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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

伝書鳩

2006年09月06日(Wed) 07:19:33

奥さんへの手紙、ことづけてもよろしいかな?
彼はにんまり笑んでそういうと、封をしていない手紙を私に手渡す。
さっきまで酔わされていた余韻がまだくすぶっている、狂った脳裡。
私はよろこんでお受けしましょう、そういって、妻への恋文をうけとった。
なかを改めなくってもよろしいのかね?御主人としてはさぞや、きがかりでしょうから。
たたみかけるような彼の声色に。
つい震える指を封筒のなかに差し入れてしまっている。

妻から彼へ。
彼から妻へ。
行きつ戻りつする、秘密の手紙。
運ぶのは私。その目のまえで文面に目を走らせて、
興じ入る、それぞれの受取人。
目にすることはいっさい、許されない。
密書であり艶書であることは、三人とも承知のうえのことだった。
手紙のなかみはあからさま。
人の行き来はひそやかに。
目に触れることの許されない共有された世界が豊かに深くなってゆくのが、
彼や彼女の顔色や声色で、いやというほど察しがつく。
そんな地獄をとても甘苦しく愉しんでしまっている、とても恥ずかしい私。

あなた。彼にお手紙書いたの。持って行ってくださるわよね?
今夜も妻はそういって、ふたりだけだったころにはけっして見せたことのない艶然とした笑みをたたえている。


あとがき
「幻想」から「妖艶」に移行する過渡期に描いたお話が、いくつかあっぷされないまま、残っていました。
おのお話は、そのひとつ。
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深夜のお出かけ
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ふる・まーく♪

コメント

この時代に
あえて<ふみ>を交わすというところが・・・柏木世界らしい床しさなのでしょうね。
公認の間柄、というのが手紙の中身を明かすキーワードなのでしょうけれど、それなら伝言にしたらいいのにと思うのは・・・現代人なのかもしれません。
わたくしでしたら、やはり夫からではなく可愛い幼少のヴァンパイアにメールボーイをしていただきたいな♪と思いますわ。
by 祥子
URL
2006-09-27 水 12:44:33
編集
>祥子さま
夜更けの早い秋となりました。^^
<ふみ>というものは、いまどきの携帯やメールには替えがたい趣がありましたね。
かく申す私めも本当に、ペンから遠のいてしまいましたが・・・
>幼少の
なぁるほど。^^
そのセンは、ちょっと考えてもおりませんでした。
たしかにそれもまた、絵になりそうですね。。
お駄賃に・・・深紅の彩りを添えてあげるのでしょうか?
by 柏木
URL
2006-09-27 水 21:36:27
編集

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