FC2ブログ

妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

ノースリーブの女

2006年08月28日(Mon) 07:41:28

エキゾチックな、大きな瞳をもった女だった。
どうりで、電車のなかでもひときわ目を引いた。
すこし陽焼けをした肌に、ノースリーブのベージュのワンピースがよく似合う。
彼氏にでも逢いにいくのだろうか?
まだ暑い時分だというのに。
パンプスをつっかけた脚には、ナチュラルカラーのストッキングを履いていた。

ノースリープのワンピース。
きっと暑くなる。
そう思って選んだに違いない。
ところが脚には、ストッキング。
考えてみれば、すこしアンバランスな気がしないでもない。
冷え性なのか?
蚊に食われた痕とか、ささいな粗が気になるのか?
たしかに肌色の皮膜を一枚へだてた向こうからは、
青白い静脈やや目につくほどにみとめられる。
けれど、そんなまともな想像よりも。
もっと淫猥な想いのほうが、はるかにまさった。
きっと彼氏に破らせてやるのだろう。と。
彼氏はきっと、ストッキング・フェチ。
まともに口に出す勇気がなくて、言外に匂わされたおねだりをかなえてやるために。
この暑いのにわざわざ女は自分の脚を薄いナイロンで彩って、でかけてゆくのだ。と。

いやいや。残念ながら。
それは少し違うのかな。
想像は再度、べつのほうへと向かいはじめる。
かなり決定的な反証が、彼女のすぐ隣りに控えていた。
息子らしい十歳くらいの少年が、
手にしている本に、母親似の瞳をじいっと注いでいたからだ。
そういえば彼女の彫りの深い顔立ちにも。
どこかしっとりと落ち着いた雰囲気が、
まるで陶器をひきたてるうわぐすりのように、さりげなく、漂っている。

いまどきの子供が手にするのなら、漫画かゲーム。
それなのに少年の手に握られていたのは。
漢字の多い、そうとう難しそうな文庫本だった。
きっと、教育ママなのだ。
そういえば息子のほうは、まっ白のワイシャツに紺のハーフパンツ。
年に不似合いなくらい、大人びた恰好をしている。
大人びた・・・というより、古風・・・というべきかもしれない。
きっと、旧家の子弟なのだろう。
じゃあこれから出かけるところは、裏口入学の交渉かな?
どうしてこうも、よからぬ想像ばかりするのだ。
軽く自分を咎めながら。
親子につづいて、電車をおりる。

駅からつづく白い道は、ひどく見慣れた道。
息子のほうが母親の手を取るようにして、
折り重なるような狭い路地を抜けてゆく。
おやおや。
裏口入学でも、なさそうだな。
まだ独身のように若く見える母親のほうは、
これからお見合いにでも行くみたいな優雅な足取りで。
ゆったりと、息子の歩みに合わせてゆく。
隙のないワンピースと、かっちりとしたパンプスに区切られたふくらはぎ。
肌色のストッキングが太陽を反射して、
てかてか、じんわりとした光沢を。
汗の代わりに、滲ませている。

「ここだよ」
息子が初めて、声をあげた。
前にあるのは、大きなお邸。
そう、私の家だ。
「よぅ」
私は息子の後ろから、なれなれしく肩に手を置いた。
くすぐったそうにふり仰ぐ目線が、イタズラっぽく笑っていた。
「おじさん、ずっとあとをつけてきたんだね?」
どこから気づいた?
そんな問いに。
電車に乗るときから、ずっとだよ。
おやおや。本に気を取られていたわけじゃ、なかったのだね。
「こちら、ボクの母のミユキです。歳は36です」
にわかに改まった口調に、母親は礼儀正しい会釈を送ってくる。
どこまで聞かされているのかな?
好奇心がよけいに、深くなる。

ね?美人でしょ?年かっこうも、食べごろでしょ?
そぉら、口の奥がむずむずしてきて。ママのお肌を咬んでみたくなったでしょ?
おやおや。目つきが悪いぜ?おじさん。
どうやらボクのママのこと、気に入ってくれたみたいだね。
よかった♪
無理を言って、来てもらったんだもの。
どんな御用があるのか、ママにはようく話しておいたから。
遠慮なく、襲ってね。^^
その証拠に、ほら。
じんわり光るストッキング。おじさんの好みに合わせて履いてきたんだぜ。
この暑いのに・・・

あとがき
彼はあの悪戯坊主の友だちなのかも。
悪戯坊主は年上のお姉さんやひとの奥さんを狙うのに。
彼は自分のお母さんを襲わせちゃうんですが。
前の記事
おずおず と
次の記事
ええとおそらく

コメント

ママが自慢なのね
ノースリーブからすっと伸びた腕の内側。
静脈の透ける白い肌が、きっとヴァンパイアをそそるのでしょうね。
今の方達は、あちこち肌を露出なさるけれど、本当にエレガントなのは身体の中のたった1カ所だけを露にすることなのですよ。
36歳でそれを知っている、綺麗なママ。
きっとこの男の子の自慢なのでしょうね。
by 祥子
URL
2006-08-29 火 16:55:39
編集
>祥子様
いつもながら、ドッキリするようなタイトルをありがとうございます。^^

そうですね。
とてもきちっとした感じの女性だったのですよ。

男女を問わず。
歳を召すことでいぎたなくなる人もあれば、いっそう輝く人もおりますが。
このご婦人はまぎれもなく後者であること、いまさら申し上げるまでもありますまい。
そうした女性だからこそ、愛でてあまりある血を秘めておいでなのでしょう。

さりながら。
そのような価値ある女性をこんな卑劣?な手段で堕としめ辱めてしまうこと。
血を欲するこの身にとっても、ときには気恥ずかしさを覚えることも。
ままあるのでございます。

淫らな気分に快楽の衣をまとわせて。
エモノに選んだご婦人を夢の境地にお誘いするようになったのは。
そんな想いを覚えるようになってからのことだったでしょうか。
by 柏木
URL
2006-08-29 火 21:08:10
編集

コメントの投稿

(N)
(B)
(M)
(U)
(T)
(P)
(C)
管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
http://aoi18.blog37.fc2.com/tb.php/474-c6c25eaa