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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

夜通しかけて・・・ ~連作・四人の妖花たち~

2006年09月03日(Sun) 05:28:17

あれは、みちるを弔う帰り道だった。
死んだはずの裕美が。華代が。そして、みちるまでが。
ひとしく妖しい笑みを浮かべて、こちらへと迫ってくる。
ただならぬ殺気を覚えて。手をあげて制止しようとしたけれど。
そんなものは、ものともせずに。
寄ってたかって、抱きすくめてきた。
きょうの服はね。あなたを弔う喪服なのよ。
そう囁いたときの裕美は、整った顔だちにどす黒い欲情を滲ませていた。
救いを求めようとして、声をあげたけれど。
ふだんは人通りのあるはずの路上には、なぜか人影ひとつ見られなかった。

正面から、みちるの豊かな肢体が迫ってきた。
胸ぐりの深い襟首からは、静脈の透けた実りゆたかなおっぱいが。
思わず引いてしまうほどの勢いで迫ってくる。
左右からは裕美と華代。
裕美は歌枝子の腰まわりを抱きすくめると身をかがめ、足許に唇を這わせてきた。
かすかな唾液が、黒のストッキングに滲むのを感じた。
ちくっ。
ちく、ちくっ。
まるで注射針のように、むぞうさに。
思い思いに刺し込まれた牙。
理性を狂わせるのに、いくらも時間はかからなかった。

道をはずれた草むらのなか。
膝丈まである雑草に覆われた石の階段に腰をおろして。
ようやく、ひと息ついて。
三人が放してくれたのは。
もう逃げたりはしない。
そういう確信を持ったからだろう。
けだるくなった四肢のすみずみまで。
淫らな毒液が、ぐるぐると駆け回っている。
「私も、死ぬの・・・?」
「そうね。できたらずっと、お友だちでいたいから・・・しょうがないよね?」
うん。
そう、頷くしかなかった。
「歌枝子の血って、美味しいね」
みちるが生前とおなじ無邪気さもあらわにして、囁きかけてくる。
「あたしを先に選んだのはね。歌枝子の血はみんなで吸いたかったからだったんですって」
嬉しいでしょう?もっと喜びなさいよ。
まるでそんなふうに、せかしているような口調だった。
「あたしの血、ふたりで山分けされちゃったけど・・・血を抜かれるのってなんかくすぐったい気分よね?
  分かるわぁ。いまの歌枝子の気分」
己の血の喪失を、いとも嬉しげに思い出しているようだった。
「歌枝子、処女じゃないわね?」
「ええ。ごめんなさい。処女のほうが、よかったんでしょ?」
思いがけなくすらすらと、受け答えをしてしまっていた。
それがわが身にくわえられた犯罪を追認することになるような気がしたけれど。
ぼうっとなった脳裡は、それでいい・・・と彼女に命じている。
「歌枝子、まじめだから。あなただけは処女かなーって期待してたんだけどな」
みちるが、愉快そうに口を尖らせる。
「ね?誰とヤッたの?あたしの知ってる人?」
三人のなかで性格がいちばん明るく、あけっぴろげなみちる。
相変わらずの態度に、歌枝子はいままでどおりの苦笑で応えた。

「処女喪失といっしょよ。初めで、さ・い・ご♪」
裕美がとどめを刺すように。
歌枝子に引導を渡す。
「うん・・・いいわよ。ちょっと名残惜しいけど。三人でぜんぶ、吸い取っちゃって頂戴ね」
獲物が浮かべる蒼白い笑みに満足したように、三人の女たちはいちように顔を見合わせ頷きあった。
「ストッキング、破るわね」
さっきから裕美は、歌枝子の脚に執着している。
よほど気に入ったらしい。
「ア、あたしも♪」
華代がそれにくわわった。
「じゃ~、あたしは胸。ね?」
諦めたような苦笑いを浮かべながら。
歌枝子がスカートをたくし上げると。
みちるは甘えるようにもたれかかってきた。

「ひと晩かけて、あなたの血を吸い尽くすからね」
ゲームのルールを説明するようにして。
裕美は歌枝子に囁いた。
「好きにして」
ウフフ。くすくす。
時折洩れてくる忍び笑いと、かすかな身じろぎの音。
それも夜が明ける頃には、止んでいた。
遺された肢体が仰のけになったまま。四肢を硬直させていた。
長い黒髪がひとすじ乱れずに梳き直されていたのと、
蒼白くなった頬に浮いた心地よげな笑みが残っているのを。
発見者たちはひどく訝しがっていた。
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