。
昼も薄暗い廊下は、夜ともなると。
そのあたりが、一番暗い。
それなのに。どういうわけか、いつになく。
お部屋のまえの廊下が、明るい。
よく見ると、お部屋のドアが半開きになっている。
どうしたんだろう?
思わず駆け寄っていくと。
あ・・・
中から、引きつるような声がした。
お坊ちゃんの声だった。
まりあは知らず知らず、ドアをたてに身を隠していた。

お坊ちゃんはチェアのうえに脚を乗せていた。
いつもの半ズボンに、黒の長靴下。
誰かがお坊ちゃんの靴を磨いているのか・・・と思った。
お坊ちゃんと真向かいになっている人は、まるで黒い影みたいに。
足許にかがみ込んでいたから。
きゅ、きゅう・・・っ。
奇妙な音が、まりあの耳の奥をくすぐる。
なんだろう?なにをしているだろう?
入ってもいいのかな?
ぐずぐずと迷っていると。
後ろから伸びてきた手が、スッとまりあの肩を撫でていた。
ひ・・・っ。
悲鳴は喉の奥に貼りついて。
とうとう声にならなかった。
連れ去られるさいごの瞬間。
振り返ってみるとお坊ちゃんは眠そうに目をこすらせながら。
血のついた太ももを、ハンカチで器用に拭っていた。
差し向かいになった影は、なおもお坊ちゃんの脚に唇を貼りつけて。
どうやら血を吸っているみたいに見えた。
まりあが廊下の曲がり角をまがるとき。
ふとふり向いた影の持ち主が、ほかならぬ御主人様だとわかって。
まりあの背すじにはじめて、ゾクッと寒気が走っていた。

御覧になったでしょ?
奥様は蒼い頬を冷たく輝かせて。
まりあをひたと見すえている。
おわかりになるわね?あなたも先輩たちの、仲間入りをするんですよ。
奥様の手には、ロープが握りしめられている。

メイド服のうえから、ロープをぐるぐる巻きにされて。
容赦なく、ぎゅう・・・っと縛られて。
痛いです。
奥様に訴えると。
痛いのよ。
訓えるように、しっとりと。落ち着き払った反応がかえってきた。
どうしようっ。まりあ、これからどうなるの?いったい、どうされちゃうの?
引き合わせてあげるわね。そのまえに・・・
奥様はしなだれるようにまりあのほうへと寄り添ってきて。
荒い息遣いが頬をかすめる。
あのときの「影」だ。
寝室でまりあにおおいかぶさろうとした影。あの正体は・・・奥様?
気がついたようね。でももう遅いわ。
奥様はちょっとだけ哀れむように。
美しい瞳でまりあのことをじいっと見つめると。
いとおしい・・・
そうおっしゃりながら。
まりあの首筋に、唇を当ててくる。
柔らかに濡れた唇がしっとりとあてがわれて、まりあの肌を強く吸った。
・・・・・・っ!
唇のすき間から滲むようにはみ出てきたのは、二本の牙。
それがまるで注射針のようにむぞうさに、皮膚を破っていた。
ぎゅう・・・っ
と圧しつけられた唇の下。
じゅくっ。
と、血がほとび出て肩先を濡らすのを感じていた。
あっ、あっ。。。ああ・・・っ!
声にならない悲鳴と、抗いにならない悶え。
ロープと奥様の腕のなか。
まりあはどうすることもできないまま、ひたすら血を吸い取られてゆく。
奥様。お、お許しを・・・っ。

ダメ、ダメ・・・
奥様はイタズラっぽく微笑んで。
ゆっくりと、かぶりを振っていらっしゃる。
かわいい子。でもお仕置きは、まだまだよ。
まりあの頬をいとおしげに撫でながら。
さぁ。皆さんにも、ご挨拶しなくちゃね。
パン、パン。
はっきりと打ち鳴らされる奥様の手の音が、薄闇にこだました。
その音に招かれたように。
透明な闇の彼方から、まるで浮かび上がるようにして。
まりあとおなじメイド服の女たちが、忽然として、現れた。

「生意気そうな子じゃないの」
頭だったひとりは、すこし、とうのたったお姉さま。
まりあをひと目みると、そうおっしゃって。
あごをつかまえて、ぐいと持ち上げて。
お相伴にあずかるわ。
フフッと笑んだ顔が視界から消えると、
ぐい・・・っ
さっき奥様につけられた傷口を、さらに深くえぐってくる。
むぞうさに血を引き抜かれた瞬間、クラクラと眩暈に襲われた。
おかわりね。
妹ぶんみたいな女の子が、つづいて傷口を吸う。
あたし、次っ。
ちょっとはしゃいだ声の女の子は、まりあよりも若そうだった。
まりあに抱きついてきて、やっぱり血を吸い取っていった。
ちゅうっ。きゅうっ・・・。ごくり。ずず・・・っ。
メイド服の女の子たちはかわるがわるまりあに抱きついてきて、
少しずつ、血を吸い取ってゆく。
そのたびにまりあの視界は眩暈に遮られて、じょじょに姿勢が崩れてゆく。
けんめいに、脚を踏ん張ってみたけれど。
濃くなった眠気は、夢みるような誘惑をまりあにしんなりと巻きつけてくる。
ホホ・・・
傍らで見物をしている奥様が、口に手を当てて。
エレガントにお笑いになった。
ああ・・・
どうしよう・・・
このままじゃ、死んじゃうっ。
だいじょうぶよ。あなた。
まりあの心を見透かしたように、奥様が口を添える。
からかうような、お口ぶりで。
あなた、気に入られたみたいだわ。
このまま幾晩も、過ごせるわね。
その代わり、もうお邸から出られないのよ。
その体に流れる若い血を、たっぷりとみなさんに恵んであげなくちゃならないから。
闇を通して。
優雅に流れるさやさやとした、白のイブニングドレス。
その向こうから、影がふたつ。
そうっと忍び足で、奥様の背後に忍び寄ってくる。

