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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

同期の彼女~戯れのあと

2005年09月16日(Fri) 19:58:00

「出張、お疲れさん」
エレベーター前の人ごみに同期の間々田を見出して、蛭田はぽんと肩をたたいた。
「よぅ」
体格のいい間々田にとっては泊まりの出張もそう苦にはならないようだ。
先日蛭田がやったのとほぼおなじ二泊三日のハードな行程にもかかわらず、
ちょっと下の階に用足しをしてきたような顔つきをしている。
特異体質の蛭田には、そうした逞しさが羨ましくもある。
「さすがに同期のトップだな」
とっさに作った冷やかし口調。けれども負け惜しみには違いない。
事業部ナンバー・ワンの瑞枝をモノにするだけのことはあった。

打ち合わせを終えてミーティング・ルームでふたりだけになると、蛭田は鞄のなかからおもむろに紙袋を取り出した。
「これ」
間々田は差し出されるままに袋の中身を確認すると、ちょっとだけ渋い顔になる。
裂けたガーター・ストッキングが片方。
持ち主は聞かなくても察しがついている。
「夕べ、ちょっとだけお借りしたよ」
てらいもなく言われると、間々田も苦笑いするしかないようだった。
「こちらにあわせてくれて、けっこうノッてくれた」
「そいつは、何よりだ」
エリートの同期の横顔にさっと走った翳を、蛭田は見逃さない。
「誰にも得手不得手があるもんだ。あきらめな」
もっと気安く付き合っている相手ならそういい捨ててしまうのだが。
豪気なように見えて意外に小心な同期トップの正体を誰よりも知りつくている彼。

持ちかけてきたのはほかならぬ間々田のほうからだった。
社内でつきあっている彼女が処女かどうかを知りたくて、いちど確かめてみてくれないかと申し込んだのだ。
いまどき嫁さんもらうのに処女性をうんぬんするのかと間々田の古風な態度にあきれながら、
いっぽうで彼のそうしたところが気に入っているのだと改めて思った蛭田だった。
「確かめる」ためのやり方を、知らない間々田ではないであろうのに。
悩みはよほど、根深いのか・・・
約束どおり勤め帰りの彼女を夜更けの公園で襲ったのは、それから三日目の晩だった。

「四、五人ほど、先客がいたようだね。残念だけど・・・」
迷った末にそう告げた。
「ふぅん・・・」
のけぞるようにして天井を仰ぐ間々田。
ショックは隠しきれないようで、うめくように
「古風な女だと思ったんだがなあ・・・」
そういう時代じゃないだろう、という口調がついしみじみとなってしまう。
「つきあっていた男が社内にいたとしたら・・・いい笑いものだろうな」
「いがいに、臆病なんだな。エリート君は」
「ああ臆病だよ。情けないくらいにね」
よほどウマが合うのだろう。間々田は蛭田のまえではどこまでも本音だった。
「結婚するのなら・・・過去のことよりか、これから寝取られる恐怖を考慮するんだね」
蛭田は肘掛け椅子から立ち上がると、やおら間々田の首のつけ根に唇をあてた。
されるがままの間々田。
男同士でヘンだ、という意識をもつスキもないほどの瞬間。
スポーツで鍛えた若くて健康な血液が間々田の体内から蛭田の喉の奥へと移動する。
間々田はちょっと気の抜けたような顔つきになって、身をゆだねている。
唇を離すと蛭田は同期の耳もとに囁いた。
「直近の経験から三年以上経過している。社内のセンはまずないね」
ケンのある表情から固さがとれたのは囁きの内容からか、それともささやかな失血のせいか。
「結婚式には、呼んでくれよな」
そういっていつものように間々田の肩をぽんとたたくと、蛭田は先に出て行った。

それから三ヵ月。
蛭田は社内の噂で、ふたりの婚約を耳にした。

袋のなかから取り出した同期の贈り物を、間々田はニヤニヤと人のわるそうな笑みをうかべてもてあそんでいた。
婚約者の身につけていたガーター・ストッキングが、片方だけ。
「もう片っぽはどうした?」
「オレがせしめた」
「しょうがないヤツだな」
脱がしたストッキングの片方を自分のものにしたわけになんとなく察しをつけながら、あいてが蛭田だと不思議に怒りはわいてこなかった。
サッカーの試合でスキをつかれまんまとゴールを獲られたときのような、ほろ苦い爽快感さえ覚える。
間々田の掌からさらりとこぼれた肌色の薄衣はまるで天女の羽衣のように、ほとんど重さを感じさせなかった。
―――秋には娼婦といっしょに寝起きすることになる。
愛らしい小悪魔の蟲惑的な微笑を思い描いていた。
ふと気がつくと、ストッキングのところどころ泥がついている。
かれはちょっとだけ咎めるように、口を尖らせる。
我ながら子供っぽいなと苦笑しながら。
「外でやったのか?」
「ああ、近くの空き地にね。いいところがあるんだ。こんど教えてやるから、二人で愉しんだら?」
蛭田もいつの間にか、気安い冷やかし口調に戻っている。


あとがき
だらだらと長くなってしまいました。
蛭田は「彼女を借りた」と言っていますが、「犯した」とは言っていません。
けれども間々田は、彼の留守中に蛭田が自分の婚約者を犯していることに薄々気づいているでしょう。
花嫁の処女にあれほどこだわった彼が、どうして変貌することができたのか。
そのへんをうまく描けたらと・・・次回にご期待下さい。^^;
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