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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

母娘もろとも~連作・四人の妖花たち

2006年09月03日(Sun) 05:02:26

「ウン。ウン。いいよ・・・」
しきりに頷く後ろ姿は、リクルート・スーツ。
22歳の美鈴はさっきから。
ユリのような白い頬をかすかに揺らしながら。
向かい合わせに迫ってくる若い女がぶつけてくる衝動に耐えている。
時折上体を、ゆらゆらとさせながら。
女が離れると。
美鈴は頬を上気させて、自分より背丈のある女をふり仰いで。
さりげなく、訊いた。
「わたしの血、おいしい?」
と。

女は少女をあやすように、スーツの上から両腕を撫であげて。
口許についたバラ色のしずくを、手の甲でサッと拭っている。
「おいしいわ。ありがと」
「もっと、吸って・・・飢えているんでしょ」
「ばかね。死んじゃうわよ。あんまり私なんかにつきあうと」
「いいから・・・」
美鈴はしつように、女にねだった。
色の薄い茶髪。色素が足りないかというくらいに透きとおった白い肌。
控えめだがかわいい感じの目鼻立ちに、華奢な身体つき。
却って見映えがしないくらい、ほっそりとした脚。
「じゃあ、おことばに甘えて・・・ね♪ストッキング、破ってもいい?」
「エ・・・?いいよ」
女の不思議な要求にためらいもなく、美鈴は黒革のストラップシューズのつま先を差し出した。
圧しつけられた唇の下。
存在感のない薄い肌色のナイロンがくしゃっと歪んで、
ひかえめに帯びた色つやを、妖しくよぎらせる。

ちゅうっ・・・
長い黒髪を振り乱して。
きちんとそろえた足許に、女はヘビのように咬みついてくる。
ストッキングの裂け目がスカートの中にまでしのび込んできて、
太ももを包むほどよい束縛感が、ほろほろとほどけてくるのを心地よく覚えながら。
美鈴はウットリした目線を注ぎつづけた。

ちょっと姿勢を崩しながら。
「ぜんぶ、吸ってもかまわないのよ・・・」
白目が妖しい輝きを帯びはじめている。
「美鈴!美鈴!」
向こうからかけ寄ってくる足音に、ふたりはハッとしてふり向いた。
「お母さん・・・」
痴呆のように弛んだ口許からひと声そう洩らすと、美鈴はもう耐え切れずに、その場にうつ伏してしまっている。

「娘になにをするんです!?アッ・・・血??」
倒れた娘を抱きかかえようとしたのは、えび茶色のスーツ姿の中年女。
よく似た肌の白さに、血のつながりがにじみ出ていた。
「あら。お母さんなんですか?」
背後から取り囲むように並ぶのは、いずれ劣らぬ三対の脚線美。
ハッとするのは、母親の番だった。
太さ長さもとりどりな脚には、申し合わせたように。
肌の透ける薄手の黒のストッキングに、黒のパンプス。そして漆黒のフォーマルスーツ。
「初めまして・・・いつもこうやって娘さんの血をいただいている華代です♪」
ニッと笑った口許には、娘の体から吸い取ったバラ色のしずくがまだ浮いている。
「え・・・?」
あっけにとられ、訝しそうな遠い目線になった母親のスキを突くように。
背後から伸びた手が、早くも両肩を抑えつけていた。
「あっ」
「さぁ。お立ちになって」
「美鈴ちゃんの血が美味しいんだから・・・お母さんのもイケるわよね?」
くすっと笑いかける華代に、三人の女たちは無言で応えた。

抵抗は、あっという間にやんでいた。
切なく喘ぎながら。
もだえて息を弾ませながら。
娘で足りなかった血を、母親は気前よく、振る舞いはじめている。
乱れたスーツのすき間から。
思い思いに刺し込まれてゆく、四対の牙。
「あの。足りますか?わたし大丈夫ですか?」
切れ切れに洩れる言葉は、もう正気のものではない。
裕美は相変わらず、足許に執着していた。
華代もさっきから、もう片方の脚からストッキングを剥ぎ取っていた。
ほかの二人は獲物を両方から抑えつけて、
かわるがわる、首筋につけた傷口に、嬉しそうに笑んだ唇を吸いつけていた。
「美味しいわ。美鈴ちゃんいつも貧血ぎみだったから。ちょっと気になっていたのよね」
囁く華代に頷きながら。
こんどからお勤めには娘といっしょに出かけますわね。
家に戻って着替えても間に合うように。
すこし早く家を出て・・・
うわ言のような誓いの言葉を、四人は聞きもらすまいと息を詰めて聞きほれた。

「ストッキングは、お母さんのほうが上質ね。美鈴も見習うといいわ」
ようやく立てるようになった娘は、蒼白い頬に笑みを滲ませた。
「じゃあ、こんどは期待していて」
顔を見合わせた母娘は、初めてイタズラっぽく笑みを交わし合う。

狭い路地の塀際に、ふたり並んだ母娘。
黒のフォーマルスーツの女たちに囲まれて、かわるがわるうなじを吸われている。
紅い唇に撫でるように吸われるたび。
血を採られた女たちは、照れくさそうに、くすぐったそうに笑みをたたえる。
親密な会釈を交わしあい、ふたりが何事もなかったようにその場を立ち去ると。
「おい。妻と娘に何をしているんだ?」
立ちはだかる男に、女どもは物怖じひとつする様子がない。
「エ・・・?」
「もしかして、美鈴のパパ?」
くすっと笑い合う、白い頬。
「あの。いちどご挨拶するつもりでいたんです。お二人にはいつも、とてもお世話になっているので・・・」

近くの木立ちの、奥まった一隅で。
ズボンを脱いだ男は仰向けになって。
スカートを取り去った太ももに。
薄墨色のガーターが鮮やかなカーブを描いている。
「つぎはあたしの番」
「じゃあ私、その次ねっ?」
女たちは、はしゃぎながら。
・・・男を輪姦していた。
「ときどき奥さんと美鈴。借りるわね?」
男はもう抜け殻のようになりながら。
正気を喪った虚ろな目で、承諾を与えている。
少しばかり、しぶしぶと。
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