「お姉ちゃん、ごめんね」
すりよってきたお坊ちゃんは、メイドの女の子たちを見回すと。
みんな、死んでしまったんだよね。パパやママに血を吸われて。
寂しそうに、みんなを見回していた。
ボクが脚に通している靴下ね。
みんな、この子たちのものなんだよ。
血を吸われる前に、分けてもらって。
ボクもパパに、血を上げているから。
まりあもボクといっしょに。みんなに血を上げてくれるよね?
でもそのまえに、ボクもまりあを・・・
そうおっしゃると。
お坊ちゃんは縛られたままのまりあの足許にかがみ込んできて。
ぬるり。
ガーターストッキングの太ももに、唇を這わせてしまった。
あ・・・
なにかがじくっと、まりあに迫る。
それはじりじりとせりあがってきて、まりあの体の芯を熱くほてらせてきた。
あ・・・おやめになって・・・
どうしてこんなときに、色っぽい声を?
まりあ自身が、いぶかしかった。
けれども。
いつのまにか床のうえにくみしかれてしまって。
ガーターだと、穿いたまま、姦れるんだよね。
お坊ちゃんは息せき切って、生え初めた牙をまりあの肌にすべらせてくる。
ふと見ると傍らで、御主人様が奥様を。そしてメイドのひとりを巻き込んで。
かわるがわる、愉しまれていらっしゃる。
供宴のるつぼ。
まりあは思わず激しくかぶりを振っていた。
ああっ・・・お許しを・・・っ。
お坊ちゃんにそう囁いたとき、なにかとんでもない衝動が、とめどもなくまりあを貫いていた。
もう、いいだろう?ここから出られなくっても。
はにかみ屋だったはずのお坊ちゃんの声色は。
御主人様とおなじような威厳を秘めていて。
だめよ。だめよ。・・・だめよ。
繰り返し拒絶の言葉を吐きながら。
まりあはただひたすらに、めくるめく衝動に身をゆだねてしまっていた。
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コメント

やっぱり若い男が・・
 最近の若者は頭をどこかに
置き忘れているような様子ですが
きちんとしつけられている子供は
物事をわきまえた行動をするんですよね。
そんな男の子にはちょっとくらっときます。

 いつでも思い出すのはエレベーターで一緒になった
11歳くらいの男の子。
半ズボンに白いシャツえんじのネクタイを締めていました。
完璧なレディファーストで
ホテルの部屋まで買い物袋を運んでくれた。
翌日、レストランで朝食を食べていたので、挨拶したら
さっと立ち上がってお辞儀されてドキドキしました。
行きずりの男の子だったのに
一緒に行ったほかのクラスメートの誰よりも
私を女性だと思わせてくれた男の子。
透けるようなブルーグレイの瞳が綺麗な子でした。
by さやか
URL
2006-08-04 金 02:11:43
編集
>さやか様
おひさしぶりです。
今回の書き込み、そのままひとつのお話になっていますね。^^
読みながら情景を想像してしまいました。
物事をわきまえて、きちんと振る舞える人。
老若男女のかわりなく、とても目映い存在ですね。
by 柏木
URL
2006-08-04 金 07:28:37
編集
あけましておめでとうございます。
(明けてからだいぶたっていますが)

「意外な話」が好きといいましたが、
淡々として冷静な人がいるというのも好きですね。
このお話の場合「坊ちゃん」でしょうか。
by 太陽
URL
2007-01-10 水 13:27:22
編集
>太陽さま
こちらこそ、今年もよろしくです。m(__)m

このお話に注目されるとは・・・お目が高うございますね?^^
じぶんで描いたものを久しぶりに読んで、なぜか読みふけってしまいました。(笑)
こういうのを、木乃伊取りが木乃伊、ってゆうんでしょうか?^^;;;

>冷静な人
ここのブログには、けっこうお住まいになっているかもしれません。
坊ちゃん、不思議なキャラでしょう?
表情を消したかんじのこういうミステリアスなキャラ、好きなのです。^^
そういえば。
「痛いです」と訴えるヒロインに、
「痛いのよ」と訓える奥様あたりも。
なかなか冷静だなぁ・・・と思います。^^
by 柏木
URL
2007-01-10 水 21:01:13
編集

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