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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

人妻倶楽部

2006年08月04日(Fri) 07:48:21

その店はいかにもありがちな、古ぼけたマンションの一角にあった。
隅っこにすすをいっぱいつけた、
陳腐に派手な、思わせぶりの看板に。
人妻倶楽部
これまた実にありきたりの、そしてどういうお店かだいたい察しのつくような店の名が書かれてあった。

いらっしゃい。
さして美しくない、中年の女。
派手な衣裳に包まれた白い貌は、ちょっとすさんだやつれを見せているけれど。
若い頃はもっときれいだったのよ。
整った目鼻立ちは、あたかもそう主張しているように、妍を帯びていた。

なんになさいます?
女はボトルのたくさん並んだカウンターを振り返った。
疲れたような低い声が、妖しく悩ましく、耳の奥まで染み透る。
指一本、まっすぐに突き出して。
女の胸元を刺すように、指さしていた。
わたし?
女は自分を指さして。
望むところね。
にっこりと、ほほ笑んだ。
奥には整えられた古いベッドがひとつ。
ひっそりと薄闇のなか、うずくまっている。

さすがに巧みな腰さばきだった。
流れる汗をうわぐすりにするように。
女の肌は若いころそのままに、白磁のように輝いている。
どちらが奪っているのか。どちらが慰めているのか。
すべてが混沌とした、無重力状態の刻一刻。
こと果てて身を離した女はきょうも、醒めた弱々しい目線を投げてくる。
ひたひたと染み透るように、ひとを癒す目線だった。
あなたの変態は治らないけど。
年に二度くらいは、ここにいらっしゃい。
いいのよ。何しても。
そうすれば、心の底まで澄んでくるでしょう?

店を閉めた帰り道。
いつも通りかかる公園で。
女は三人の男に凌辱を受けた。
乱れたスカートをさらにたくし上げながら。
もっと、おやりなさいよ。
女はなぜか自分から、獣どもを誘っていた。
あなたたち、そのままじゃ。
また他所へいって、別の女を襲うでしょ?
汚れついでに、癒してあげる。
どれほど刻が過ぎたあとか。
男どもの顔から、獣じみた翳はあとかたもなく消えている。
やっぱり、自首するよ。
しちゃいけないことを、したんだから。
そうね。
こんどこそ出てきたら。
もうこんな悪さはつつしむことね。
どうしてもガマンできなかったなら。私のお店にいらっしゃい。
女は立ち上がると、こともなげにスカートの泥を払い落として。
気の毒だったわね。
しんそこ気の毒そうに、醒めた柔らかい目線を、ひとりひとりに投げていく。

人目の入り込む隙もない、生い茂った木立ちの奥。
女におおいかぶさった黒い影は、うなじを強く吸っている。
ブラウスに散ったバラ色のしずくが、忌むべき男の所業を告げていた。
もういいの?
女は起き上がると。
身を離した男に念を押した。
醒めた柔らかい声色で。
悪さをするな・・・だなんて。貴方に言っても無理よね。
でもせめて。そこまで幸せがきているような人を殺めるのは、やめてちょうだいね。
影は少年のように従順に、ゆっくりと深く頷き返している。

誰も彼も。
あんたに救われていくのだな。
男は女を抱きながら。
そう、耳もとに囁いた。
ただの、汚れた女よ。
女の声はあくまでも。醒めて弱々しい。
そんな評判。救われた連中が赦すまい。
女は男のしずかな賞賛を受け流しながら。謡うように呟いていた。
誰でもね。
心のなかに、神さまが住んでいるの。
神さまを居眠りさせていなければ。
私の声は、どこかに届く。ただそれだけ。
誰でも救えるわけじゃないのよ。
神さまを消してしまったものは、自分も死ぬしかないわけだし。
あまりにも深く眠らせてしまった人も、救うのが大変なの。
だれのことで苦しんでいるの?
男の問いに、女の応えははっきりしている。
うちのひと。
だから一生、連れ添っているのよ。
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